昭和の風林史(昭和五九年四月十八日掲載分)

小豆のトレンド上値指向

交易会成約の材料で叩かれた七、八限小豆の押し目は、絶好の買い場になる―と。

昨日当欄の大穀六月限自己玉は売りと買い枚数が逆で、圧倒的に買いが多い。原稿を書きながら、なにかほかの事を考えて、こんなミスをしてしまう。春は頭の中に霞がかかる。なにを考えていたかというと興和商事の山中会長から甲州園のシャトールミエールの白を送ったという電話を受けて、数年前の今時分、桃の花の満開に塩山の乾徳山恵林寺にご案内いただき、お昼は桃源に美酒を酌んだ。

さて、想い出はほどほどにして、小豆は交易会の成約を流して相場を叩く予定があるらしく、その叩かれたところを拾うのがよい―と、まるで手の内をあかすような話があった。

30㎏建の先限は新値に買って、本命である七限、八限も三万二千五百円→三千円の上昇トレンドに乗った姿である。

目下のところ強気陣営は四囲の状況を見ながらの進退であり、取り組みの漸増と人気の盛り上がりを待ちながら戦機を遠くに置いてキッカケを絞り込んでいく態勢のようだ。

誰が作戦し、誰と誰とが連携しているわけでなく、風雲を知り、各地に群雄の割拠という戦国の図とでもいえよう。

従って相場地合いは非常に強い。小豆の好きな投機家筋も三万一千円以下には行きようのない事を知り、三万三千円、五千円、時と場合の七千円を想定したりする。

まして、売り玉という売り玉は地下資源のように三万円一千円以下か三万円以下にあっては、上昇エネルギーに不足はなかろう。

弱気は需給面から考えたら、とても買えないという気持ちが支配していてファンダメンタリストの陥りやすい危険な場所にきているようだ。

ともあれ相場の基調は上げ潮に乗っている。

●編集部註

 夏目漱石の弟子にして風林火山も敬愛する日本を代表する随筆家でもあった内田百閒は、戦前から酢を垂らしたおからをアテにシャンパン(スパークリングワインではない所が重要)を呑んでいたと作品で書いている。

 小説家の永井荷風は、戦後の食糧難の時期に千葉県は市川のボロ屋で孤老の晩年生活を送るが、その頃の写真を見ると、調味料や珈琲は当時手に入れる事が難しい舶来の品々ばかりで―。筆者はこの手の話が大好物だ。

 何が言いたいのか。ズバリ「甲州園のシャトールミエール」である。

 シャトーと付くには格式が必要である。1885年創業、今の金鳥と同期であるこのワイナリーは、今も甲州ワインの超一流ブランドである。