昭和の風林史(昭和五四年十二月十七日掲載分)

2017年12月22日

12.22(日刊版12月19日付)

歳末難儀道 雑感 イラン憎けりゃ…

アメリカの腹立たしさのホコ先が日本に向かってきた。坊主憎けりゃ袈裟まで憎し―は人の情。

「訪ひそびれしていしことも年の内 文三」

石油値上げ→金暴騰→円安。今年になって何回か繰り返してきたパターンだ。

イラン原油をめぐり、日米間が難かしくなってきた。

アメリカは、大使館の人質問題で、イランに対する国民感情がエスカレートしている。

イランの石油を買わないようにして報復の輪を縮めていこうとするが、日本がイラン原油を高値で買っては、報復の効果がない。

日本は、なんとしても石油を手当てしなければならない。アメリカは、そういう日本に、腹立たしさの矛 (ほこ)先を向けてきた。

不買同盟をしようというのに、同盟者のような顔をして、裏から大量に買っていては、裏切り者めが―となる。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いという言葉がある。

アメリカは人質さえとられていなかったらイランに対してもっと強い手段に出ただろう。

なんとも腹立たしい気持がよく判る。

そのはけ口を、これまた腹立たしい日本に向けてきた。日本は、強そうに見えて弱い。アキレス腱が、どこにあるかを知っている。

日本からの輸入には50%の課税をするぞ―と。ていのよい輸入禁止である。

国防費を増やせという。お隣りの韓国に火を付けておいて、自分の国は自分で守ったらどうか―と。

ところで、日本の国民感情というものは、いったいどうなっているのか。

無反応、無感動みたいである。

抜けがけで、イラン原油を買った商社の立場もよく判る。アメリカの立腹もよく判る。イランに対しては強い態度にも出られない。

しかし、大平さんの国会答弁のような、煮えきらない態度は、結局アメリカも、イランも、そして自由諸国も激昂させるだけで、日本は追いつめられる。

戦前は、連合艦隊と無敵帝国陸軍を擁していたから、この辺まできたら、恐らく軍閥は戦争の準備にかかっただろう。今は民主平和の国だから、外交手腕で切り抜けるしかない。

要するに全方面外交、八方美人の落ち行く先は、うたかたのものでしかない。

国民は、生活水準を下げ、耐乏していく事になるが、日本人は順応性があるから、政府批判をしながら対応していくだろう。

一九八〇年代は不快な10年になるだろうと言われているが、その事をまるで示唆する昨今だ。

●編集部註
 米国の不幸は、第二次大戦後、日本での占領政策があまりにもうまく行き過ぎた事ではないか。その後ベトナム、中東と、対戦相手をどうも舐めていた節がある。

 このような事件も半世紀くらい経過すると、フラットな視点で事の経緯を眺める人達が登場する。プロパンガンダではない文学や戯曲、映画の題材になり始める。

 この事件から33年後の2012年に「アルゴ」という映画が人質に取られた側の米国で作られた。

 何故人質を取られるような事態になってしまったのか。冒頭でフラットかつ簡潔に描かれている。

 余談だが、この人質事件以降、シュレッダーは大改良を余儀なくされた。

昭和の風林史(昭和五四年十二月十四日掲載分)

2017年12月21日

輸大自己玉変化 売り玉増勢の傾向

東・西両市場の輸大自己玉が売りになった。この変化は相場を考える上において重要である。

「うかうかと年よる人やふる暦 芭蕉」

輸入大豆の大阪穀取の自己玉は、長いあいだ売りより買いのほうが多かったが、売り買い接近したあと、売り玉が買いを上回った。

東穀の輸入大豆自己玉は相場が上昇段階でも、圧倒的な上長だった。

そしてここにきて更に売りが増え、買いは減少気味である。

東西両市場とも、取引員の自己玉が売りになったという事は、相場を判断する上で貴重な資料である。

取引員会社によってこの自己玉の扱い方は、まったく違う。

ある一定の比率で、顧客筋の売買に、自動的に向う方式、いわゆるスライドのところもある。

また、ダミー会社、あるいは傍系店を利用したものもある。

会社が、まったく自己のリスクで相場を思惑する当業者取引員の自己玉もある。

自己玉には枚数あるいは比率による規制がある。

しかしこれは、別法人、別名儀等で、抜け道を探せばどのようにでもなる。

商品取引員が当業者主義を建前とし、専業取引員も、『みなし当業者』の建前になっているから、自己玉は、なんら制約されるところはないが、これが建玉数を規制されていることから、ダミー会社、傍系会社間との預け合い、仮空名儀などが利用される。

