昭和の風林史(昭和五九年三月二三日掲載分)

2020年04月21日

小豆と投機マインド関係

過去の経験則が通用しない事。投機マインドの極端な低減―これが小豆市場の今の姿。

商品相場全般に活力がないという事は狭い面から見た現在の日本経済の構造が、内需に力がないということに、すべて起因しているようだ。

内需が弱いところへ、異常寒気団におおわれて季節商品の需要サイクルがまったく狂ってしまった。

例えば小豆にしても彼岸の売れ行きが非常に悪かった―という事は、内需の弱さ=購買力の低下であり、行楽需要の遅れ=異常気象(春の寒さ続き)が、微妙に需給パターンを狂わせている。

小豆にして然りだから経済全般、国民生活全体からこれを見ると、あらゆるところに、かなりの、ひずみが出てくるわけだ。

焦点を絞って、ではこの小豆相場どうなのか?となれば、昨日書いたような状況下の相場を前提に、(1)供給が絞られているが、(2)需要も低下していて、(3)価格見通しがつきにくい。(4)先物市場は流通市場との乖離が甚しく、(5)細った取り組みの中で一部特定の買い玉の存在が突出し、(6)コップの中の需給事情を、これまたコップの中の内部要因主導により、(7)箱庭の中における先物機能の麻痺という姿になっている。

これは小豆という、そのものの商品の国民生活とのつながりが、この三~五年でどう変化したか(嗜好変化)。生産―流通の大変革(問屋業務の衰退)。IQ商社の価格政策と圧倒的存在のホクレンの価格支配力等が、数年来の相場経験と徹底的に管理された利潤追求のシステムが穀取市場にはめられ、これがため投機家の呼吸する空気が希薄になってしまった。

故に市場価格はあれど、通用せず、品物はあるけれどない。ないけれどあるという相反する現象となって投機余地が極端に細められたのが、今の小豆相場の姿のように思う。

●編集部註
 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。奢れる人も久からず、ただ春の夜の夢のごとし―。
 小豆もまた例外に非ず。そして小豆に限らず、日本の穀物市場はもう、坂口安吾の言説を借りると、もう堕ちる所まで堕ち切らねば上がり目はない。
 最近、岩波現代文庫の「なぜ日本は没落するか」を改めて読み返している。戦後日本で最もノーベル経済学賞に近かった経済学者、森嶋通夫が1999年に書いた本である。
 出版当初、筆者はこの本をボケた老教授のボヤキとしか思っていなかった。彼はこの本を書いた5年後に80歳で亡くなる。
 ただ今読み返すとボケていたのは自分であった。特に第八章の記述には戦慄が。森嶋の予測通りに日本は現在堕ちている。

昭和の風林史(昭和五九年三月二二日掲載分)

2020年04月20日

昔なら小豆に人気集まる

小豆相場の泣きどころは大衆離れである。それは相場構造が難解になりすぎたためだ。

一昔前なら今年のような彼岸の中日過ぎても雪が降るような異常気象は、相場する人にとって直感的に夏の北海道の気象異変を連想したし、春耕遅れ、小豆発芽期の遅霜被害を小豆相場の思惑にむすびつけ、小豆市場は人気を集めたことだろう。

しかし、今の段階ではなぜか小豆相場に無関心の人が多い。

確かに相場は昨年の凶作により、またホクレンが相場を常に意識した価格政策を採用し、農水省当局の輸入政策にしても時々によってパターンを変える方式により大幅な逆ザヤが続いて、要するに相場を取り巻く環境が高度に複雑化し、相場また判りにくい段階に入ったため、大衆投機家が小豆から離れた。

確かに小豆の証拠金の額の問題もあるには違いないが、それ以前の問題として相場が難かしいところに人気離れの要因がある。

もちろん、難かしくない―という人もいるわけだが、取り組みが減少し、商い高も落ち込んだままという現象は、一部特定の人たちだけが小豆相場に取り組んでいるとしか言えない。

来月から北海道市場は九限月になる。新穀限月(10月限から)が立ち、その相場が将来価格の指標性を示すだけに重大な関心が持たれてよい。

また、来月から生まれる限月は30㎏建となり証拠金も低額に抑えられる。

しかも異常気象下の天災期限月が先三本に揃うという好時期を迎える。

願わくば、小豆市場の人気回復に期待を寄せるわけだが、小豆の生産、輸入、流通の構造が、これまでと変わらぬものであれば、相場の難解さ、即ちホクレンと輸入商社主導下の、大衆離れした市場が続くわけで、投機家にとっては近寄れない。そこのところが小豆の泣きどころである。

