昭和の風林史(昭和五四年十一月十五日掲載分)

2017年11月22日

輸大も警戒水域 精糖来月しんどい

円安もこのあたりで歯止めがかかろう。さしものゴムも天井みたいだ。輸大も売り場にきている。

「葛城を背に村々の冬構 木小路」

組織営業が粗・精糖相場を、お客さんにすすめた。もちろん買いである。相場上昇に伴って顧客は厖大な利益をあげた。利乗り玉の利食い。そして更に買い玉をふやす買い乗せ。回転が利き手数料収入は増大するし、お客はニコニコ顔で、なによりなのだが、ダミー会社が、この買いに対抗していたら食われた事だろう。

粗・精糖の利食い資金を営業は輸入大豆戦線に移動きせた。

これまた顧客は厖大な利益をあげた。もしダミー会社が逆のポジションだったら大変な事である。

こうなったら、お客さんは面白くてたまらない。気も大きくなっている。

利食いしては買い玉をふくらませていく。

そして、相場は、行き着く値に来て、ストトンと値を下げる。高値で、ふくらむだけふくらんだ玉は追い証攻めで、結局、楽しい思いをしただけで、このゲームは終る。

輸大相場は、だいたい、いい水準にきて、このあたりからの売りは、あと高ければ売り上がりの出来る人なら売って面白いところである。

円安のほうも、一応このあたりで落ち着きそうである。

さしものゴム相場も『これ以上は?』という水準だし相場つきだ。ゴムの線型は頭を打った格好だ。

精糖相場のほうは現物がないわけではない。大阪期近は、渡し物が倉庫に一杯。値は荷を呼んで、今月受けても、受けなくても来月は値崩れ必至。

海外高についていけないところが、この精糖相場の泣きどころである。

海外が反落に転ずれば、日柄を食った相場だし、実勢遊離の仕手相場だけに国内はS安もあろう。

ぼつぼつ小豆のほうに人気がまわってきてもよい時分である。

国際商品は、一応円安に歯止めがかかると、いずれも値が伸びきって、風当りのきついところにあるから、これまでの反動が出よう。

そうなると、乾繭、生糸、小豆という、国内商品に投機資金が流れ込む。

小豆の期近は重たくて、これが全般の足を引っ張る格好だが、先限三千円割れでもあれば買ってみたいところである。

今のところ自社玉は圧倒的な売りであるから、まだぐずつく地合で、すぐ買っても駄目だろうが、安値は売れない相場になった。

●編集部註
相場は、裏の裏の裏を行く。何周も頭の中を回って回って、逆に行ってしまうケースが少なくない。

商品相場は全般的に1980年に天井をつけている相場が多い。〝さしものゴム相場〟も例外ではなかった。12月頭に急落した事はしたが、結局1週間しかもたなかった。

昭和の風林史(昭和五四年十一月十四日掲載分)

2017年11月21日

輸大香港も活況 制限値幅なしの機能

輸大は売り大手が踏んできた。為替と期近の玉薄が相場に火をつけた。香港も活況を呈す。

「短日やされどあかるき水の上 万太郎」

連日の円安で商品市場の輸入商品相場は騒然としている。

日本の政治に空白が、およそ一カ月あった。ポッカリあいた政治の空白分が、とりもなおさず今の円安で象徴されている。

半値押しの二百四十二円で止まるべきものが、余分に行き過ぎて、三分の二押し二百六十四円は、時の勢いという事になる。

輸入大豆は煎れが出ている。

『関西の人は実によく相場を見る』―と言われるが、東京の輸大自社玉が、買いより売りが多かったのに大阪は、早くから売り買いほぼ同じであった。それがここに来て売りより買いが随分多い。

