昭和の風林史(昭和五四年十月三日掲載分)

2017年10月10日

ホクレン次第 売られる為に高い

天下大乱なにより結構。上にでも下にでも相場が激動すること大慶事。高いと買いたい人がふえる。

「甲賀衆のしのびの賭や夜半の秋 蕪村」

もし取引所に金が上場されていたら、商取業界は、大変な事になっていただろうねと誰もが言う。

ブラックマーケットのほうの事は詳しく知らないが、新規は幾らでも集まるが、こう相場が沸騰していては利食い→増し玉→利食い→増し玉で、建玉は厖大にふくらみ顧客の買いを、どこにもヘッジしていないから、ブラック屋は、夜逃げするしかない。

いずれこの結末が大きな社会問題になる時がくるだろう。国会でのブラック市場に関するやりとりにしても、あるいは通産省の態度にしても、ブラックに対する決め手のないことがよく判るけれど、これも一ツの社会変動期における現象の断面である。

さて、この秋は何で年よる雲に鳥―は芭蕉の句だが、この秋は待望の、天下大乱の様相である。石油の再値上げ。経済秩序の破壊。円安。輸入原料高。ぺーパー・マネーの不信。換物人気。これから先、一体どうなるのか、考えても考えても判然としないから、毎週毎週書店におもむき、手当り次第、新刊書を購入。財のある人は、これを守るため、富を積まんとする人は、千載一遇のチャンス。昔でいえば戦国乱世、槍一本で天下の獲れた、まさしくその現代版である。

そういう恵まれた時代に、商品セールスマンはただ安閑と時を過すか。それは余りにも、もったいないのである。

ところで小豆相場のほうだが、弾みがついてきた。

次期ワク削減予想。輸入小豆薄。十月在庫減。ホクレンのヘッジはずしなど、弱かった市場人気を、相場は、ひっくり返した。

そこで、二万五千円というわけだが、五千円どころは、人気を一段と強くし、煎れも出ることであろう。

目下のところ、相場が強張っているから線型も買いを示している。

しかし、人気が充分に硬化すれば、積んだ石を崩す鬼が出てくる。

『なぜ小豆は高いの?』と聞いたところ、『あんたなにを言うの。売られるために高い―と書いているじゃないの』と一本やられた。

期近で二千丁戻しか。

まあ、高い事はよい事である。今月、来月と商いが弾んでくれない事には年が越せない。

今月中旬から秋の交易会だ。選挙が済めば動きが判りやすくなろう。

●編集部註
 金のペーパー商法で人口に膾炙した豊田商事が設立されたのは昭和56年。冒頭の文章を読む限り、既にこの頃から問題の下地は出来ていたと言える。

昭和の風林史(昭和五四年十月二日掲載分)

2017年10月06日

人気強くなる 巧者筋売り場待ち

ホクレン様次第という小豆である。所詮は売られるために高い相場と思っておけば間違いない。

「赤い羽根つけらるる待つ息とめて 青畝」

台風16号は寝ている間に近畿地方を通り抜けて、大きな被害もなかったのは、なによりであった。

十月新ポ。赤い羽根の募金が花やかな声で協力を呼びかけている。長いのを下さい。一番長いのを―。胸のポケットの名刺入れに挾んで、羽根の頭が、ちょっとだけ出るぐらいの長さの羽根は、近頃見当らない。

朝の通勤電車でひともみされたら、消えてしまうのである。

爽やか十月。相場の顔つきを見ると、それほど晴晴しているふうでもない。
昔、こんな歌があったのを思い出した。「お国の為とは言いながら、人の嫌がる軍隊に、召されて行く身の哀れさよ…」と。

相場が少し高いと、「売られる為とは言いながら―」と、歌詞を置きかえてみたくなる。

ある取引員会社の慰安旅行に御招待を受けた事がある。宴会になって部別、支店別の歌謡大会で、女子社員が、替え歌で、支店営業マンの悲哀を合唱した。
彼女たちは、新規の難かしさも、追証の苦しさも、そして第一線セールスの苦闘も、あんな可愛らしい顔をしていて、ちゃんと心得ているのだな―と思った。

