昭和の風林史(昭和五八年十月三十一日掲載分)

2019年11月18日

小豆先のほう絶好売り場

小豆前二本は煎れ出尽くせばそれまで。先三本来月の下げを狙って売りが本命。

小豆買い方強気は『七月、八月に三万六千円~八千円があってもよい相場を抑えつけた。その生命力が残っていて、いま蘇った』―。

あの時は、たしかに凶作相場をホクレンや役所が、よってたかって抑えつけた。

世の中には辛抱のよい人もいて11限の天井掴み玉が奇跡的に助かった。

とりあえず新甫に向かって煎れ先行であるが、期近高に刺激されて先の方の限月が買われた所はやはり売り場である。

できうれば三~四月限あたり三万二千円台に買われてくれれば申し分のない売り場になりこの売り玉が年末に向かっての楽しみ。

来月も中頃あたりから現物の年末需要も一巡する。輸入小豆も市中に出回ってくる。また東穀で10月納会受けた筋あたりが、倉敷料に嫌気してくる時分である。

お酒の樽の上から一杯一杯盗み酒するのは怖くないという。何故ならお酒が減っているのが目に見えるからだ。怖いのは樽の底から一滴一滴漏れるのが一番怖い。気がつかぬ間に空になってしまう。

定期で引かされた玉を意地で受けて、倉敷料を払ってゆくことは樽の底からお酒が漏れるようなものだ。

輸入大豆の方は先限五千二百~三百円あたりまで戻してほしい所。

期近は小千丁をズンべラ棒に下げて大衆玉は殆ど投げ終わった。

シカゴは八㌦の抵抗をほんの少しやるだろう。しかし、まだ下げのトレンドの中だ。穀取も戻り一杯の、その時の様子を見たいところ。

●編集部註
 東京一般大豆のチャートが、既にご臨終を迎えた方の心電図の如き線形になっている令和の秋に今回の文章を読むと、先限だけでなく、各限月ごとにひと勝負もふた勝負も出来るというのは実にうらやましい限りである。
 そういえば、昔は色々なサヤの形を勉強させられた物である。順ザヤ、逆ザヤだけでなく、おかめザヤや天狗ザヤというものもあった。サヤを取ったり、ハナを取ったりするのも相場の醍醐味であった気がする。
 いつから、こうなってしまったのか。いつの間にやら戦後日本の穀物相場は、数奇な生涯を送る事になってしまった。
 話は変わるが、この時期に日本では『ガープの世界』が公開されている。
 今やアメリカ文学の重鎮であるジョン・アーヴィングの同名小説の映画化だが、原作と異なりビートルズの曲から始まる出だしは巡り巡ってエンディングへとつながる構成になっている。この話も数奇な人生の物語。ロビン・ウィリアムズの出世作なのだが、彼もまた数奇な生涯を送っている。

昭和の風林史(昭和五八年十月二十九日掲載分)