●編集部註
 先日、ラジオ番組で小一時間かけて「演劇集団キャラメルボックス」という劇団を解説する番組をやっていた。
 現在は活動を休止しているこの人気劇団は、演劇界のすそ野を広げるべく走行中の新幹線の中で上演したり、地方で来られないお客様のために映像化を試みたり、高校生など学生の入場料金を大幅割引したり、高校の演劇部でも上演出来るような戯曲を発表したりした。
 しかし、当時の演劇界は彼らの活躍を「女子供に媚を売っている」と完全無視したという。ただ、恩恵を受けた当時の学生は社会人にり、今回のラジオ番組のように劇団を評価するようになっている。まさに「情けは人の為ならず」である。
 全く関係のない話だが、小豆相場の大衆離れという文言を読んで、ついこの事を思い出した。

昭和の風林史(昭和五九年三月二一日掲載分)

2020年04月15日

円の安値をどこに見るか

為替は過去3年の傾向では三月、四月円安という季節変動期に入るわけだが…。

円安分を輸入関連商品は買われた。

円相場は三月7日二二〇円まで急騰したが、その週の週間棒はペナント(三角旗)放れ。しかも空間窓あき。

そして上影、下影に長い髭(ひげ)がある陽線。

さあ、この線を、どう読む?と謎を投げかけた。

先週は上影の長い短陰線で、その前の週の陽線実体の中に孕んだ。

これまた難かしい線。

アメリカは再び高金利傾向。コモディティにきかかっていた資金が逆流する可能性(高金利→ドル高→コモディティ放れ→シカゴ大豆押し目/円安→穀取輸大気迷い)を一応は考えるところ。

月曜は名古屋も雪。大阪も雪。お彼岸に入って梅も咲けず、宙空に舞いかけていた雲雀も姿を消している。

妙なお天気と感じて本来なら小豆(夏の異常気象)や乾繭(遅霜による桑害)など連想するところであるが、全般に商品市場は思惑熱がまだ盛り上がっていない。

ひとり東京銀の取り組みのみ増大する傾向。

『どうすればよいのか?』『飯が食えん』『なぜこんな漠(ばく)とした状況なのか?』『なぜだろう』と取引員経営者も第一線営業部員も、歩合セールスも首をかしげている。

輸入大豆にしても難かしい動きである。

シカゴは七㌦90を戻り頭にして40~50㌣ほど押してもよいところにある。

しかし円安が為替の罫線空間窓を埋める二二九円ないし二三三円あたりまで尾を引くならば、シカゴ安くても穀取輸大は『さあどう考えますか?』と疑問符を投げかけよう。

東京銀にしてもNYコメックス安/円安のバランスをどうとるか。74円20銭以下は東京銀先限買い場と見てもよいと思うが。

●編集部註
 この当時はどうやら季節外れの雪であったらしいが、令和の年度末は満開の桜の中で雪が積もった。加えて市中は新型コロナウィルスの蔓延で人心は疑心暗鬼になっている。さもありなんとしか言いようがない。
 ある意味、ウィルスは平等である。右も左も、上も下も、民族や国籍もお構いなしだ。こういう時のネポティズムやファシズムは、最後の最後で裏目に出ると〝相場〟が決まっている―と、世界史は教えてくれる。
 最近「世界はカミュっぽいのに、日本だけカフカみたいになってる」というツイッターの呟きに唸った。当節、何処かで自分がヨーゼフ・Kやグレゴール・ザムザになるかも知れないという不安感が充満している。

昭和の風林史(昭和五九年三月十九日掲載分)