小生は、その替え歌の文句が実にうまく出来ているので、お膳の箸袋をひろげてメモしておいたのだが、そのメモはどこかにまぎれこんでいる。

小豆は、もう少し買われてもよい感じである。

もう少しというと、二万五千円近辺。
ないかもしれないが、あるかもしれないという、面白いところである。
市場人気は、やや底入れ感でもある。
だが、その気になると、すぐストトンとくる。
◇…ないかもしれない、あるかもしれない。あればあったでよし、なければないでよし。
などと言っていたら強弱にもならなければ、商売にもならない。

ホクレン次第とでも言おうか。ホクレンが買えば締るが、高ければ売ってくる。市場はホクレンの制空権下にあるため、投機家には活動の余地がない。

目先的には次期ワクにからみ、瞬間高みたいなこともあろうし、線型も買いを示している。

しかし、所詮は、〝売られるための高値〟である。

1年12カ月のうち買いはせいぜい2カ月。あとの十(と)月は売って暮せ―という歌がある。

●編集部註
 どの時代にもCMから流行に火がついた曲が少なからず存在する。

 この年の10月1日に、久保田早紀が歌う『異邦人』が発売され、その2週間後にこの曲が採用されたCMがお茶の間に流れ一躍話題になる。更にその2カ月後、売り上げが100万枚を突破する。

昭和の風林史(昭和五四年十月一日掲載分)

2017年10月05日

五千円あたり 売られるための値

◇…小豆の目先は線が買いを示しているから、売られるための戻しを入れよう。人気硬化ずれば終りだ。

「焼栗やまた近くなる雨の音 幹彦」

◇…商い不振で破産寸前の香港商品取引所が、日系取引員のアドバイスにより輸入大豆を上場する方向に努力していた。そして近く香港政庁の正式認可を得る模様。

現在、香港商品取引所は綿花と砂糖の先物取引を行なっているが、取引所開設(一九七七年五月)以来、売買皆無の日もあって市場は機能していない。

そのようなことから、上場商品の問題、売買仕法の問題を日系取引員が主となって洗い直し、輸入大豆を東京穀取方式で新規上場、売買方法もザラ場取引でなく、単一約定値段にする。

◇…この方法が成功すれば現在のザラバ取引を全面的に改め、また、上場商品の追加上場を進める。

◇…先般筆者は、香港の商品先物取引事情を勉強するため同取引所を訪問したが、『金銀業貿易場』(金銀取引所)の盛況に比べ、まったく眠った取引所の感があった。輸入大豆の板寄せ取引で、どこまでこの取引所が活気を取り戻せるか興味が深い。

◇…週末の小豆相場は引けで反発した。

線型が目先買いに転換しているだけに、こういう事をする。

次期ワク削減という材料がついてまわるだけに、二万五千円あたりは、無い値段ではない。

しかし、それ以上のものでもない。地合がよく見えて飛びつけば、それまでであろう。

二万五千円が六千円→七千円という可能性が、少しでもある場合なら投機家も真剣になろうが、精一杯で五千円どころ。

◇…戻せば、どこでホクレンが売ってくるか判らない。ひと場で地合が転換する環境だけに、立会中は黒板の前に張りついて各節セリを聞ける人でない限り、五百丁取りにいって、七百丁引かされ売り買い手数料を計算すれば、詮ない事になる。

◇…新ポ登場する三月限は、これは台湾小豆に影響される限月でもある。

例年10月、11月は観光がてら台湾小豆の視察団体が組まれるが、今年は、業界の景気もよくないため、ツアー参加者も少なかろうと様子を見ている咋今のようである。

◇…ともあれ、売られるために戻している小豆である。当面五千円どころは、ないかもしれないが、あれば人気は更に強くなろうから、申し分ない売り場になるだろう。

●編集部註
 ゴムならINROが、小豆ならホクレンが市場に介入していた頃の相場が懐かしい―。

 そう思う古参の相場師は、少なからずいらっしゃるのではないだろうか。

 神の見えざる手は、時として大きな恩恵を与えてくれる反面、大きな雷を落とす事もある。

 大なり小なりの雷を身体に浴びて傷を負いつつ、癒えれば、たちまち戦場に向かう。それが相場の世界なのかも知れない。

昭和の風林史(昭和五四年九月二九日掲載分)