2019年11月15日

輸大は目先応分の反発が

小豆は期近限月の煎れ先行型。先二本の二千円台売り。輸大は目先応分の反発どころ。

小豆は当限落ちで東西の取り組み合計は四万七千二百余枚。七月の上旬が三万八千九百枚の取り組みで八月上旬五万九千枚までふえた。

その後五万三千~六千枚で推移してきたが、天災期の人気相場終焉とともに玉整理期に入った。

期近限月は煎れ先行で11限は七月、八月の天井値指呼に噴いた。

現物が読めているから仕手がかった動きにはいれば売り玉に歩はない。

まして東西とも自己玉11月限は圧倒的な買いだから煎れ尽くすまでは緩むまい。

輸入枠が九五〇万㌦あたりということも買い方に元気をつけた。

産地相場も凶作確認の動きで、相場バイオリズムは新甫、二日あたりまで強気支配が尾を引きそうだ。

われわれは、二、三月限、新甫の四月限の買われたあたり、盛りのよいところを売る方針。

二、三月限の二千二百円、三百円は、前々からほしい値段であった。

地合いがそのあたりまでくると買いたい人気に包まれるだろう。満を持して売っていくのがよい。

輸入大豆のほうは下値を残しているが、期近限月など高値から小千丁も崩しただけに、ひとまず値頃の抵抗を受けるところだ。

シカゴも七㌦台の相場展開を前にして、やはり八㌦の抵抗ラインにある。

高値掴みの穀取輸大の大衆玉は、ほぼ整理されたようだ。

従って、いずれ先限の四千五、六百円は時間をかけて取りに行くだろうが、当面は応分の反発があってもよいところにきている。

輸大の上げ方もきつかったが、やはり天井三日であった。

流れとしては大局下げ道中のなかの自律戻しがあるべき段階。しばらくは輸大を弱気しないほうがよい。

●編集部註
 今回の記述は、囲碁・将棋の世界でいう感想戦のような趣がある。そこには、買い方や売り方の心理とその心理がもたらす値動き、更にはその動きがもたらす次の展開が綴られ、実に興味深い。
 このように勝負を振り返る文化はエンターテイメントとなり得る。囲碁や将棋の様に実際のプレイヤーが振り返るだけでなく、例えば「江夏の21球」の様にノンフィクション作家による取材でつまびらかになるケースもある。
 ドキュメンタリー仕立てでフィクションの世界でも登場する。「レイジング・ブル」はその代表作であろうか。相場の世界だと「マネー・ショート」も原作とは違うアプローチで面白い。エンドロール直前に出る一文がこの作品の肝である。

昭和の風林史(昭和五八年十月二十八日掲載分)

2019年11月14日

来月の小豆崩れが見える

小豆が輸大の二の舞いになろう。来月の小豆崩れを楽に取って越年態勢に入る。

シカゴ大豆は線の通りの動きだ。雑音も先入感も遠く離れて、とどかないから判りやすい相場。

とりあえず七㌦60~50あたりにトレンドの抵抗があって、七㌦時代の押したり突いたりという相場展開になりそうだ。

もちろん七㌦40~30の窓埋めがあるわけだ。

穀取輸大のほうは、先限の四千七百五十円。そのあたりで、あとのことを考えてみる。

トレンドからいえば先限四千五百円は来月のお楽しみ。崩れたところを売らず下げるために戻した戻り頭を売っておけばよい。

相場のポイントとしては総投げ(大幅安時の大出来高、特に大量バイカイ)を待つ。その時は売り玉一兵も残さず退いてしまうこと肝要。

小豆は、輸大の二の舞いになる前兆が見える。

ゴムでいうとゴムは八月4日二九一円五で天井。二七二円まで崩れて、あと八五円まで反発した。

今の小豆は、ゴムでいえばこの時に似ている。

二八五円から二五〇円まで下げたような、ああいう気崩れがこれからの小豆即ち来月の小豆と見えるのだ。

期近のほうの11限や12限は関知しない。われわれは二、三、四月限が判りやすい。

今度ドサッときたら先限三万四、五百円になだれてくる、いかにも、おいしいところである。

目下のところ、なぜか人気が強い。一種の期待感なのか、ムードなのか、現物事情からくる採算値など、現実の映像が人の心をして買いたくさせる。

しかし相場そのものは三万円割れ→二万九千五百円→二万八千円に向かう大きなトレンドの中にある。

目下はダムに水を貯めているようなものと思って、人々がワッと買うあたりをサラリと売ればよい。

●編集部註
 人々が〝ワッ〟と買うあたりを、〝サラリ〟と売れる事が出来れば、相場師として達人、仙人の領域ではないだろうか。出来るようで出来ない。何故なら、人々が〝ワッ〟と買うあたりで、自分も同じように〝ワッ〟と買ってしまうからである。経験則上、日頃斜に構えて〝サラリ〟を気取っても、ハプニングに見舞われた時の人間は存外〝サラリ〟とは振舞えないものである事を痛感する。
 堪え性のなさと言えばそれまでだが、あえて堪えに堪えた挙句、大やけどを負った経験もあるから始末に負えない。結局は運なのだろう。
 昔の人は偉いもので、相場は「運・鈍・根」であると喝破した。まさにこの通りである。

昭和の風林史(昭和五八年十月二十七日掲載分)

2019年11月13日

輸大も小豆も下げの時代

小豆は先々と売っておけば意外に大きい。輸大も値頃観で買うから下が深くなる。

小豆は当限落ちる前に大穀の取り組みは三万枚を割った。

東穀も当限落ちで二万枚を割る細った取り組み、そして薄商いの各節。

証拠金の高い小豆なんか、お客さんは敬遠しますよ―とセールスも今の小豆に関心がないけれど、やはり小豆には根強い小豆マニアがいる。

一年12カ月のうち、二カ月(七、八月)強気して、あとの10カ月は売りっぱなし。それで判りやすい。

やれ入船遅れ、それ中国は積極的に売らない。輸入枠は、多くない―等々。それは強弱であり材料である。

相場で銭を儲けることと材料の強弱垂れるのは、これはまったく別の次元である。それさえ判れば、(1)に流れ(トレンド)、(2)に人気(取り組みと出来高)、(3)に日柄、(4)需給。これを見ていけば、需給相場なるが故に大きな間違いはないはず。