自己玉が規制されているのは極端な客向いに弊害が出る事や、取引員の財務内容が悪化するのを防止するためである。

確かに自己玉は、顧客サービスになる場合もあれば、取引員会社の経営の支えになるところもある。しかし、そうとばっかりいえないところもある事は、主務省当局が一番よく知っている。

自己玉が取引員の経営内容を極端に悪化した例も多いし、決して顧客サービスでないやり方のところもある。だから、自己玉は、その使い方で毒にも薬にもなるのである。

相場担当の練達な商社マンは、取引員の自己玉を店の性格別に分析し、これをグラフ化して、相場内部要員の変化を知る有力な資料にしている。

これは輸入大豆に限らず、すべての相場についても言える事である。

投機家も『自己玉に強くなる方法』を研究されるとよい。玄人筋は、自己玉の推移、変化、傾向を、常に相場判断の重要なファクターにしている。

●編集部註
 自己玉が非公開になっている現在、残念に思う人もいれば、ほっとしている人もいるだろう。

 一部、手の内を晒して相場を張るのだから、むしろ今よりも公明正大であったと感じるのは筆者だけであろうか。

昭和の風林史(昭和五四年十二月十三日掲載分)

2017年12月20日

輸大は戻り売り 抵抗しながら安く

円相場は大底を打ったという見方でよいのではないか。輸大相場は大勢戻り売りが基調と思う。

「笹鳴や山影かぶる二尊院 池冷」

オペック総会の成り行きと米国とイランの関係、日本と米国の関係。そしてそれらが外国為替相場を、どのように動かすのか。ともかく不確実要素ばかりで商品市場は方向が掴めない格好だ。

輸入大豆相場は、円の反落で急落に歯止めがかかった。

長期的な需給の見通しが難かしいだけに、為替で崩れた輸大相場の安値を叩くことは警戒されている。

むしろ安いところは売り玉の利食いが急がれた。

それにしても相場判断を、なにに求めてよいか行き当りバッタリのような感じである。

シカゴ相場の見通し。ブラジル大豆の作況。中国の出方。国内需給。外国為替。金価格の予測。石油価格そして米国の対イラン政策あるいは日本とイラン関係、日本と米国の関係。

政治、経済、社会、歴史、さらには宗教―と、大豆の相場を考える上で、それらを無視することが出来ない。

一方、市場内部要因だが、大衆筋は、強気なのか弱気なのか―という事などあまり問題にならなくなっている。

大衆投機家は、売ってよいのか、買ってよいのか、さっぱり判らない。

取引員にしたところで判るはずがない。

商社自身でさえ、為替がどっち向いて走るのか、シカゴが下げるのか、止まったのか、まして石油がどうなるのか。これはアラーの神にも判るまい。

ただ判るのは、天井したものは底を打つまで下がる。底を打ったものは天井するまで上がる。

円は、日柄をかけて大下げして大底を打った、輸大相場は天井した。そのように見れば輸大の先のほうの戻り高値は売りだろう。

●編集部註
 こうして昔の記事を振り返り、相場という客観的な数値を検証していくうちに、おぼろげだった当時の記憶がよみがえる。
 そういえば、夕方のニュースでしきりに為替問題を伝える報道があった。

 海外ニュースでは丸い帽子を被った眼つきの悪い〝ほめいに〟とかいうおじいさんがニコリともしないで喋り、大勢の人達が建物を取り囲み叫ぶ映像が映っていた。
 振り返ってみると、よくもまあこんな為替変動で暴動も起きず世間が動いていた事に驚嘆する。