反面、大阪の小豆自社玉は、圧倒的な売りである。このあたりに、小豆相場の下値不安が残る。

ともかく、師走を控えて穀取市場は輸大さまさま大豆大明神である。出来高増大、捨てる神ありゃ拾う神あり。

さしものマルモト千九百六十枚売りが鳴動しだした。

いかな御堂筋の小鬼でも、泣く子と地頭ではない、為替と中国には勝てない。

香港市場も東京大豆に刺激されて、連日大商盛である。東京がS高で商いストップなら、ストップ制限のない香港市場に場勘へッジの玉が流れ、結構香港の取引所が機能する。

香港13日輸大相場前2節

2月限…一〇四80比20高

3月限…一一〇60比20高

4月限…一〇八60比40高

(単位香港ドル・セント比較前日比セント)。

この日、為替は一香港ドルスポット四九ドル12セント。昼時分は50ドルを越えているから日本円にすると、日本時間午前10時50分一節二月限が五千二百四十円(東穀一節五千二百三十円)。三月限五千五百二十五円(同五千二百円)。四月限五千四百三十円(同五千二百六十円)で三、四限が東穀の上ザヤを買っている。
(三限が天狗になっているのはオープン第一節の時点からである)。

手数料(片道一枚90㌦)も証拠金も取引所は一応参考として表示しているが個々の会員と相談で決めればよい。

ともあれ、最終節は日本時間の15時50分だから日本の引けあとは香港に玉が流れる。目下、エース交易と岡地のテレックスが相場を入れているから香港マーケットに関心を持つ人は注文を取りつぐかどうか問い合せてみるとよい。

●編集部註
 リスクをとる事の大切さと恐ろしさ、リスクをとった勝者を称え、敗者を労わるやさしさを、この頃から教育プログラムに入れておけば、現在はもうちょっと違った世の中になっていたような気がする。上記の文章にリスクをとる者たちのキラキラが行間に出ている。

昭和の風林史(昭和五四年十一月十三日掲載分)

2017年11月20日

精糖渡し物多し 師走市中値崩れ必至

精糖相場は頭打ちしている。今月の渡し物は三百枚を越えるかもしれぬ。来月の市中値崩れ必至。

「七五三の子を囲みをり家族寮 桂水」

円が叩かれている。イラン情勢の緊迫でその下げかたがきつい。半値押し地点の二百四十二円どころを素通りしたからには、三分の二押しの二百六十四円を見ておかなければなるまい。

円安―とくれば国内上場商品ではストレートにゴム高である。

まして、石油やフレートに絡めば合成ゴムのコスト高。しかも、イランに対するアメリカの出方次第で戦略物資のゴム価格は神経質になる。

そのうえに、タイとカンボジア、そしてベトナムの国境が雨期明けで緊迫の度を高めている。日本の新聞は、この事を余り書かないが、タイ国の新聞は大きな扱いである。

為替、フレートに敏感なのはゴムだけではない。輸入大豆も、大きな影響を受ける。

週明け輸大相場は前週末の買い気を持ち越して期近限月から高い。

市場要因は、圧迫すると見ていた中国大豆が一月積みまで手当てが出来ない。定期に渡すものがない―という事である。しかし値段が上がれば製油メーカーからの逆流もある。あるいは御堂筋の小鬼は、サイロから抜き出して袋詰めにする準備を進めているとも神戸情報として流れている。どんぶりは、今月も受ける姿勢―と市場は見ていて、売り安心気味だった大衆筋は、やや狼狽している。

売るなら大阪先限五千百円あたりからでもよいが、IOM一~三月積み成約が咋年同期比八万㌧ほど少ない現在、人気次第、シカゴ次第ではもう一段の上値を見にいく事もあろう。

一方、精糖のほうは大阪の倉庫に今月の渡し物が充満して御堂筋は果して三百枚以上と予測される渡し物を受けきるのか。たとえ受けても来月は、これはもう現物市場の値崩れはひどいものになろうという心配もある。

もとより海外市況や為替、フレートに絡むことではあるが、国内実勢からこれだけ、かけ離れては、大投機の思惑の時期が早や過ぎた。今年は北海道のビートも大豊作で収穫期を終ろうとしている。