見渡して強弱の世界は皆強気である。だから楽しみなのだ。

来月は三万円割っていくアッという下げが展開する。

輸大のほうも先限四千七百五十円がある流れ。

シカゴは売り支配下の相場で八㌦割るために戻す。

相場というものは、その時、その時の流れの中で、戻すから強いのではなく、次の下げをつくるために戻すことがある。今のそれは八㌦を深く割るための下工作みたいなもの。

去年の11月の輸大相場は中豆圧迫で東京四千四百円から三千九百六十円に下げ、12月に入ってさらに崩れて正月10日三千五百十円。

今年も似たような波動であろう。居所が千円上というだけで投機家にとっては居所よりも値幅が問題。

買い玉整理は六割ほど進んだが、また値頃観で買うから、この相場駄目だ。売りっぱなしでよい。

●編集部註
 根強い小豆マニア―。
 頭の柔らかい相場巧者からそう揶揄されても致し方ないのかも知れないが、ここはあえて〝マニア〟の側を擁護してみたい。
 全員ではないだろうが、彼らは〝それ〟しか知らないのである。
 その昔、筆者が外務員試験に合格して現場に配属されるまでの間、毎日毎日で大きな罫線用紙に何か一銘柄を選択して日足を書くよう指示された。 この時筆者は金を選択。以降ずっと罫線を手書きで書くようになった。その結果、相場を金目線で考えるようになっている。
 昔読んだチャートの教科書に、ひたすらパイオニア【6773】だけを取引する「パイオニ家」という投資家が登場する。商いがあるのなら、そういう生き方があっても良いのだと思う。あくまで、商いがあればの話だが。

昭和の風林史(昭和五八年十月二十五日掲載分)

2019年11月12日

売りあるのみの小豆大局

輸大は、なんとも気重い相場になった。小豆は先二本の盛りのよいところを売る。

休日入電のシカゴ大豆高と円安を見て、追証入れよか玉投げましょかの穀取輸大買い玉は、ひとまず追証入れて様子を見ることになったようだ。

シカゴは瞬間的に八㌦10を割って目先の下げトレンド抵抗帯に触れて反発したが、あと買われても中勢、大勢下降トレンドの支配から脱することはできん。

これからは、戻しただけあとが悪くなるという足取りになる。

国際情勢の緊迫化と国内政治の混沌で円の軟弱化はやむを得ないところ。

国際商品全般は円軟弱で下げに歯止めがかかる格好だが、相場そのものの流れには為替要因を過大視しない方が判りやすい。

穀取輸大は、いずれ先限四千七百円台の水準に落ち込む。戻りを売っていけばよい。取引員自己玉ポジションは年末にかけて収穫期に入るのが普通のパターンである。

小豆は期近限月が下げようとする相場の流れに歯止めをかけている。

輸入の枠が出るまでは、『ない物売ってもはじまらない』という空気。

これは11限についてもいえる。取り組みの安値におけるカラ売り玉が読めているから、これを踏ませる動き。

露骨にやれば、面白いように煎れてくる前二本だ。

しかし期近高につられて先限が高ければ、これは盛りのよい売り場になる。

相場の大勢は、すでに決まっている。

証拠金の高い当限や二番限(11月限)など触らず二、三月限で来月早々から大崩れするであろう小豆の価格革命を取ればよい。

小豆の取り組みは細る傾向にある。これは、昨年の解け合い後にも見られた現象と同じで、薄商いの中での値崩れ現象の暗示と思えばよい。いずれ、アッという下げになる。

●編集部註
 〝国際情勢の緊迫化と国内政治の混沌で円の軟弱化はやむを得ない…〟とあるが、この円安/ドル高問題に対して、先方の大将であるロナルド・レーガンがこの年の11月9日に来日。日本の市場開放と防衛努力を「要請」したと、小学館の「戦後史年表」に書いてある。
 この頃、ドル/円相場は230円台であった。
 しかし、その1年前は270円台。この円高は意外な所で効力を発揮した事が先日分かった。
 今月文芸春秋から出版された春日太一の「黙示録 映画プロデューサー・奥山和由の天国と地獄」を読むと、奥山和由は三船敏郎と組んでフィリピンに飛び、円の力をフルに生かしてマルコス大統領の協力を仰ぎ、同国で映画ロケを実施していた。