 話は変わり、この9月に世界文化社から「久米宏です。」というタイトルの本が出版された。

 彼がやっていたザ・ベストテンという番組は、この頃に放送100回を迎えていた事を知る。

 この本を読んで驚いたのはこの当時の夜の報道番組は19時と21時であったという事。22時に報道番組を始めたのは彼の番組が先駆けであったのだ。

昭和の風林史(昭和五四年十二月十二日掲載分)

2017年12月19日

円高に急転して 〝奈落の底〟へ

ゴム・輸大・砂糖の輸入商品は完全に頭打ち。年の瀬が迫るとともに奈落の底に落ちこむ。

きのう円が一時一㌦=二三〇円を突破した。

十一月27日の最安値二五一円五〇銭からすると二〇円以上の急騰である。

これだから相場というものは明日の日どうなるか判らない。

先月27日円が二五〇円を割ったあと、政府・日銀は六項目からなる緊急円安対策を打ち出したが、一向に効き目はなく介入や為替管理では円安基調は改めることはできないというのが一般的な見方であった。

それがあっという間に一日に十円高を演じたのだから、まるで狐につままれたような具合だ。

株式相場の方は円安を殆ど材料視していなかっただけに、突然の円高にも反応は別段なかったが、商品相場の方はこのところ輸入商品であるゴム・輸入大豆・砂糖が大衆の人気を集めていただけに影響は大きい。

とくに円の動きとストレートに連動していたゴムは僅か四日間で二五円もの大暴落、まさに買い方の顔色はまっさおを通りこしている。

こうなれば罫線も、取組みもあったものではない。目下の材料は円相場の動き如何だけである。

ところが相場のなかで為替相場ぐらい難解なものはない。

ここへきて促成の自称為替評論家が続出しているようだが、みなあたるも八罫あたらぬも八罫式のものばかり。

人の意見で右往左往していると迷いを深めるだけ。円の相場がこのままどこまで戻るか誰にも判らないが、底を打った以上三分の一か半値戻りがあるとみても不思議ではない。為替相場の影響の大きいゴム・輸大・砂糖は売り方針。投げのでるのはこれからだ。

●編集部註

 手元の記録でこの時のドル円相場を追体験してみた。僅か6営業日で、為替が18円動いている。これは尋常ではない。
 しかも週足で見ると、前年のクリスマス頃は1㌦=193円。上記の通り11月に250円を突破後に230円近くまで動いた挙句、翌年の松の内が明けるか明けないかのころから反転した相場は、80年4月頭に1㌦=26
0円を突破する。

 ミセスワタナベの時代なら、何人の死者と何人の富豪を生み出していたか。逆に考えると、電子取引隆盛の昨今で出現しにくい相場かも知れない。レッセフェールに参加するものが多ければ多い程、投機という名の思惑は価格を平準化。突飛な動きは短時間化しやすい。

 この日はもう一つ重要な日でもあった。この年の10月に朴正煕大統領が暗殺された韓国でクーデターが起こったのだ。

 実権を掌握した全斗煥は翌年に大統領に就任。その過程で起きた光州事件は、その後の韓国民にとって負の歴史となり、トラウマを植え付けた。

昭和の風林史(昭和五四年十二月十一日掲載分)

2017年12月18日

六月崩し再現へ 激水の疾き石漂わす

輸大相場は六月のパニックの時のような下げになりそうだ。先限四千五百円か。激水の疾きである。

「冬の山低きところや法隆寺 虚子」

円相場は週明け大暴騰した。相場の基調が大転換したと見なければならない。

輸入大豆相場は、泣く子と地頭には勝てないと言うけれど、シカゴと為替相場に勝てない。

輸大の取組みは、五千円台で相当買われた。

安いところを売っていた人達は、高値で踏んでドテン買いになったり、踏まないまでも両建にした。

それが、三日新ポ天井して、アッという間の下げだけに、ポジション修正の間がなかった。

取引員大豆の自己玉は、東京市場の売りが急増、買い減少である。(枚)

売り      買い
30日  六、六一一   三、八七二
5日  六、八四六   四、三二一
6日  七、八六二   三、七四一
7日  八、四八九   三、〇一一