2020年04月14日

輸大飛びつかず押し目を

輸入大豆市場は、なにかを察知しているような足取りである。押し目買いがよい。

シカゴ大豆は14新値で一㌦強を実に綺麗な姿で上げたあと押し目を入れた。新値は13ないし14本目あたり呼吸する。

シカゴの一㌦強の上げ道中は五本目、五本目で押し目をつくるリズムだった。

相場基調は上値待望ムードであるが、再び高金利予想の暗雲もあり、商品に還流しかかっていた投機資金の流れが相場の方向を決めることになる。

また昨年九月の天井から肩下がりの超大局トレンドからは離脱した相場であるが一本足のV底では大きな相場はつくれない。

一㌦上げの半値押し七㌦50あたりを探りにきてもおかしくないところ。

穀取輸大は円安分をどのあたりまで買うか。

大衆筋は期近に高値掴み玉が残っており、下げ相場の苦しみが嫌というほど身にしみているから、先のほうはどうしても安値おぼえで売りたい気分のようだ。

線型としてはWボトム(底)をつくり期近の四千円(大穀)は三月限一代の下げ幅千六百四十円の下げ道中で、ほとんど玉整理が終わっている。

また先二本にしても四千三百円には抵抗ができていて、本年の作付け動向やアメリカ中西部の天候によるドラマの展開を待つところ。

東京銀は81円90銭からの六円90銭下げで大衆筋は高値?み・安値売り建という両建型になった。

貴金属相場にまだなれていないから、既存商品の経験で、すぐ両建に走る人も多いが、銀の今の水準は資金配分による買い難平で、買い値水準を、より低くする方法が判りやすいところだ。

74円20銭以下には大きな買い物が待機している。

●編集部註
 筆者が外務員だった頃に「高値掴み・安値売り建という両建型」は〝股裂きの両建て〟と呼ばれていた。外すに外せず、外そうと試みるも、残玉と預かりが減る事を嫌う上司に妨害され、気付けば担当を外され、そうこうしている内に顧客の心が折れて全落ちし、そこから紛議に進むという黄金コースを経験した下っ端外務員は少なからずいたのではないだろうか。 筆者もその内の一人である。故に今回の記述は後悔と恨み節が混ざる。
 ダメなら決済、そこからリベンジマッチという流れが本来の最適解だ。
 経験則上、変な夢を持たせて両建て〝させる〟と大抵ロクな事がない。顧客の玉と預り金があたかも自社のものである、と勘違いしている管理者が多かった事が、近年の国内商品会社衰退の要因の一つと筆者は考える。

昭和の風林史(昭和五九年三月十七日掲載分)

2020年04月13日

薄紙はがす如く輸大回復

大豆は薄紙はがすように用心深く出直る姿。一気の上昇は無理だが、押さば買え。

東京銀は下げても、上げても商い弾む。取り組みも千枚、千枚と日毎厚くなる。

相場が下がっているのに取り組みが増加する時は、引き続き下げが進む勢いがある―と見るべきだ。というのがアメリカ式チャートの見方である。

その式でいけば、東京銀は生れ値66円50銭→高値81円90銭の上げ幅に対して半値押し地点74円20銭から以下の三分の二押し地点71円60銭あたりまでの圏内があるかもしれない。

しかし、銀相場に取り組むための第一条=証拠金にゆとりを持って、資金配分せよ。第二条=相場に入る(仕掛ける)値段を決め、相場から離れる(利食い、または損切り)値段を設定し厳守せよ。第三条=大局方針を決めよ。

などの点からいえば、金銀比較倍率から見ても1対40ラインは銀の売られすぎだし、100円目標という大局銀のもと、凧の糸と相場の資金は出しきりにするな―で、74円、あるいは73円台は難平買い増し地点になるだろう。

市場別の取り組みの厚さからいえば一位東穀中国産大豆。二位東京粗糖。三位大穀輸大。四位東京銀の順である。

お金儲けは人の集まるところにあり。相場も人気の集まるものを狙えという。

大豆はシカゴ八㌦指呼の間まで勝利のV字型サインで安値から二㌦を戻した。これがこの勢いで上昇することはなかろうが東穀米産大豆の85年二月限四千円割れは、いかにも安い。

また各穀取とも今の長期限月水準は円高分を売られたものの、シカゴの出直り幅に比較して随分遅れをとった感じがする。

中国大豆入船順調を気にしながらも、綺麗なWボトムは大豆のシーズン接近中を物語るものである。押さば買えという表情だった。
●編集部註
 当時、穀物相場に資金が集まっていた要因の一つに、穀物も含めた世界の食糧事情に世間の耳目が集まっていたという点が挙げられる。
 70年代のオイルショックは廻り回ってアフリカの政治的混乱とそれに関連する飢饉をもたらした。そしてこの年の3月、エチオピアでの惨状が世界中に報道される。
 ミュージシャンのボブ・ゲルドフは、英国でこの報道を英国で見ていた。何とか出来ないものかと仲間内と相談。英国とアイルランドのロック及びポップススター達でバンド・エイドを結成。12月にチャリティ曲「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス」を発表する。
 この動きはその後米国に飛び火し、85年にUSA・フォー・アフリカが結成される運びとなる。

昭和の風林史(昭和五九年三月十六日掲載分)

