昭和の風林史(昭和五四年九月十九日掲載分)

2017年09月25日

痩せた投機家 資力、気力ともない

◇…穀取市場を一言で表現すれば「天高けれども投機家痩せた秋」である。ゆくゆくは大安小豆だ。

「はたはたも短かくとびて野路親し 風生」

◇…小豆相場に対して、商社筋は上げ賛成である。

この場合の上げ賛成とは定期を買っているから相場が上がって欲しい、というわけではない。

相場が上がったら売りヘッジをかけたいという上げ賛成である。

◇…従って、売られるために買う馬鹿はいない。

狙撃兵が狙いを定めているのに塹壕から顔を出すようなものだ。

◇…それでも相場が高かったら。

この場合、蜂の巣みたいに穴だらけだと思う。

◇…需要最盛期で輸入小豆が売れているあいだは、目立ったヘッジもなかろうというものだが、先行きの見通しによっては、高いところはヘッジしておいて、品物が売れた分からはずしていくのがビジネスだ。

◇…上海における小豆の商談にしても、国内相場がいまひとつの値段だから商社筋も成約に積極性がなかった。

◇…国内定期相場を、買い好きな投機家が気張って買い上げたとすれば、成約量は増大し、すかさずヘッジされるだろう。

◇…投機家は、ヘッジャーのために好んで犠牲になる必要はない。

◇…これからの小豆市場は、ガリバーのような巨大な売り仕手ホクレンと、中国の供給。それに台湾の小豆生産者。このような少しでも高いところを売ろうとする供給者側に対して、微力な投機家が穀取という土俵で相撲を取る格好だ。
しかも取引員の自社玉も企業自衛のため、たえず売り姿勢である。

◇…蟷螂(とうろう・かまきり)の斧という言葉がある。弱いものが強いものに対抗していくさまである。

◇…筆者は、この小豆相場下値に深いものありと思っている。

戻れば売られるのである。戻らなくても売られる時がくるだろう。

大底が入っていない事。上値には因果玉がいっぱい残っている事。

中国も日本も収穫の秋である。供給力は充分。そのうえ台湾小豆が作付けを控えている。

外貨ワクが削減されるだろうという望みはあるが、需給構造面からくる相場の基調を、変えるだけの力はないし、市場構造面(投機家の零細化)からくる市況低迷沈滞化は恐らく避けるわけにいかないと思う。

要するに、穀取市場は天高けれども投機家痩せた秋なのだ。

●編集部註
相場と関係ないが、この日の甲子園球場、阪神広島戦で、当時広島にいた江夏豊がリリーフ登板し、プロ通算600試合登板記録を作る。

この年のペナントレースは広島が優勝し、日本シリーズでは近鉄と対戦する。

日本一をかけた最後の死闘は、後に山際淳司が書いた「江夏の21球」で後世に残される。

昭和の風林史(昭和五四年九月十八日掲載分)

2017年09月22日

下値深そうだ 投げが投げ呼ばん

◇…この小豆相場は下値が深いと思う。下げのキッカケがつくと投げが投げを呼ぶだろう。

「塗下駄の湿りや萩の露曇り 紅葉」

◇…毎日の事であるが、原稿を書く時に、なんの抵抗もなくすらすらと書ける時と、書き出す時から煙草を何本も吸ったり、コーヒーを飲んだり、シャープペンシルの芯をかえたり、あちらこちらと電話を入れてみたり、なんとも原稿の纏りがつかない時がある。

そういう時は、相場が動いていない。閑散低調。これといった材料もない。

正直言って今の小豆相場は強弱しにくい。

◇…戻れば売られる相場が、戻らなければどうなるか。時間過ぎざれば、戻らなくても売られよう。

◇…上値にはホクレンの新穀ヘッジと、上海における中国小豆の契約如何によっては、雑豆輸入商社のヘッジも出よう。

一方、取組み内部要因は高値圏の買い玉が因果になっている。

この引かされ玉は、戻れば勿論だが、戻らなくても時間切れで投げざるを得ないのである。

◇…また、取引員の自社玉は七千六百九十一枚売りの二千八百六十三枚買い(大阪)という大上長である。

東京市場も八千二百四十枚売りの三千三百九十枚買いと上長である。

◇…売っておけばサヤすべりで期近になると安い。

◇…秋の彼岸を控え、需要最盛期というものの、売れて当然、売れなければ大変である。

◇…ともかく、中国小豆の上海での商談と、来月の秋季交易会。そのあとの台湾小豆の作付けに絡んで、ともかく北海道小豆が、なんの〝違作〟もなしで百万俵近い収穫なれば、これはもう供給面から高値を付けるという可能性が消える。