大阪は東京ほど目立った変化はないが、それでも売りが増える傾向。(枚)

売り      買い
30日  二、七二一   四、七一四
5日  三、二四五   四、七七八
6日  三、三三六   四、七七九
7日  三、四四二   四、八七三

これを言えば、東京は売り上がって辛抱した甲斐があった。大阪は、高値で玉がふえて捕まった格好である。

円相場は、朝寄り39円90銭が、32円50銭まで急騰した。一種のパニックだ。

輸大相場はS安した。

上昇に、日柄を食っているだけに、相場としては半値地点(当限=大阪四千七百円)は素通りしての崩れになる。S安だから投げものがはまらない。

こういう時に、取引員自己玉が売りになっているところは、顧客筋の投げに対して(玉が場ではまらなければ)合わせてくれるところもあるから、自己玉はパニック時に機能するという理論も成立する。

しかし、自己玉は、その推移を見ておれば判るけれどS安パニックでも左程に減らない。顧客が投げに行っているのに玉がはまらない―という声をよく聞くのである。

さて、問題は、円がどこまで上昇するか。昨日御紹介した坂倉省吾教授は、来年夏頃百八十六円という見方である。
大勢としては、この見方を参考にすればよいだろう。

市場内部要因と線型から言えば、今の輸大は、大天井した。投げが投げ尽すまでは安いだろう。

東京自己玉売りが減少し、大阪自己玉買いが減少する時点を、一ツのポイントと見ておけば判りやすい。

●編集部註
「先限四千五百円か」とあるが、この年の国家公務員の賞与は四十七万七千五百円。
大卒銀行員の初任給が九万八千円であった頃の話である。

昭和の風林史(昭和五四年十二月十日掲載分)

2017年12月15日

輸大は天井した 円高には勝てない

円高基調が続く以上は輸入商品の下落は必至だ。特に輸大、ゴム、精糖は天井しているから戻り売り。

「眼に残る親の若さよ年の暮 太祇」

今年の5月1日付け『日本経済新聞』12面〝経済教室〟に筑波大学の坂倉省吾教授が円相場について書かれていた。

そしてその予測が見事に的中している。

即ち、円は二百五十円あたりまで下げたあと反騰に転じ、来年にかけて百八十六円まで高くなる―と。

坂倉理論は、システム・ダイナミックス・シミュレーションによる円相場の予測である。

坂倉教授は円相場を動かすメカニズムについて、昨年11月5日の日本経済新聞〝経済教室〟で論文を書かれ、俄然注目された人である。

そして、円安の最大原因が石油にあると見るのは正しくない―としている。

詳しくは、日経縮刷版を御覧になるとよい。

要するに、五月の時点で円は二百五十円まで下げてそれから反騰に転じ、来年の夏頃には一㌦百八十六円あたりまで行く―という予想を重視したい。

昨年11月に教授が予測したケースと、その後の円相場の推移グラフは、まさしくピッタリであるし、本年五月における、その後の相場変動予測も実に見事である。

その限りでは、これからの円高は、二百円割れ→一㌦百八十円台という方向に進むと考えてもよいのではなかろうか。
ともかく注目される貴重な論文である。

週末の輸入大豆は売り玉の利食いが先行した。

高値で買いついた玉はアッという間に引かされ、まだこれの投げはない。

随分安いところの売り玉を辛抱してきた人もいる。

為替が一㌦二百三十円→二十円と、急騰傾向だし、シカゴが、やはり頭重い。ブラジルの作付けも問題なく順調。

要は国内需給であるが、相場の流れというものは、人気が支配するだけに、ひとたび天井を打てば、下げ波動に抵抗出来ない。

とりあえず上げ幅の半値下げ五百円幅の下げと見る。

小豆相場は、北海道の先限で四千円あたりまでは相場を潰したくないみたいだ。

ホクレンあたりは、ヘッジした玉はそのままで、ある程度相場が戻したあたりで再び売るつもりだろう。

農家も安値で仕切ってこない。

しばらくは、円高基調が続くと見て、天井した国際商品を売っていけばよいのではないか。

●編集部註
 神田に芳賀書店という老舗の本屋がある。そこの当代は経営のけの字、経済のけの字も知らぬまま店を継いだという。
 一念発起した当代は、日経新聞の〝経済教室〟を毎朝読んで勉強し、知識を蓄え、持ち前の才覚もあって左前の家業を建て直したのだとか。