2017年10月04日

売られるため 敢て戻す詮のなさ

◇…市場に力がないから線は買いになっても、長続きしない小豆だ。投機筋も冷静である。

「秋の野や草の中ゆく風の音 芭蕉」

◇…ゴールドが一トロイオンス(31・1グラム) 四百㌦時代にはいった。

国際商品は金の暴騰に刺激されて買われた。

国際商品は、インフレ、通貨変動、石油価格、戦争、革命、天候等によって、たえず変動する。

◇…九月中、わが商取業界は、商い不振で意気消沈だった。

しかし10月は『天下大乱・物価不安定』をスローガンに、わが商取業界は、出来高増大の時期を迎えることであろう。

◇…相場さえ動けば、商いは必らず増大するものである。

相場が動く要因は、天下大乱時代に幾らでもあろう。

わが業界は10月、11月と出来高増大の時期を迎える。

◇…小豆相場はホクレンの買い戻しを入れて反発した。高値でヘッジしたものを、安いところで買い戻す。

ヘッジはずしは、つないでいた現物が、現物市場でさばけた場合と、現物は、さばけていないが、値頃が安いので一応利食いして、戻せばまた売り直す。

この他、ヘッジに名を借りて、売り思惑した分の利食いという、純粋ヘッジではなく多分に投機色の濃い市場利用の仕方もあろう。

◇…さて、次期ワク削減という問題も、当分ついてまわる。

しかし所詮は、相場が高くなったら売りたい筋ばかりである。

北海道の生産者も、ホクレンも、中国も、台湾も、雑豆輸入商社も高いところを見逃すことはない。

◇…また取引員自社玉ポジションも圧倒的な売りである。

従って、『小豆とは、売られるために戻すもの』と定義しておけばよい。

◇…目先的には、彼岸の入りの新月21日に安値を叩いて、応分の投げも出た。

あとケイ線は陽線が続いて反発を示したが、先限四千六百円以上という値は、ちょっとやそっと抵抗が強い。

さしもの買いの片道切符しか持たなかった投機家も、年がら年中、ヘッジャーのために犠牲になるのは、もう嫌だと言っている。

安いところは売ってもはじまらないが、五千円近いところは売っておけばよい小豆であろう。

ケイ線では、四千円中心の上下八百円圏内での動きを暗示している。が

◇…産地の日足線など見ると、いかにも大出直り型に見えるが線はそうであっても相場は別である。

●編集部註

 NY金は1980年1月に800㌦を突破する。 

この時の相場動向と天体位相の関係を調べてレポート化し、その2年後に『ザ・ゴールドブック』という本を上梓したのが、現在のMMA主宰レイモンド・メリマン氏である。
 
彼の金融アストロロジャーとしての原点は、この時の金相場にあった。

昭和の風林史(昭和五四年九月二八日掲載分)

2017年10月03日

井の中の戻し 欲張っても駄目!