昭和の風林史(昭和五八年十月二十一日掲載分)

2019年11月11日

暁に祈る大豆の買い方

輸大強気は暁に祈る毎日。遥かシカゴの空は暗雲低迷。小豆は下げたがっている。

流れとしての小豆相場は下げたがっている。強気している人は、絶対にそうは思わないだろうが、先二本の三万一千円割れに、あれよあれよという下げがくるだろう。

なにがどうだから、ああだ、こうだと言いだせばきりがない。

とどのつまり相場は相場に聞いてみる。

小豆の取り組みが痩せてきた。高値の買い玉、辛抱する木に花が咲くと信じて我慢の子も、当限納会、来月限の仕手様相など、確たる信念なく、人まかせ他人まかせの昨今である。

今は相場の性格が需給本位であるから動きとしては地味である。ただ小さな動きで小緩んで、これが肩下がりのトレンドに忠実なあゆみを続ければ、いずれどこかでドサッと来る怖さを考える。

行く行く小豆の二、三月限は三万円割れであろう。売りっぱなし、売った玉忘れておれば成果大きい。

シカゴ大豆はトレンドと喧嘩するなを地で行くものだ。今の場合七㌦60あたりを中勢が示している。目先としては八㌦10あたりに軽い抵抗がある。

穀取輸大は中国大豆成約とシカゴ安で売られたところを商社筋のヘッジ売りが利食いを入れていた。

戻ればすかさず売り直してくるだろうから、高い中豆買ったあとの定期利用が投機色を強めるだろう。

輸大の内部要因は大衆筋の高値掴みが上値を圧迫している。

これらの買い玉は、遥かなるシカゴの空に思いをはせるだけである。雄途むなしく傷ついた買い玉は、あの山の上。これの救援策によい知恵もない。

歌の文句、あすに望みがないではないが、シカゴだけが頼りとは、心細さがつのります。

流れとしては輸大先限四千七百五十円あたりか。

●編集部註
 1983年10月は世界的に血生臭い事件が続いた。同年10月9日にビルマ、つまり今のミャンマーで爆弾テロが発生。韓国の閣僚を含む16人が死亡。背後に北朝鮮が絡んでいると噂されていた。
 同年10月25日、カリブ海の島国グレナダでの政変を理由に米軍が同国に侵攻を開始。これも東西冷戦の中の一事象に過ぎないが、この事件を理由に、東側諸国は翌年のロス五輪をボイコット。実は80年のモスクワ五輪ではソ連のアフガン侵攻に抗議して東側諸国がボイコットしている。 こうした国際政治の世界でのヒリヒリとした空気の中で、ドル/円相場は10月中232・5円を挟んで2~3円の上下変動が繰り返される。これが各種金融市場に波及したのはいうまでもない。

昭和の風林史(昭和五八年十月二十日掲載分)