投機筋にとって砂糖は決して甘いものではない。

小豆のほうは手さぐりで底値をさぐる格好である。だが期近事情が、いまひとつ軟弱要因を含むため、期近限月が、ガチンと底値を固めない以上、強気しても面白くない。

●編集部註
 生産地相場と消費地相場は違う。後者はここで指摘されているように外部要因の影響を多分に受けやすい。前者はプレイヤーが限られていて面白くない。面白くないゲームに人が集まらなくなるのは自明の理である。

昭和の風林史(昭和五四年十一月十二日掲載分)

2017年11月17日

小豆期近底抜け 輸大は円安で買う

大阪輸大の自社玉は売り買い接近している。小豆の自社玉は東西とも圧倒的に売りが多い。

「いへばただそれだけのこと柳散る 万太郎」

海外市況、たとえばシカゴボードのリスクを負担し、フレートのリスクを勘案し、為替変動に危険をさらし、しかるのちに国内定期の変動に気をくばる。

商社のビジネスマンは、あれでよく神経がもつものだと、そのタフなことに感心する。

夜遅くまで仕事をしていて、帰路、スナックバーのボトルをかたむけながらもニューヨークが気になり、ママさんちょっと電話をかしてや―と国際ダイヤルをまわす。

輸入大豆相場は、中国と為替にふりまわされている。輸大とは、売るものなりと覚えた大衆筋の売りが期近ほど面白くない。

品物はあるが、品物がない。穀取期近に渡す玉がないというのが今の市場の表情である。

中国という国は、約束の堅いはずの国であるが、まだ近代国家になっていないから商取引に関しては、頼りない事おびただしい。

売るとか、売らんとか、あそこのお国のかけ引きは日本人に歯がたたない。

精糖相場は海外高でも反応が鈍い。取組みは、やや売られている。相場としては海外も買い疲れの様子で、あとは先月納会を受けた商社の力の入れようというところ。

まあ今月も、品物は結構集まって、倉庫は砂糖であふれている。三百枚は渡るのではないか。

東京―大阪トラックでキログラム当り六円七十銭。機帆船なら四円四、五十銭で移動できる。来るはずのなかった九州からでも、値は荷を呼んで先月納会、あけてびっくり。

御堂筋の小鬼も、砂糖市場では?まった格好だ。

線型は、売り線になったり買い線になったりで、高値波乱を繰り返し、頭デッカチの重い姿である。

現物の売れ行きはさっぱりだし実勢遊離の相場を、為替とロンドンにひっかけても相場様は、もうしんどいと言っている。

さて、小豆のほうは静岡筋の手仕舞いで期近は一代の新安値である。

静岡筋にしたところで、もうこんな小豆につきあっておれない―という気持ちであろう。

いまの小豆相場は、まったく無味乾燥。せいぜい自社玉のポジション(圧倒的な売り)を参考にして、深入りしないことであろう。いずれ一枚が80俵という事になれば、逃げた人気が戻るかもしれない。

●編集部註
 テレックス時代の相場師たちを心から尊敬する。

 その昔、外銀のディーリング部にはテレックスのテープをさばく人がいたという。

 どんなテープかは『スティング』という映画をご覧戴きたい。

昭和の風林史(昭和五四年十一月十日掲載分)

2017年11月16日

輸大市場の整備 東穀IOM別建へ

穀取は輸大市場の欠陥を修正し、市場機能が国際性に順応出来るよう目下鋭意努力中である。

「口に出てわが足いそぐ初しぐれ 波郷」

円安に国際商品はふりまわされている。

円はスミソニアン三百八円の安値から53年10月31日の高値百七十六円五銭までの上げ幅百三十二円に対して半値押しが二百四十二円に当る。

日本の政治の空白も新内閣成立で格好だけはついたから、円安も、一応目先的には半値押し二百四十二円を中心とした動きになるのではないかと思うが、石油に弱い日本だけに、イラン情勢の展開によっては、円暴落に歯止めが、かからないかもしれない。

その場合だと三分の二押しの二百六十四円。

きわめて悲観的な予測をたてている証券エコノミストは、結局は三百八円。全値戻しであろうと、心胆を寒からしめる見方をするが、そのような値が付かないとは誰も断言出来ない。