2020年04月10日

穀取大豆綺麗なWボトム

大豆のシーズンがやてくる。穀取相場は綺麗なWボトム(底)を形成している。

シカゴ大豆は八㌦挑戦前の足踏みである。

トレンドは明らかに上昇気流にある。シカゴ相場界では、トレンドと喧嘩するなかれ―という。

素直にトレンドに従えばよいわけだ。

本日発売の『商品先物市場』(月刊四月号)に住友商事の熊谷伸成氏が、『シカゴ大豆相場の徹底分析』で“大豆は六㌦から八㌦以上は高いし、六㌦以下は安い”―と。

穀取相場は東穀の二ツ(米国産と中国産)の市場の様子(場癖やサヤ関係など)を眺め、まだなんとなく馴染みにくいようだ。

ただ、東穀の米産大豆市場は、オール限月安値取り組みであることを忘れてはいけない。

これは市場が開設された時点によるもので、来年二月限など生まれてから三百円も下げている。反して期近の四月限は生まれ値から百六十円を上げた。

古品買いの新穀(今年播種)売りというパターンが常識的になっている。

前記、住友商事の熊谷氏は「作付けシーズンが近づくと新穀に関する材料によって相場は動くが、旧穀限月も、別の動きをするわけでなく、新旧区別なく連動して動く。旧穀の需給はキャッシュプレミアムという形で定期とは違う現物値で調整される」―と。

当面の関心はコーンの作付け状況と大豆の作付け面積予想である。天候が悪くてコーンの作付けが遅れるようだと、大豆のほうにしわ寄せされ、大豆の作付け面積がふえたりする。

シカゴ罫線は、このあたりで30㌣ぐらいの押し目が入ると、息の長い相場に成長していく。

穀取相場は綺麗なWボトムである。円高で下げた分を取り戻し、春の大底を形成した。期近限月の高値買い辛抱玉も残っているが、先のほうは軽い足どり。

●編集部註
 結論から先に言うと、この時のシカゴ大豆市場は1984年内の上昇トレンドにおける中段の保合い場面にある。
 週足で見ると、2段上げの1段目と2段目の上昇波動をつなぐ鯨幕相場である。従って〝トレンドと喧嘩するなかれ〟〝素直にトレンドに従えばよい〟という指摘は至極真っ当であったといえる。
 あとは「堪え性」の問題であろう。得てして相場は意地悪なもので、4月第二週の陰線はそれまで下げ幅よりも大きく、買い方に疑念を持たせるに余りある下げだった。
 ここで「八㌦以上は高い」という見方が売り屋に勇気を与える。しかしそこから相場は九㌦にあと一手のところで反落。そこから相場は「六㌦以下は安い」という場面まで下落していく。より大きく見ると、2段下げの2段目であった。

昭和の風林史(昭和五九年三月十五日掲載分)

2020年04月09日

春まだ浅き冷え込み時代

部分、部分の線香花火的相場展開で永続性がない。燃焼するエネルギー不足の段階。

相場は離れてみよという。

のべつまくなしダラダラ相場を張っていたのでは大成しないというのも、売るべし、買うべし、休むべしの、休むことができないからであろう。

ミクロにとらわれるとマクロが見えない。マクロにとらわれるとミクロで小水がかかる。

相場は欲張ると見えなくなる。不安が出てくると錯覚におちいる。我(が)を張ると真実の流れを見失う。

知識、常識、習慣、信念を盲信すると引き返す地点を失う。情報過多が観察力を低下さす。それは部分に惑わされるからだ。

判っていて判らぬところが古今相場の難かしさであり「難儀道」である。

人間、排泄(はいせつ)するものを調べれば、その人のすべてが判るという。

相場も排泄したものを分析すれば、だいたいが掴めるだろう。

人間の場合の排泄物は、排便、ゴミの捨て方、タバコの吹いがら、会社の退めかた、異性とのわかれ方、親子のわかれ方、友人、遊び、借金の後始末。ほかにもまだあるが、そういうものを調べれば興信所などに依頼する必要はない。

では相場の排泄物とはなにか。出来高、受け渡し高、建玉、取り組み、罫線、手口、ポジション・トーク、材料等、みな相場の排泄物である。
そして利食い金、損失金もいってみれば相場の排泄物にほかならない。

商品相場全般、逆ザヤ銘柄は安値売り込み。順ザヤ銘柄は高値買いつき。

玉が回転しにくいのと、新しい血が入ってこないから、排泄するものも少ないかわり、食欲もない。
循環の法則からいえば春まだ浅きところで待つは仁(じん)。ひたすら待つは忍耐でもある。相場の流れを見ているのも相場の内。