2019年11月08日

静中の動・閑中に激あり

やや寒の壁に動かぬ線の先。相場閑居して強弱なしというところ。待つは仁か。

俳句の季語に、やや寒、うそ(薄)寒、そぞろ寒など、同じ寒さでも微妙な違いを言い分ける。

相場の世界も値動きについて表現が沢山ある。緩い、小甘い、気重い、安い、崩れ、急落、惨落、暴落、崩落、瓦落、続落など昔は随分言い分けた。

『閑ですね』―と。取引員経営者は『困りますね』と、言葉が続く。投機家は『どうでしょう?』とあとに続く。

閑ですね、が日常の挨拶になっては困る。

閑な時はどうするかでその人の人間性が判る。

小人は閑居して不善をなす。しかし、小人罪なし玉を抱いて罪あり―などと、悪いのは玉のせいにする。

さて、小豆のほうだが、ここは小さな動き。

輸入枠が判るまでは強弱が決められない。

しかし大きな流れとしては下に向いていると思う。売っている人は在庫がたまるのを待つ。相場が疲れきるのを待つ。相場の世界で待つは仁という。

本当に下げだすのは来月に入ってからであろう。

そのためには買わせるところがなければならない。

それにしても、なんとなく野山の景色が肌寒い。

相場の世界は薄寒い。燈下親しみ秋の夜の酒は一人静かに湯気の上がる鍋の湯気など眺め、白菜も来月にならないと味がまだ出ないなどと思ったりする。

輸大のほうも中豆成約の様子眺めで、量的にどの程度になるかを知ってから思惑しても遅くないというのか、先限出来申さずでは、朝から気抜けする。

シカゴの線型は八㌦50以下に安住の地を求める姿で、トレンドも段々判りやすさを見せてきたから、八㌦割っていく成り行きだ。

ただしこれも日柄をかけながら重いという相場。

穀取輸大のほうは先限三百円以上の売り場待ち。

●編集部註
 当時の値動きを日足で見て、更にこの文章を読んで、行間から察するに本当に閑なのだなぁと感じてしまう。
 閑や退屈は逢う魔が刻。いらんことしぃで相場を曲げる事は多々ある。曲がるではなく曲げるだ。
 そういえばこの時期、田中角栄元総理がロッキード事件で実刑判決を受けた。更にその様子を写真週刊誌が隠し撮りし、大きな話題となった。
 これを基に原田眞人が「盗写 1/250秒」という映画を作り、201 6年にそのリメイクとして作られたのが大根仁監督、福山雅治主演の映画「SCOOP!」である。
 モデルとなった写真週刊誌「FOCUS」は既にない。諸行無常である。

昭和の風林史(昭和五八年十月一九日掲載分)

2019年11月07日

秋の相場はつるべおとし

シカゴは下げ急と見る。精一杯の戻り完了。小豆は先限三万円近くまでジリ貧コース。

匹馬行くゆく将に夕べならんとす、という高適の詩みたいな場面で、征途去ってうたた難し。(この道行くは難儀なことだという意味。)

小豆は、もう一段高がほしかったが力がない。はいそれまで―と期近が首を垂れてきた。

前二本売りは怖い、怖いの気持ち(人気)だが、案外売りごたえのあるのが前二本かもしれない。

買い方は、『一体なにを渡すのだ?』とうそぶくが、売り方は『一体受けてどうするのだ?』と、おたがいブラフ(ポーカーのはったり)の応酬。

それはそれでよいが、水の流れと人の世は、静かに見ていたらおよそ見当がつく。

この小豆相場は、流れとしては二、三月限で言うなら三万円を割っていく。

今は現物が高い。輸入が遅れている。北海道生産者は売らん。在庫が軽い等々であるが、それ故に今の値段を維持しているのだという発想の転換でモノ事見る目を持てば、強気が多いうちに売っておけとなる。

今は書くのがまだ早いが上に千丁か、下一万丁かの小豆の上千丁が実現できず、さしずめ先二本基準で三万円そこそこ。来月から師走にかけて二万八千円という流れでなかろうか。

輸大のほうはシカゴが戻り一杯した。

今度は八㌦割れへのコースであろう。トレンドは明らかに下降帯の中で崩れの様相を孕んでいる。

穀取輸大は、やや売り込み型であるが、九月22日彼岸天井(東京)五千七百五十円から千丁下げの四千七百五十円あたり二月限三月限来月生まれの四月限の一代足であるはずだし、なければおかしい。

一相場終わった―という認識がまだない。需給と相場が分離する段階というものを知るべきである。

●編集部註
 笑いは「緊張」と「緩和」である―。
 これは確か、今は亡き落語家、桂枝雀の言葉であったと記憶している。 相場にも「緊張」と「緩和」が必要である。江戸時代の米相場では火縄で一回の取引時間を決めていたと何かの本で読んだ事がある。一度に注文をまとめる「板寄せ」のはしりと言えよう。
 今の穀物相場が衰退したのは、間違いなく取引方式を板寄せからザラバにしたためである。教会の鐘塔に狙撃兵がいる事がわかっているのに、ノコノコ外を出歩くのは、殺してくれと言っているようなものである。値決めというものが何たるかを解っていない人が日本の穀物取引を亡ぼした。
 現物市場にも目利きが減ってきているという話を聞いた。世も末である。

昭和の風林史(昭和五八年十月一八日掲載分)