◇…積み上げ努力が奏功、いま少し戻す場面があってもよい。そこは再び判りやすい売り場となる。

◇…九月限は名古屋、関門が渡し物薄から急騰、大阪、東京は平穏に幕を閉じた。

◇…受け手はサヤ取り、商社の決算受け、そして一万九千円台という値ごろに誘われて、実需筋もそこそこ拾ったようである。

農林水産省の豊作予想発表で、人気面でひと区切り(弱気観の浸透)がついた市場である。

どう転んだところで大した展開になりっこないが、〝売りたい上げ賛成〟に、少しぐらい敬意を表してもよい頃合いである。

まずは先の安値からの千円戻し、相場は勢い、弾みがつけば、二千円戻しで二万五千円奪回―とくれば、商いも賑わって結構な話であるが、それは少し欲張り過ぎというもの。

◇…十月は今月以上に荷を呼び込む。サヤ取りの還流玉があり、ホクレンも旧穀を処分してくる。積極的に受けるのは一体誰なのか?。

「あと二、三百円方戻してくれたら」という地点で恐らく相場は戻り一杯しよう。

◇…人気面でひと区切りとはいえ、玉整理は取組高の推移からすると、あまり進展したとは言えない。

期先を基準に見ると、二万四千円台は因果玉が鈴なりにぶら下がっている。この〝やれやれ〟の売りを浴びる地点を、素通りできるほどのエネルギーを備えていない―、緊迫した情勢でもない。年間最大の需要期控えは、同時に最大の出回り期にも当たる。

次期小豆ワクの削減→輸入物の定期ばなれ―今や常識化している。輸入商社のヘッジを恐れる値ごろ水準ではないものの、道産・旧穀の悪目は、中途半端に〝閑散期〟へ入ったため、未だ出し切っていない。

およそ、土台が固まっていない相場に過大な期待やロマンを求めるべきではない。

◇…暫くはぶっ壊すための虚しい積み上げ努力がなされようが、冷やかな第三者の目で眺めておればよい。

判りやすい売り場が訪れよう。

●編集部註
 この時小豆相場は3~4カ月間〝二千円〟の呪いにかかってしまう。

 株価が上がって困るのは信用売りをしている人だけだが、商品相場は上がり過ぎたら消費者が困るし、下がり過ぎても生産者が困る。平準化の名のもとに、値動きは本質的に心電図のような波形を描くのが良いのだろう。

 昭和54年9月も間もなく終わる。この記述のために、この当時の年表を見るのが色々楽しい。

 ハウス食品から「うまかっちゃん」が発売されたのが昭和54年9月。販売価格はわからないが、農水省のHPに行くと、昭和55年の即席めんの小売価格は1袋60円となっている。鉛筆が1本30円、JRの初乗り運賃が10 0円、週刊朝日が200円していた時代だ。

昭和の風林史(昭和五四年九月二七日掲載分)

2017年10月02日

未だ陰極遠し 売らず買わず黙然

◇…業界は陰の極だが小豆相場は、まだ陰の極までとどかない。陰の極とは声を発する者もなし状態。

「大いなるものが過ぎ行く野分かな 虚子」

◇…しばらくは強弱にならない小豆相場のようである。

来月は、九月決算も終るので―と言えば、それは、むなしい期待だと言う。

暑い盛り、高校野球が終ったら―と誰もが期待した。

商取業界の総売買高が四百万枚を越えたのは、去年の三月と六月。今年は二月と六月。

◇…誰かが言った。三ツの取引所の集合立会場予定のビルの工事が着々進行しているのを見ると、関係者は痩せる思いに違いない―と。商いは、大阪化繊も出来ません。大阪三品も出来ません。大阪砂糖もアキません。

三取、貧の底の寄り合い、立ち会い場だから〝三貧取引所〟だよね―などと悪い事を言うが、三人寄れば文珠の知恵。閑を打開する方法を見つけるべく目下努力している。

新しいピカピカのビルに移転すれば、取引所の経費も嵩む。この経費増を負担する取引所会員、なかんずく取引員は、痩せている。

◇…新規は出るのですが、回転しませんので―と言う。

相場が張りついてしまうのが一番怖い。

◇…昔は憲兵と、お巡りと教護連盟と、怖いものばかり多かった。戦後民主主義になって、怖いもんといえば、うちのカアちゃんと税務署ぐらいで、まあつけ加えるなら両主務省だよね。

この両主務省だって、財務面と、お行儀さえよくしていたら怖いことなどない。

ところが、相場様が張りついてしまったら、世の中これが一番怖いという事を今更知ったそうだ。

昔の人は天の神、地の神を怖れ、お供えをしてお祭りしたが、わが商取業界も相場様をお祭りする必要がある。氏子代表は、さしずめ新説邪馬台国の著者・清水正紀氏がよい。

祭主は、天下大乱、物価不安定―と大書した幟を立て、一心に呪文を唱えるがよい。必らず相場様は狂乱するだろう。誰もが言う。年末が思いやられる―と。

この現象は陰の極である。だから、きっと10月11月と出来高はふえるはずだ。事業でも人生でも悲観したらあかん。あすを煩うことなかれ。信は力なり。業界人が信念を持って、祭主の唱える『天下大乱・物価不安定』に和すれば、必らず業界は多忙となろう。