円安は、輸入商品を直撃する。

また、石油が過熱するとフレートが暴騰する。

輸入商品の採算がグングン上昇する。

商品市場は海外市況に連動する輸入商品と、あまりかかわりのない商品とで、動き方も、出来高も、まったく違ったものになる。

伝え聞くところ東京穀取は、IOM輸入大豆の別建てを検討中という。目下、東穀、名穀の輸大市場の標準品は、中国大豆で、IOMは供用品である。

大阪市場はIOMを標準品として中国大豆を供用品にしている。

この標準品の違いはそれぞれの取引所における地域的現物流通の背景によるものであるが、東穀と大穀の標準品の違いは種々な問題が発生する。(『商品先物市場』11月号・商取ノート輸入大豆市場振興のため標準品調整を急げ=に詳細)。

そのような事から、東穀取は、標準品を中国産とする大豆市場と、IOMを標準品とする市場との別建てを事務局レベルで検討してきた。

いまや大手亡豆の市場は上場商品としての適合性を欠き、市場は機能していない。ゆくゆくは小豆市場も輸入小豆と道産小豆の別建てという姿でしか存在出来なくなるだろう。

その時、穀取市場は、大豆三品を主たる商品として存在せざるを得ない。そのためには、大豆市場の欠陥を逐次修正して国際化へ順応せざるを得ない。東穀のIOM別建ては主務省も十分理解出来ていると聞く。結構な事である。

●編集部註
 江戸時代は「豪農」や本間宗久のような「豪商」が米相場に参加していた。シカゴ市場も同様であったという。

 昭和のこの頃、豪農や豪商ではなくホクレンが穀物相場に参加していた。

 この違いが、存外大きかったのではないか。

昭和の風林史(昭和五四年十一月九日掲載分)

2017年11月15日

精糖は危険水域 小豆底練り時代へ

流動的なイラン情勢と円相場の二ツが商品相場をゆさぶっている。それだけに見通しも難解だ。

「初冬や訪はんと思う人来り 子規」

円安の為替相場を睨み、イラン情勢を推理し、海外市況を参考にして相場を予測しなければならない。自然に商品セールスマンも横文字や海外市況に強くならざるを得ない。

小豆相場にしても、中国小豆の採算、入荷、台湾小豆の作況など、商社筋の動きを、たえず掌握しておかなければ営業につながらない。

北海小豆のほうは、これはホクレンの動き次第だ。

一般に、大きく買われる時期ではないから、戻りを待って売り場を狙えばよいだろう―としている。

商いのほうも、いまひとつ気が乗っていない。

三千円と四千円のあいだの底練りだろうという見方が妥当のようだ。

輸大は期近限月の線型が煎れを出した格好だ。六百円幅の棒上げは、ひと相場である。

為替やイラン情勢がからむだけに難かしいけれど、先限は東西とも自社玉売りが判然としている。

大阪1・2月限。東京12月限の自社玉は買いがとび抜けて多い。

このあたりの事情(自社玉ポジション)を、のみ込んでおけば大過なかろう。

それにしても大阪当限の輸大日足線は上値から三本陰線をかぶせて、一応頭を打った格好である。

精糖も先限日足線は上から連続陰線三本をかぶせて新ポ天井型。これをイラン問題と為替で切り返したわけだが、ゴム相場のように、高水準での波乱で時間をかけるのが国際商品の現在におけるパターンでもあるから、ケイ線の見方は難かしい。

ともかく精糖定期相場は実勢から離れたところでの投機思惑である。品物は先月の納会を見ても判るように、余るほどある。

今の相場は、海外次第、為替次第とはいうものの、昔、夜店などで小さな噴水の上にピンポン球をのせて噴水の上でピンポンのたまが踊るおもちゃがあった。あれみたいな気がする。水圧がなくなるとストンと落ちてしまう。

実需の裏うちが弱い精糖相場を力で買い上げても、無理が生じ、反動安がきついものになろう。

ところで7日付け当欄の東穀理事長から香港取引所理事長への手紙についてだが、東穀常務から『手紙の内容は苦情ではなく、日本での受託行為は国内秩序が混乱するので御遠慮願いたい』という内容であるとの説明があった。