昭和の風林史(昭和五四年十二月八日掲載分)

2017年12月14日

輸入商品が御難 しばらく円高傾向

高値に買われた輸入商品は、円高傾向で売られる段階。反対に、商いは薄いが小豆が底堅い。

「炭屑にいやしからざる木の葉かな 其角」

円は二百三十円あたりまで反発するであろう―と外国為替専門筋は予測していた。

円高は、輸入商品相場を突き崩す。

精糖、ゴム、輸入大豆が特に敏感である。

精糖は先限引き継ぎ線で上げ幅の三分の一強を押したあと、七円替を反発したが、円高の直撃と海外安。そして実需不振を映して二百二十円(大阪先限)の壁は厚かった。

ゴムも、ちょっときつい下げである。

海外情勢次第とは言うものの、上昇したあとの高なぐれで、相場の日柄がかなりかかっているだけに、円高ショックで下値が深いかもしれない。

山高ければ谷深しである。

インポーターは先限を、確信を持ったような売りっぷりである。ゴムの売りが師走相場の目玉商品のような気がする。

輸入大豆も、大阪先限五千三百円は、やはり難所だった。九月の安いところから(先限引き継ぎで)九百八十円替を上げている。

これも日柄経過による買い疲れが見えた。

大阪当限は安値四千百五十円から新値足18本で千三十円幅を上げている。

新値18本、日柄64本で、12月新ポ3日が天井。千円上げに対して、基調が崩れた以上は、上げ幅の半値五百円安も充分考えられる。

ともあれ、しばらく円高が続きそうだし、シカゴも戻り一杯の相場つきである。

いまや、まったく商いが寂れてしまった小豆であるが、他商品とは反対にどことなくこの小豆は底堅い。消費不振、産地の売りヘッジなどあるため、上値を大きく見るわけにいかない。しかし安い値が付けば買ってもよいと思う。

一日の出来高合計が千枚を割る(大穀5、6日)昨今である。それも時代の流れであろうが、穀取関係者は輸大が出来ているから、小豆不人気を、それほど深刻に考えないのかもしれないが、小豆市場不振の原因などを検討し、手亡の市場みたいにならないよう努力して欲しい。

年内余日、暖かい年の暮である。

商売によっては、この暖冬が、なんとも困ったところもある。庶民生活にとってはオーバーコートも不安だし、灯油の消費も少なくて済むから有り難いわけだが、こと商売ともなれば、立場、立場で随分違う。

それがお天気の事だけに神に祈るしかないようだ。

●編集部註
 私事ながら、僅かながらこの自分の記憶が残っている。007ムーンレイカーが公開されていた。ジェームス・ボンドがロジャー・ムーアの頃だ。

昭和の風林史(昭和五四年十二月七日掲載分)

2017年12月13日

自己玉について 重要な相場資料だ

自己玉は取引員の経営姿勢の問題以前に、投機家にとっては、相場予測の重要な情報でもある。

「門ありて又石段や笹鳴す 虚子」

清水正紀氏は、過去二十年の実績では、専業取引員百社のうち、委託手数料だけで収支が償うのは二十数社しかない―という意味の事を強調しておられる。

八割近くの取引員は自己玉で経営バランスをとっている―と。

しかも、この場合の自己玉は、自らの意志で売り買いするのではない―事も強調された。

という事は、短絡的に言うと、(1)自己玉は、利益になる。(2)取引員が自衛的(注)保険として、機械的に(自らの意志でない以上は自動的に)建玉すればよいのである。

(注)取引員の自衛という事は、相場リスクに対しての自衛、あるいは、顧客の損失立替に対しての自衛、あるいはその他についての自衛―と解釈すべきか。

確かに、農林水産省調べ(商業課)の昭和46・48・50・52年調査「商品取引所売買取引実態調査関係資料」を見ても農林水産省所管商品取引所(全商品総括)52年度売買玉構成比によると全体の四分の一が自己玉で占めている。