◇…そこで、輸大とは売るものなりと見つけたり―となり、小豆とは売られるために戻すもの―となれば、バッチリ型が決まる。

●編集部註
 東京にあったあるピカピカの取引所は、現在マンションになっている。 

その向かいのビルに入っていた商品会社も既に無くなってしまった。
 
変わらぬ光景は親子丼目当ての行列くらいか。

昭和の風林史(昭和五四年九月二五日掲載分)

2017年09月29日

目先反動戻し 灰汁は抜けたか?

◇…小豆は投げが大分出たから急落の反動で反発する。反発したからと言って大底したかどうか判らん。

「噴煙は遠し萩咲き野菊咲き 左右」

◇…普通なら彼岸底という言葉を聞くのであるが、いっこうにそのような声を聞かない。

◇…二万四千円攻防を言っていた人たちは、二万三千円の攻防―と、水準を千円切り下げている。

攻防というのは攻めたり守ったりを言うのであるが、今の小豆戦線は売り方の攻めはあっても買い方の防はない。だから攻防ではなく攻攻である。

◇…昨今、ベトナム軍がバンコクを侵攻する可能性が強いと言われる。

情報の早い華僑は、タイへの投資をストップしたそうだ。カンボジアは食糧不足が深刻である。カンボジア人がタイ国に四、五十万人以上も流れ込むだろうと観測されている。タイ国は一望千里、まったく平らな国である。だから〝タイラんど〟というのかどうか知らぬが、戦争の経験を重ねてきたベトナム軍とタイ国の軍隊とでは勝負にならぬ。

◇…いや、二万三千円の攻防じゃなく、売り方は、攻め攻めであるという小豆の強弱が、とんでもない方に飛び火したが、ベトナムがタイ国に攻め込めば、ゴムの相場が沸騰するだろうと考えるのが先物市場の投機家思考である。

◇…砂糖だって、相場がありそうだぜ―という。これはベトナムに関係はない。発想を聞けば、なんだとなるが、小豆が安い時は砂糖が上がり、砂糖が安い時は小豆が高いという過去の経験にもよるが、そんな事ではなく、外糖の動きが違う。国際商品高の最後にくるのが砂糖である。為替の関係。ロンドン、NY市場の投機筋の動きなど、今年の暮から来年にかけて砂糖に大相場ありという見方が色濃くなっている。

◇…話はまた飛ぶが、先週(9/22増大号)の東洋経済新報の「建国30年―中国近代化路線のゆくえ」を読んで毛沢東が中国を駄目にしてしまい、鄧小平さんの手で、中国を立直すことは難かしい。いまや中国内部は失業者と食糧不足と、人材不足で、ガタガタになっている事が判る。

このような時に為政者は国民の目を対外に向けさせ戦争という事になるのだが、時事通信社の森永和彦氏が「内外情勢資料国際特報」に、インドシナ情勢のきわめて流動的なことを書いていた。先日、森永氏は名古屋岡地で講演した時も、中越紛争についてのくわしい解説をされたが、世の中刻々と変動している様子が黒板からもうかがえよう。

●編集部註
 結局ベトナムがタイに乗り込んでくることもなかったし、政治闘争を生き抜き、この時3度目の政治的な復活を遂げた鄧小平は「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕るのが良い猫だ」と現在の中国の勃興の土台を築き上げた。 

国際情勢の分析というものは、実に難しい。

昭和の風林史(昭和五四年九月二二日掲載分)