●編集部註
 日本橋兜町に今もある東京証券取引所から鎧橋を渡った先、人形町の一等地に東京穀物取引所があった。一階に土産もの売り場があり、大きな鯉を抱いた金太郎の絵がプリントされたTシャツを何故か売っていた。

 今は取り壊され、立派な億ションが建っている。

昭和の風林史(昭和五四年十一月八日掲載分)

2017年11月14日

小豆が業界象徴 いずれ手亡になる

今の小豆相場は、商取業界を象徴している。業界は将来、手亡相場みたいなものになろう。

「テヘランの街頭売のざくろかな 芳浩」

一種の管理相場である小豆を、どれほど真剣に考え、取り組んでみても、当業筋ならいざ知らず、大衆投機層には、遠いところのものになっている。

かつては商品取引の花形商品であった小豆である。時代の変化や、生産・流通経過の変動で、小豆相場は、年に一度の天災期だけ関心を寄せるシーズン銘柄になってしまった。

すでに大手亡豆相場は、取引所市場で機能しているとは思えない。値段が付いている事は、とりもなおさず機能しているのだ―と言うならば、それはそれでよい。

しかし、ヘッジが出来るだろうか。わずかな売り物、買い物で騰落がきつい。大衆投機家は市場を見はなしている。

大手亡豆は、やはり生産量、取引所供用品、格差などの面から、取引所上場商品としての資格を失った商品である。

その現実を最もよく知っているのが、ほかならぬ大衆投機家である。

商品市場の投機家は品物が欲しくて買うのではない。品物を持っているから売るのではない。価格変動による値ザヤ取りを目的とする。従って、投機妙味のないものには手を出さない。

取引員側にとっては投機家が手を出さなければ経営が成り立たない。

いまは、無理な商いをすすめるわけにいかないから、自然、自社玉のウエイトを高めなければならない。

この自社玉は、取引員経営にとって必要不可欠な経営手段である。昔は自社玉ポジションがベールに包まれていたから一般大衆には判らなかった。今は取引所が発表しなければならなくなった。

ために大衆の知るところとなり、相場判断の重要な資料にもなっている。

自社玉が、必らずしも利益を得るとは限らないが、自社玉の片寄り(小豆東西合計=売一四、一九〇枚・買四、九六〇枚)を見ては投機家としても考えよう。

思うのであるが、穀物に限らず、日本の商品市場は、なにか重大なことを見落しているのではないかと思う。

それは、役所も取引所も業界団体も、個々の取引員も時代の流れというものに取り残された思考と、失ってしまった決断と勇気。これではないかと思う。人気が離散した小豆相場の小高下を見て、小生はそのように思った。

●編集部註
 この提言は、正鵠をついていた。

 しかし、当時の識者や業界上層部、監督官庁のなかで耳を傾けた人物がどれだけいたか。今となってはあとの祭りである。

 ところで冒頭のテヘランという言葉は、この年の1月にイラン革命でパフレヴィー国王が亡命し、11月にテヘランの米国大使館が襲撃された事件を受けてのものと思われる。

昭和の風林史(昭和五四年十一月七日掲載分)

2017年11月13日

売らず買わず 仕掛け妙味がない

小豆は軟弱。砂糖は天井したみたい。輸大も逆ザヤだが一応行き着いたように思う。

「一本の紅葉且つ散る庵かな 迷子」

昨日の当欄見出し「香港」の港が、一部地区には「香海(・)」になっている。ミスプリントである。常識でも判るようなミスプリントをする校正責任者の目はフシ穴か。

いまだかつて〝風林火山〟の見出しに、こんな馬鹿げたミスプリントをするような校正マンは当社にいなかった。気を引き締めて校正をしないから、大きな活字の誤りさえ目に入らない。情けないと思った。

