昭和の風林史(昭和五九年四月十六日掲載分)

しばらく静観する買い方

小豆七、八限の押し目を売り込むと捕まるだろう。むしろ押し目買いのところか。

東穀は16日10時から定例理事会の前に緊急市場管理委員会を開き“小豆(六月限)市場の情勢分析”と対策を検討する。

小豆六月限の片寄った取り組みに対し、農水省商業課(行政担当)に電話や投書その他の動きが激しく、当局としても二月、三月名古屋市場における異常な小豆の納会に憂慮していただけに、小豆市場が再び六本木事件→取引員違約→強制解け合いのような事態に至ると、上場廃止の問題になりかねず関係取引所も市場管理について神経を配っている段階。

ところでこの六月限買い方であるが、あくまでも市場あっての相場であるから、良識ある収拾の方向に協力する姿勢を保ち、交易会の商談推移と、産地春耕の進展、夏の天候と小豆、今後の需給予想を勘案しながらバランスを保った進退を検討し、不慮の事態の発生に至らぬよう、自粛気構えのようだ。

もともと大型枠発表後の“感情的な買い煽り”が市場の空気を硬化させたものだけに買い方にとっても反省するところがあろう。

大阪市場のほうは、六月限に商いが集中する傾向があり、一般投機筋の天災期小豆にかける期待が盛り上がろうとしている。

しかし目下のところ東穀六限のような極端に片寄った取り組みでない。来月に入れば大幅な臨増しで対処することであろう。

全般としては大衆筋が強気に転換したところである。従って当面は下値調べに軟化するかもしれない。

神戸筋は「当初予想していた以上に期末の需給がゆるむから先のほうの限月は売り方針」である。目先は模様眺めか。

●編集部註

当時この記事が掲載される一週間前、第2次中曽根内閣はこの年の2月に世界初のマッキンリー冬期単独登頂に成功後消息を絶った登山家にして冒険家の植村直己氏と、4月6日に亡くなった戦前からの銀幕スターの長谷川一夫氏に国民栄誉賞を授与すると発表した。令和の現在まで故人を含む26名と1団体(当時のサッカー女子日本代表)がこの賞を受賞しているが80年代の受賞者は彼らが初めてになる。

そもそもこの賞は、77年にホームラン世界記録を打ち立てた王貞治を称えるため福田赳夫内閣が創設した賞とされている。その翌年に亡くなった古賀政男に贈られて以降、彼らも含めて没後受賞が続いていた。同じ形で、美空ひばりや長谷川町子、渥美清や黒澤明などもこの賞を受賞している。

スポーツ選手の受賞も多い。84年のロス五輪で金メダルを獲得した山下泰裕(現JOC会長)もその年に受賞した。

令和2年6月24日記