2017年09月28日

大底はいずこ 豊作相場出さねば

◇…豊作の年には豊作相場が出るものだ。去年もあった。今年もある。先限二千円を割るだろう。

「きちきちや草の乾きの音乾き 寥々」

◇…なんだ小豆は豊作じゃないか―と。

予想とは上下十万俵も違う百七万八千俵の発表を見て、愕然とした人が多かった。

◇…おりから月齢は旧暦八月朔日。彼岸の入りである。

八月七日天井したのが旧暦六月十五日満月・立秋の前夜であった。

月々に月見る月は多けれど―の、名月や座頭の妻の泣く夜かなとうたわれた仲秋の満月は来月五日。

◇…小豆相場は、仲秋名月の頃まであかんかもしれないと思わせた。

◇…北海道小豆が豊作のうえに府県産内地小豆も豊作では、心理的にも買い気が萎(な)える。

そのうえ中国小豆、台湾小豆と、輸入小豆の圧迫は火を見るよりも明らかだ。

◇…咋年は、北海道未曽有の豊作。

豊作には豊作相場を出さなければならない。昨年は九月11日に先限二万三百三十円という安値を付けた。

◇…この相場は、仕手崩れでもあったが、仕手崩れは二万二千円どころで一応止まったけれど、二万円めい台まで、なだれ込んだのは、やはり豊作によるものである。

◇…筆者は、今の小豆は先限二万二千円を割る豊作相場必至と見る。

四千円と五千円のあいだで取り組んだ玉の買いの分が投げにはいってくるのが三千円割れからだ。

◇…売り玉は回転が利いている。じっと我慢の子の買い方と、その勢力比は、月とスッポンである。

◇…ヘッジャーは、安いところで利食いする。この行為は、純粋ヘッジャーなら、必らず戻したところでまた売り繋ぐという、次の思惑が見えている。

◇…『弱気が売り叩けば、底がはいる』。そういう見方をする人もいるが、これは、今の場合、間違った判断だ。なぜなら、売り叩くような売り方はいない。新規は勿論(値頃感で)

こんなところは売れん―と二の足を踏んでいる。

◇…市場は弱気一色というが、それは表面的現象観だ。市場の本心は、むしろ次期ワク削減を予測して、下値警戒である。

◇…それだけに、この相場はズカズカ下げる場面を残している。
いうなれば、ヘッジャー時代である。投機家不在である。いや投機家は存在しているが、因果玉を抱いて塗炭の苦しみをなめている。

このような時に買い目はない。

●編集部註
 豊作に売りなし―。

 筆者が駆け出しの頃、この相場格言の意味が解らなかった。

いまも判っていないかも知れない。
 
ただ、ここから数カ月の相場動向を見ると、何となく判った気になる。

昭和の風林史(昭和五四年九月二一日掲載分)