●編集部註
 〝相場は離れてみよ〟という格言だが、興味深い事に同じような事が色々な分野で言われている。
 「風姿花伝」や「花鏡」の著作で後世の人々に知られる事になる室町時代の申楽師、世阿弥は〝離見の見(りけんのけん)〟を説いた。名人は、俯瞰して自分が躍る姿を、我が身から離れて見る極地に至るという。
 ところ変わって古代中国では孫子が戦いの中で活路を見出す術としてこの〝離見の見〟に近い事を書き残している。
 風林火山はこの〝離見の見〟で排泄物に注目した。事実、自身の相場に関する本では「棄て方で人間がわかる」という一説を解説している。
 イオニアの哲学者ヘラクレイトスは万物は流転するものと喝破した。それに近いものがある。

昭和の風林史(昭和五九年三月十四日掲載分)

2020年04月08日

お金の流れは銀に向かう

お金の流れを常に注目して、先々と先取りしてポジションを考えなければならない。

全般に掴みどころがないという感じの市況だ。

東京銀の取り組みが四万枚を越し、商品市場のお金の流れが銀に移行している。

二月中の出来高は、輸入大豆の167万枚は断突で六取引所合計としては当然であるが、次いでゴム43万枚。砂糖41万枚、乾繭40万枚と、この三商品が40万枚台。かつての花形商品の小豆が五番目で24万枚。それに次ぐのが貴金属(金銀等)23万枚である。

いずれ東京金取引所一ヵ所の出来高が、全国六ツの小豆出来高合計を上回るであろうし、貴金属相場が激しく動くごとに銀の取り組みも厚くなろう。

取引員の出来高上位50社の内訳を見ると、穀物で一ヵ月二万五千枚以上の商いを確保し、砂糖、乾繭、ゴムの、いずれかの商品で一万枚ないし二万枚を維持する。

そして銀のほうに営業の主力を徐々に移す流れが、はっきり出ている。

取引員の月間出来高で、一万枚から二万枚までが、およそ30社の混戦区境だが、二万から三万。三万から四万と上位に上がってくると10社、10社単位の激戦区になり、四万から五万枚、五万枚から六万枚となれば5社ないし7社と絞られてくる。

ベスト・テン入りは、やはり月間九万枚を維持していかなければならず、七万から八万のあたりは確かに胸つき八丁である。

これを見ていると、月間一万枚台から倍の二万枚台に乗せることが、いかに大変であるかがわかるが、二万枚から倍の四万枚になるよりも、三万枚から倍の六万枚にタッチするほうがよほど楽なようだ。

営業の方法、会社の体質、看板の数などの要因が大きいわけで陽の当たる商品に営業力を集中するところが上位陣を占めている。

●編集部註
 東京商品取引所のWEBサイトでは過去の取引データを見る事が出来る。
 令和二年二月の出来高は、金が86万9千枚、銀が1445枚、白金が26 万2千枚、パラジウムが6272枚。なお、これらは標準取引での枚数で、ミニ取引や無限月取引等は含まれていない。
 原油(ドバイ)は29万 1千枚、ゴム(RSS3)は8万7千枚、コーンは3931枚、小豆は2枚、そして大豆は0枚である。
 投機は、その名の通り機会に資金を投じるものである。海外市場を見て勝機を感じても、1カ月で1万枚以下の商いしかない市場に一体何の妙味があるのか。玄人から見れば何も知らない素人さんなど鴨がネギ背負ってやって来るようなものであろう。ましてや商いが0枚、2枚などしかないなど言語道断である。

昭和の風林史(昭和五九年三月十三日掲載分)

2020年04月07日

東京銀相場好買い場露呈

シカゴ大豆もNYコメックス銀も大底確認したあと、底値圏脱出のトレンドに乗った。

為替が落ち着いて、シカゴ大豆が順調回復なら、ダイレクトに東穀米産大豆相場が連動して判りやすい。

米産大豆(東穀)は発会した時の当先サヤは40円(逆ザヤ)だったが四月限は買われ、来年二月限は売られ一時は三九〇円の(逆ザヤ)に開いた。一般に、不作の83年産(10月限まで)は買い方針だが、今年生産される84年産(12、2月限)は売っておくポジション。