さて、小豆相場であるが、気が乗らないうちに安い。安いなら、どこまで安いか?というと、これから下は、あっても千丁。

まあそういうところで、身構えて取り組む相場のようには思えない。

精糖の相場が、海外は強いのだが、国内相場の雲行きがおかしい。

線は綺麗な売りになっているから、陽動買いをしても、海外がある程度強張っても、戻り売りだろう。

精糖は、大きな相場だっただけに、天井を打つにしても、もう一回先限で二百二十円台に買われるような、非常に強く見せる場面があってもおかしくないが、11月新ポで天井したと小生は思うのである。

輸入大豆は、香港がオープンして、香港マーケットに刺激を受けたような塩梅で東京も出来高が増大した。

東穀の理事長から、香港取引所の理事長に、香港取引所に大豆市場を開設する事は困るというふうな、苦情みたいな手紙が出されて、現地関係者は、理解に苦しんでいたが、香港商取理事長は、香港市場の活況は、東京市場に活況をもたらすだろう―と、東穀のおとなげない手紙を、残念に思う―と、たいして問題にしているようでもない。

そりゃあそうだろう、国が違うのである。ましてむこうは英国式の、自由な考え方である。東穀にとっては切実な問題であっても、お国が違うのだから、文句をつけるなら外務省を通し外交ルートで東穀の意志を表示すればよかった。まあそれだけ〝黒船来たる〟の狼狽ぶりと受けとられても仕方がない。

東穀あたりは、まだ危機感のようなものを感じているが、商取業界全般は香港商品取引所の事を、深く考えられる力がない。

いずれわが商取界は、開国論や攘夷論、佐幕、倒幕両派の激突が激しくなるだろう。商品界の国際化のためには一度は経験しなければならない〝陣痛〟である。

●編集部註
 平成の御代から、この40年近く前の記事を読んで思う事はただ1つ。この業界に坂本龍馬はいなかったという事である。

 小栗上野介がいなかった、と表現するべきであろうか。代わりに鳥居耀蔵や井伊直弼のような人物は沢山おり、桜田門外の変が起きなかったと考えると判りやすい。

昭和の風林史(昭和五四年十一月六日掲載分)

2017年11月10日

香海商取蘇生す 先物取引の夜明け

日本の商取界が好むと好まざるとにかかわらず香港商品取引所は先物取引の夜明けを迎えた。

「行人にかかはりうすき野菊かな 立子」

香港商品取引所の、東穀方式による輸入大豆市場オープン(11月1日)レセプションに招待を受けて、現地事情を取材してきた。

(1)同取引所理事長の抱負と今後の上場商品。(2)大豆市場に対するインポーター及び日系取引員及び欧米、現地会員の動向。(3)同取引所の日本商取界に及ぼす影響。(4)香港商取業界の現状。(5)日系取引員の活動ぶりと、今後に予想される東南アジアにおける先物取引。(6)そして日本の相場と香港の相場及び現地の投機家―等について詳細を明日付け紙面(3面)から連載したいと思う。

帰国して、業界が、香港商品取引所の大豆市場に対する受け止め方が、むこうで考えていた以上に深刻である事を知った。

しかし、すでに市場が機能しだしている。日本国内で考えている次元をはるかに越えたところで東南アジアにおける商品先物市場と取引が、新しい夜明けをむかえた現実を、われわれは直視しなければならない。

現地からテレックスあるいは、ダイヤル直通電話で生々しい原稿を送れ―と、好意ある便宜を各方面から受けたが、時間を少し置いて、冷静な目で現実を報道し、香港市場及び香港商取界の今後と、わが国商取市場と業界に対する考え方をつぶさに書くべきだと思った。

ひとことで言えば、『先物市場の夜明け』である。同取引所理事長は、第一節の開始と共に板寄せ方式による商いの進行を見るやテレビカメラや地元報道人の集まる中から抜け出て、『ハピー・スタート』と何回も叫びながら榊原氏の手を握った。