これを取引所別に見ると、関門商品取引所は(小豆)自己玉43・7%。神戸穀取(大手亡)51・8%。

54年四月の農水省食品流通局の「商品取引所制度問題検討会報告」では〝商品取引員の自己売買は(中略)財務の不安定化をもたらすもので、商品取引員の信用業務としての性格にかんがみ経営健全化の視点から慎重な対応が必要である〟―としている。

いま、ここで、自己玉に対する制度上の問題、取引員経営上の問題、そして相場判断の資料(材料)としての問題、この三ツについて考えなければならないのだが筆者は、主に相場判断の面から自社玉を書いてきたつもりだ。その事に対して清水氏は暴論と決めつけ「頭にきた」様子である。

筆者は、相場を判断する上で、やはり自社玉ポジションについては、これに逆らっては、不利だという事を清水論で確認出来た。

同時に、取引員経営は、なぜ手数料収入だけでバランスがとれないのか。この事について、考えなければならないと思う。

自己玉、自社玉問題は、つきつめていけば哲学であり心理学である。そして、相場判断上の有力な情報でもある。自己玉は利益が上るという結果が出ている以上、世の投機家も、この建玉に無関心ではおれない。

●編集部註
 戦前、5代目蝶花楼馬楽という落語家がいた。

 曲がったことが大嫌い。おかしいと思えば誰処構わず突っかかる事からついた仇名が「トンガリ」。

 この人物こそ誰あろう、戦後5年して8代目林家正蔵を襲名。名人と謳われ、先代の林家三平死去に伴い改名した、林家彦六その人である。

 この彦六爺と風林火山が時折ダブって見える時がある。風貌もどことなく似ていた。トンガリ具合もそっくりである。きっと若き日の彦六爺のトンガリもこのような感じではなかっただろうか。

 因みに最近電子版でも読めるようになった鍋島高明氏の「侠気の相場師 マムシの本忠」(パンローリング)の冒頭に、少しだけ風林火山が登場する。

 尖りに尖って業界の大物と紙面で大立ち回りを演じ、その先どうなったかが、文中でさらりと触れられている。

昭和の風林史(昭和五四年十二月六日掲載分)

2017年12月12日

自社玉に対する 考え方の違いなど

前々から清水正紀氏から、『自社玉に対して暴論を書くな』と、お叱りを受けていたのだが。

「質草の屏風かつぐや枯柳 水巴」

取引員の自社玉について清水正紀氏に言わせると小生の考え方は「まったく初歩的不勉強による無知なればこそ言える暴論」―だそうである。

清水さんの自社玉論は、「自己玉問題は取引員経済にとって重大な影響をもつ企業保険」だから、小生のような考えで自社玉を論じることは、「自分の有利な強弱論のためには、傾向も内容も調べず、業界の不利益になることでも一向平気で主張する」記事になる。

そういう事では困るから、自社玉については、もっと勉強しようと努力しているのであるが、清水さんの考え方と同じでないと清水さんは「頭にくる」。

清水論では「専業取引員百社のうち、委託手数料で収支償うのは、二十数社で、U、H、K社等も、過去二十数年中、自社売買益を加算せず、利益を計上した年は、顧客が大当りした一年か、二年くらいしかない」。従って、取引員経営にとって自己玉は重要な企業保険である。

清水氏は、(1)自己玉がないと経営が出来ない。(2)手数料だけで経営バランスのとれる専業店は百社中二十数社しかない―事を強調されている。

また、「自社玉は、自らの意志で売り買いするのではなく、自衛的に保険として建玉されるもの」であるから「現行より(自社玉に対する規制が)遙か自由であった時代でも、自己玉が原因で倒産した例は少い」―としている。

清水さんに、お前は汽車かトロッコか?。無知不勉強を良く反省せよと言われるが、自社玉というものは〝自己のリスクによって〟行なわれるものだと理解しているのだが、そのような考えは、時代錯誤だと言われた。また自社玉は、百枚か10%以内に規制されているのだから、倍々と委託玉を扇形に拡げるなどあり得ない―と。