大衆筋は値が安く、しかも先のほうの長期限月を買うが、本当はその反対である―というのである。

しかし、不作だった83年産は確かに値を出すだろうが、今年五月第一週から播種する84年産も、割りを出すことにかわりない。

来月中旬ともなればコーンの播種期(大豆より一ヵ月早い)に入る。

そして大豆の作付け面積の予想が具体化するとともに今年の夏の天候について予測が立てられる。

目下のところ米国中西部の八月~十月は低温多雨の不順予想。昨年のような旱ばつはないという見通しであるが、これだけはその時にならないと判らない。

シカゴ相場は八㌦指呼の間に買われた。七㌦80あたり一ツの難所で、このあたりから押し目を入れる場所になると見ているのだが八㌦に乗せてから押すのかもしれない。

東京銀は高値81円90から7円80銭のきつい押し目を入れたあと、すぐに押した分の半値を買い切る勢いだった。
このように相場が生きている(若い)時は、仮りにこの辺で2円押しても3円押しても、押すことにより弾みがついて上昇トレンドの中を歩み続けるものだ。

NYコメックス銀の線型は連続陽線の週間棒で大底脱出中である。
大底した相場は天井するまで買いでよいのだ。

●編集部註
 その天井が判らないから迷うのではないか―。と言ってしまえば、身も蓋もない話になる。
 ただ経験則上言えるのは「自分はあの相場の天井をとった」と人前で吹聴するような人物がいたら、その人とは関わらない方が良いという事だけである。そおいう人は、恐らく嘘をついている。
 嘘でなかった場合、この手の人物は何処かで必ず相場で失敗する。将来くすぶるであろう人物と付き合うと、いつかどこかでそのくすぶりが我が身に降りかかる。
 世阿弥は風姿花伝の中で「秘すれば花」と書いた。能であれ、相場であれ、吹聴するような人物は「離見の見」が出来ていない証左である。

昭和の風林史(昭和五九年三月十二日掲載分)

2020年04月06日

銀相場にロマンを求めて

判りにくい相場は横に置いといて、やはり流れは銀に集中している。銀の夢は大きい。

東京銀先限は高値から七円80銭を棒下げしたが、金銀比較(二月限)40・39と銀の割安が目立ち、下げ幅の半値をすぐに切り返す買われようだ。

銀の取り組みは四万枚に迫り、値の動きが大きい時には出来高も一万枚を越す活況。

八日の出来高は市場別に見て銀が一万九百72枚。東京ゴム九千七百86枚。東穀中国大豆七千三百53枚と、この日は銀がずば抜けた。

銀は78年~80年のハント兄弟による挑戦までは、およそ100年のあいだ金銀比較は32対1の比率で維持している。いま金をグラム当たり三千円としてその比率まで銀を買うとすれば93円75銭になる。

ハント買い占めの時は17対1まで銀価格を吊り上げたが、ハントは古代中世における13対1までは銀が値打ちを出すはずだというロマンに賭けた基準を持っていたらしい。

ロマンに賭けたハントのシルバー・ウォーは無残に破れたが、それでも1対17まで金に接近した。

貴金属相場は、5㌦の銀が10倍の50㌦にもなる可能性を秘めている。

確かにNY砂糖にしても2㌣(68年・ポンド当り現物)の相場が74年に65㌣50まで大化けしたし、78年5㌣96が80年44㌣80まで狂騰している。

しかし、3㌦のシカゴ大豆が10倍になった歴史はない。もしそのようなことがあるとすれば人類の危機である。

貴金属相場は、それがどれだけ暴騰しても(資産価値としての)代替品がないし、食糧のような人類生存の影響もないだけに、相場は、あばれほうだいという夢がある。

●編集部註
 人は二度死ぬという。一度目は肉体の死。二度目は人物名の死。つまり、その人物の存在を現世の人々が誰もが知らない状態なった時に訪れる。
 トイ・ストーリー等で知られるピクサーが制作した映画「リメンバー・ミー」は、メキシコを舞台に、ラテンアメリカ諸国で祝日になっている「死者の日」を題材にした、二度目の死にまつわる異色のディズニー・アニメであった。死がテーマであったにもかかわらず、世界中で大ヒットする。
 そこへ行くと、ここで登場するハント兄弟は恐らく当面、二度目の死を迎える事はないだろう。まさに、〝悪名は無名に勝る〟の典型例といっても過言ではない人物である。
 銀といえばハント、ハントといえば銀という具合に、商品先物の世界でこれだけ世界中にその名が通った人物も珍しい。
 映画「大逆転」で敵役のモデルにされ、ウィキペディアにもその名が。読んでみると、国際金融のハイテク化を促進させるきっかけとなった人物とも記されている。