死んでいた(商い皆無だった)取引所が立会場一杯の人々の見守る中で蘇生したのである。

セリは、当初ゆっくり始まった。三カ月間、手のふりかたや注文の出し方などを指導してきた人々は、商いの進行と、次々に出てくる注文に、緊張の度を高めた。

右手の黒板には、すでに立会を終わった東京市場の輸大相場が掲示されている。

東京相場を香港ドルに暗算してみる。御祝儀商いでどんどん上ザヤ気配。すかさずオカチがハナを落した。ベルが鳴った。満場がどよめいた(柝を叩かずベルを押す)。

過去10カ月間、現場で営々と苦労を続けてきた福島氏。手振り指導の安藤氏ともに腰から下が抜けてしまった。続いて二番限、三番限と十分注文が通ったあとオカチの場立ちがハナを落した。

感無量の榊原氏は、この感動を言葉に出せなかった。吉川氏、大山氏の顔も紅潮して、これでよいのだ―、ともかくほっとした。岡地氏は東京マーケットとのサヤを盛んに計算させていた。

二節引けあと理事長との記者会見。

日系取引員のこれまでの努力に対する感謝の言葉。金及び外国通貨等金融手段に関する先物市場の開設計画。東穀取理事長からの手紙について、同取引所の考え方が語られた。

夕方のテレビ。翌朝の英字・華字新聞の扱い方はビッグだった。

●編集部註
 インターネットスラングに〝嫌儲〟という言葉がある。興味ある方はお調べ戴くとして、リスクをとる事を賞賛出来ない社会は衰退が待っている、と筆者は思う。

昭和の風林史(昭和五四年十一月二日掲載分)

2017年11月09日

激動期時代の最高のゲームだが

商品相場の投機は、不確実性の時代の、最も高度なゲームである。現代社会に適しているのだが。

「鹿小屋の火にさし向くや庵の窓 丈草」

中国が農作物価格を大幅に引き上げなければならなかった最大の理由は、都市労働者と農民の間に、大きな所得格差があったからである。

都市労働者の年間(平均)収入が六百元なのに、農民は十分の一の六十元という低さであった。

このため農村から都市に人口が移動し、ひいては大都市の失業者が増大(約八百万人)した。中国は食糧の増産に力をそそいできたが、過去20数年間、毎年の食糧増産分は増加した人口によって消費された。

米農務省の見通しでは、今後中国は毎年一千万㌧の穀物を買い付けなければならないだろう―と観測している。

現在の中国は、近代化を進めなければならない。一方では食糧を増産し、人口増加を抑えなければならない。大量の食糧輸入のためには外貨を獲得しなければならない。

本年、建国30年を迎えた中国は、難問を抱えすぎている。毛沢東がリードした大躍進(一九五八年)、文革(一九六六―九年)、四人組活躍(一九七五―六年)が、いずれも中国の発展のさまたげとなった。〝中国を駄目にした毛沢東〟という言葉さえ聞かれるそうだ。

狂信的独裁者の陥る不幸といえようか。中国の今後は、まだまだゆれ動くことであろう。

さて、相場のほうも昔は、該当商品の需要、供給、仕手事情を主にして考えればよかったが、今では円為替、フレート、金銀相場、他商品との関連、海外市場における投機筋の動向、そして公定歩合、石油などをカバーして、中国、韓国、ベトナム、中近東諸国の政治まで理解分析しなければならないから、投機は知的な高度なゲームである。

●編集部註
 私事で恐縮だが、この記事が書かれてから約7年後、ある使節団に同行し、中国の四川省に1週間ほど滞在した事がある。

 両替の際に、ガイドの方から諸注意を受けた。

 この当時、人民元は外国人が使う外貨兌換券と通常の人民元に分かれており、前者は国内のあらゆる場所で通用するが、後者は使用できる場所が限定されるのだという。故に取扱いに注意を払い無暗に札びらを切るなよと。確かこの時、1元が100円くらいであったと記憶している。そこから30年くらいたった現在、1元は17円くらいか。

 この記事が書かれた頃の日本は高度経済成長が終わっている。ただ戦後1㌦=360円のレートから始まった相場は78年に175円付近まで円高になり、そこから80年4月に250円まで円安となる。この文章は、その円安トレンドの中で書かれたという点は頭に入れておきたいところだ。