この場合、自己玉と、ダミー会社玉とは、区別して考えなければならなかったと反省するわけだが、小生は清水さんの言うような自己玉罪悪論者では決してない。確かに、自社玉についての考え方は清水さんと同じではないが、その事によって小生が業界の敵だ―と決めつけられては困る。清水さんは「(取引員の)自己玉を(世間に)理解してもらう意を込めて(取引員が)倒産しても償う制度も確立された」と言う。多分、補償基金制度の事だと思う。
小生は、補償基金制度がそのような考えも込められて設置されたとは露知らなかった。不勉強のそしりを受けても仕方がない。

ともあれ、清水氏は、専業取引員経営者の立場からの自社(己)玉理論。小生のは、市場利用者(主に投機者側)から見る相場強弱にからむ自社玉の理解で、まだまだ清水さんに教えを受け馬鹿か、間抜けか、暴論だ―と言われないようにしたいと思う。

従って、清水氏にも本紙紙面を提供し、自社玉についての考え方を論じたいと思う。

なお「商取最前線」(東京商品新聞)X氏を清水氏と推定して以上記した。

●編集部註
 熱い筆致である。反論側も口は悪いがロジックで返す。これが議論だ。

 どの業界にもイエロー・ジャーナリズムがある。この業界にもあった。ただ本紙はオピニオンペーパーであろうとする意志をこの記事から感じた。

昭和の風林史(昭和五四年十二月五日掲載分)

2017年12月11日

期待しない期待 小豆の押し目拾い

小豆の安いところ拾いは、期待しない期待である。輸大はダイナミックな上昇帯に乗っている。

「一箱のうるめ届きし飯場かな 三木」

小豆相場は戻しかたが急であっただけに押し目も入る。

輸入大豆に比較しようもない細った出来高であるが相場としては11月20日に底が入っていると判断出来るから、安いところを拾ってみる。

この場合、大きな上値というものは考えられないから、出来るだけ、押し目段階の、値段の低いところを買うように心掛ければ、明るい気持ちになれよう。

要するに、なんだかだと言っても底が入ってしまった相場は、上げる力がなければ横に這うし、横に這うあいだに上昇エネルギーができる。

小豆の安値買いは『期待しない期待』である。

やはり力のはいるのは輸入大豆だ。

大阪先限は6月22日の高値五千二百七十円を、新ポ。音もさせず抜いて、これが抜いたからどうという、ギラギラしたものも感じさせない。

値のはこびかたも、きわめて静かな上昇が続いている。押す事により次の上げをつくるという格好だ。

それだけに、売り玉は知らぬ間に引かされ、その引かされかたが、激痛を伴なわないけれど大きいから、年末どたん場で、まいった、まいった―と、輸大相場の怖さを痛感させよう。

この相場は、九月の安いところが(大阪市場)四千三百二十円(先限)だった。

先限引き継ぎで千丁幅の上昇になる。

上昇の日柄からいえば、かなり経過しているし、引き継ぎ線の節足新値で18本。

それだけに警戒人気がないでもないが、(1)熱狂したところがない。(2)インポーターの定期市場オペレーションが構造的に変化している。(3)国内需給事情。(4)フレート、為替がらみ。(5)激動する国際情勢。(6)シカゴ逆ザヤ―等、きわめて複雑な高次元の要因が絡みあっているだけに、単なる値頃観や日柄観では判断出来ない。

一応の目標値として東京市場五千八百円→六千円という見方も、あながち強気筋の希望的値段とは言いきれないものがある。

精糖相場は海外事情を映して反発したが、取組みが減少傾向にある。これは〝逆ウオッチ〟のチャートでいう、売りシグナルで、値段は、ともすれば垂れ、商いも細り、取組み減ではいずれ実勢悪を表面に出す値段を付けるだろう。持ち上げても垂れ込んでくる相場になっている。

●編集部註
 逆ウォッチ曲線を使っている人はいるのかと思い調べたら、個別株分析で結構現役であった。

 出来高を伴うので今の小豆相場には使えない。