2017年09月27日

ドカ安もある 買い勢力壊滅状態

◇…絶望的である。チンタラチンタラやっておいてドカドカと一本の道に出る秋の下げ相場である。

「南無秋の彼岸の入日赤赤と 寸七翁」

◇…小豆相場は、ますます悪い。

この調子では先限の三千円割れから二千円そこそこまでの下げは、加速度がつきそうだ。

◇…相場が悪いということは、相場経験者なら百も承知の地合である。

だが、下降グラフに?まっている人が多い。

◇…基調の崩れた相場は地獄の底を見るまで止らない。今の小豆がそれである。

◇…下げ相場は、売ってから考えよ―という。基調崩れの相場を、なにがどうだから、ああだ、こうだという屁理屈無用。強弱垂れている間に値は消える。

◇…売り勢力と、買い勢力のバランスが崩れているのだから、強弱観など、ないはずだ。

◇…それは、値頃感無用という場面である。下げ日柄でいうと今月一杯は駄目だ。先限二万二千円を割ったら止まるかというと、それはどうだか判らん。

◇…古品小豆の圧迫。そして新穀のヘッジ。輸入小豆のヘッジ。

とにかく、取引所にヘッジしておこうという環境である。反して、買い方投機家は資力的にも気力的にも消沈してしまった。

◇…ホクレンは、ガリバー的巨大な売り仕手である。

取引員自社玉も、売り仕手的存在である。

中国も売りたい。台湾も古品を売りたい。

◇…一体誰が買うのか。

ほかならぬ、投機家、貴殿である。さしずめ〝汝らの双肩にあり〟というところであるが、汝らは痩せてしまった。松尾芭蕉ではないが「此道や行人なしに秋の暮」である。

◇…そういう相場だからチンタラ、チンタラ下げているかと思うとドカドカときたりする。

なにを言おうと、底が入るまであかんのだ。

土井晩翠の「星落秋風五丈原」。今の人は知らないだろう。丞相(しょうじょう)病(やまい)あつかりき―である。祁山悲秋の風ふけて、陣雲暗し五丈原―と歌ったものだ。零露の文(あや)は繁くして草枯れ、馬は肥ゆれども、蜀(しょく)軍の旗光なく、鼓角の音も今静か、丞相病あつかりき―と。

◇…相場には、投げ当りというのがある。投げたあと相場が更に安い時に言う。

あかんのだから、投げは早いに越したことはない。

つまらないプライドと強情で辛抱しても損を大きくするばかりである。あかん相場は、あかんのである。

●編集部註
 総悲観の時、大概節目をつけるから皮肉である。

 ちなみに今回登場した土井晩翠は『荒城の月』の作詞者として有名だが、ホメロスやバイロンの訳詩を日本で初めて行った人物としても有名である。

昭和の風林史(昭和五四年九月二十日掲載分)

2017年09月26日

陣雲暗(くらし)五丈原 冷風霜の威も凄く

◇…買い方に味方するものがない。今月後半は絶望的な下げ場面。先限二万二千円割れもあろう。

「我宿の淋しさおもへ桐一葉 芭蕉」

◇…商品先物市場、即ち取引所取引きが、どの市場を問わず低調である。

なぜ、このような状況に陥ったのか、最近になって業界人は一様に考えるようになり、その対策を早急に打ち出さなければならない気運になりつつある。

◇…素朴な考え方であるが、業界が停滞している原因は

(1)上場商品の価格変動に投機の魅力がない事。

(2)投機資金が新規20枚というビンの入口を小さく規制され当業者玉に対抗出来ない事。

(3)本来、投機家の味方であるべき専業取引員がたえず投機家のポジションと逆の自社玉を持っている事。

(4)許可更新期で専業大手が、強い行政介入のもとで経営せざるを得ない事。

(5)社会一般が、商品相場の投機に魅力を持たず、不信の念が払拭されていない事。

(6)売買仕法等の改善に対して産業界が流通業界、生産者団体、消費者側等、取引所の姑、小姑の発言力が強く、取引所側の政治性が低下している事。

◇…このように、ピックアップしていけば、業界不振の原因は、まだまだ数えられるが、要するに〔上場商品の問題〕と〔売買仕方の問題〕と〔業界に対する社会的信頼度〕だと思う。

◇…ある取引所の理事長は、『新規上場商品の実現は、まさに絶望的である。であるならば現在の上場商品を、いかに、みずみずしいものにして取引きしていくかが取引所に残された道である』と語った。

◇…取引員会社側は、新卒者の募集。能力の低下している管理者の資質の改善。経営者の気力と信念の確立。そしてビジョンの創設。新規顧客の地道な開拓。受託収支率の向上等、きわめて多次元多角的にそれらの問題と取り組まなければならない時である。

◇…業界は、今日(こんにち)的状態に陥るべくして陥っている。従って、この窮地からの脱出方法も十分わきまえているはずだ。

あとは各人総力を結集して業界再建を実行するだけである。

◇…さて小豆相場だが、痩せた投機家群を支援するものがないから、この相場の下値は深い。いずれ先限で二万二千円あたりを付けると思う。

すくなくとも今月一杯、悪くすると来月中旬まで、買いの目はない。

◇…非常に悲しい事だが、この期に及んでというあたりからの大暴落、即ちS安さえも考えておかなければなるまい。

●編集部註
 三国志好きに五丈原は馴染ある地名。〝死せる孔明、生ける仲達を走らす〟でお馴染、蜀の軍師諸葛良孔明が最期に戦った地である。

この時、彼は兵站に悩まされた。それを踏まえて、この記事を読むと実に味わい深い。