2019年11月06日

小豆の売りが判りやすい

小豆先限三万一千円を割ると三万円大台割れもあるという線型だけに怖いところ。

小豆の商いも薄い。仕掛けづらいようだ。

材料に決めるものがないから仕方のないところであろう。

ホクレンの動向。実際の収穫量。輸入枠。交易会での商売の進み具合。輸入商社の動向。

そういうものに神経がくばられて高値の買い玉、安値の売り玉、様子眺め。

相場つきというか、地合いなどから見て、今の場合、先二本の三万一千円割れあたりがジリ貧コースと思われる。

強気している人にとっては、あくまでも押し目段階と思っているわけで、決してこの小豆、ぬるいとか重いとか思わないようだ。

そこのところが相場の強弱親子でも別。人それぞれの主観の問題である。

材料などを考えないで線のみの判断でいえば、1月限の二千百円、二百円、三百円のダンゴになった七本の線から下に垂れてくると、やはり千円下げがくる。

これは12月限にしても同じで、三千百円あたりが上値の抵抗となり、あそこでモダエ型。

すでに2・3月限は綺麗な下げトレンドの中にある。

相場は需給であり、材料であり、人気であり、日柄であるかもしれないが、相場は運であり、感覚である。それらの適用がうまくいくかどうかである。

輸入大豆のほうはシカゴ離れして強気は首をかしげた。

一体この輸大はどうなっているのか?というわけ。

どうもこうもない。取り組みが重い。それとやはり昨年今時分から嫌な思いをした中国大豆のことが忘れられない。

シカゴはこれで大きな切り返しかというと、それはないだろう。

日本では大根時の大根は値が安い。向こうではなんというのか知らないがシカゴは戻り精一杯やったと見る。とにかく収穫の秋だ。

●編集部註
 秋は芸術の秋でもある。
 1983年は、翌年がロサンゼルスオリンピックという事もあり、公式キャラクターである「イーグルサム」を主人公にしたアニメが制作され、TBS系列で放送されたりしていた。
 大人向けの映画としてはオリンピック警護に便乗して暴走する権力側と、その陰謀を知った事で終われる男を描いた作品がこの時期公開されている。
 その作品の名は「ブルーサンダー」。とはいえ、監督はジョン・バダムなので、重いサスペンスではなく軽妙なアクション映画になっている。米国映画はこういう所が巧い。
 この作品がヒットした事で、日本ではその2カ月後にこの監督の前作「ウォー・ゲーム」が公開され、これもヒットした。

昭和の風林史(昭和五八年十月一七日掲載分)

2019年11月05日

なぜ市場は閑になるのか

市場が現在どのような状況下にあるのかを、常に念頭に置いて相場を見ていくこと。

商品市場は相場が激しく動いたあとは、必らず商いが閑になるもので、これは先物市場の宿命というか仕組みである。

現在の日本の先物市場に流入している投機資金は精糖なら精糖、ゴムならゴムという庭に限られておらず、商品別、市場別の垣根がない。

投機資金は(1)相場の動きが大きいものに移動する。(2)しかも、証拠金額のより低いものに流れる。

それらの資金は回転がきつければきついほど手数料という自然消耗で全体量が加速度的に減額し、たえず市場に新しい投機資金を注入しなければ市場の機能は低下していく。

思惑に失敗した投機家は当然去っていき、利益した投機家と、新規の投機家と身動きつかないポジションにある辛抱組の、この三種類の資金がヘッジ玉と絡まって次なるショック(相場変動)に身をゆだねる。

従って、大消耗戦(大変動)のあとは、更に強力なインパクトを与えるだけの新規の資金が流入しなければ市場は低迷する。

また、そのためには、価格に刺激を与える材料が出現しなければならない。

中には利益した資金を市場から引き揚げてしまう投機家もいるが、多くは高値の買い玉、安値の売り玉、相場はその中間に浮遊している。

出来高が少ない。値付きが悪いというときは、たいがい以上のような背景のもとにある。

以上のような仕組みというか宿命下にあることを充分理解すれば、業界全体の取り組み高即ち資金の在庫量と、総出来高即ち資金の消耗量を掌握し、あとは投機のマインドの濃淡を計量化して、商品市場全般から個々の商品の環境(人気、証拠金、材料)を見くらべていけば、有力なる先見性が発揮できる。

●編集部註
 第一次世界大戦の西部戦線、塹壕の中を行きつ戻りつの総力戦のような光景が目に浮かぶような解説である。中では、スタンリーキューブリックの『突撃』で描かれたような世界が繰り広げられたのかも知れない。
 話は思い切り脱線するが、VFX技術の進歩のおかげで、ここ十数年意欲的な時代劇が作られるようになった。といっても日本の話ではなくハリウッドの話である。
 スピルバーグの『戦火の馬』、DCコミックを映画化した『ワンダーウーマン』、そして来年2月に公開する事が決定した『キングスマン』の三作目。そのどれもが物語の中心で第一次世界大戦が舞台となり、そこでは、この世の地獄の如き凄惨な戦闘シーンが描かれている。