◇…市場人気は確かに弱いと言えるが、弱い人気であっても、二万四千円(先限)以下は値頃感で新規売れないという空気だ。

◇…市場が、おだやかな時なら二万四千円以下の下値は深いとは、思わないのである。だが、ひとたび値崩れにはいると、一種のパニックであるから、売りが売りを呼び、投げが投げを呼ぶ。

まさかと思う値が付くのは、そういう時である。

◇…相場は非情である。非常といってもよい。因果玉を辛抱しているあいだはよく知っていて、少しも好転しない。

昔の人はこの間の事情を「煎れたらしまい。投げたらしまい」と言った。投げ尽すまでは、相場に底がはいらない。悲しい事だがこの小豆下値が深いと思う。

●編集部註
利が乗った玉はすぐ手放すのに、因果玉はなかなか手放さない不思議。

我慢して勝利する経験など数えるほどもないのについ我慢する不思議。

諦めて手放した途端その方向に向かう不思議。機敏に動けず、動かぬと相場が動く不思議。

相場は不思議だらけだ。

昭和の風林史(昭和五四年九月十三日掲載分)

2017年09月21日

市場下げ賛成

〝機〟到来を待つ!

◇…市場は北京商談を警戒、産地からの売り声に怯えている。素直に下げればまた妙味が…。

「だらだらとだらだらまつり秋淋し 万太郎」

◇…東京港区の芝大神宮の例祭は九月11日から21日まで行なわれ、境内に生姜を売る市が立つので〝生姜市〟ともいう。また、お祭りが十日間も続くので、だらだら祭と言う。

相場する人は、このお祭りだけは寄りつかぬほうがよい。この境内で売る生姜を〝めっかち生姜〟とか〝目くされ生姜〟などと言った。目を病む参詣人が多いことからそう呼ばれたらしい。

相場を売っている人なら、だらだら祭り結構じゃないか。目くされ生姜面白い。私ゃ相場が見えてません。

そう思う人は、お賽銭をはずんでくればよい。

◇…第三土曜の15日が敬老の日。この日だけは老人を一応いたわるという変な日である。取って、つけたような敬老精神など、老人にとっては有り難くない。本来このようなものがあるというのがおかしい。普段老人を大切にしていない証拠である。

◇…近頃駅のホームや階段に盲人用の、あれはステッキでさわっていけば安全という凹凸した黄色のラインが引かれたり、四ツ辻の信号に盲人用の音で区別出来るシグナルが設置されているが、あれにしても中途半端で変な具合だ。見せかけの親切とでも言おうか、敬老の日のように、取ってつけたように思えて仕様がない。ないよりはましだというところであろう。

◇…ところで相場のほうだが市中現物の軟化からだらだらと垂れ込んできた。産地では畑の早生系小豆はすっかり色づいて乾燥、収穫作業もこれから本格化する。農家にすれば新穀の作柄に不安を抱いているうちは、ヒネも大事に扱うがここまでくるとそうも言っておれずつなぎも増えてくる。

◇…他方、北京での中国小豆商談も神経質な市場である。下期のワクも決まらず、中国側の意向を打診する程度―とはいえ、ある程度の成約は最初から判っていることで改まって騒ぐこともないものの、ザラ場での気配、あるいは新穀の売り声(九月末~十月初め着レールで二万五、五〇〇円)に怯えている風である。

◇…果して弱気の指摘するように下げの中段もみ下放れコースか、それとももみ合いの域か微妙な人気、居所ながら、弱い材料ばかりは続かないもの。

実需筋は安い道産ヒネに食指を動かし始めてきた。次期ワク削減も多分にあり得る話である。

●編集部註
先月まで東京外苑前で「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」という、暗闇で歩いたり食べたり触ったりするワークショップが行われていた。

全く見えないと、それ以外の感覚が鋭敏になるのだという。凹凸や特別な音も非常に有用なのだとか。

昭和の風林史(昭和五四年九月十二日掲載分)

2017年09月20日

売らず買わず

休むも相場という

◇…ぜひ売ったり、買ったりしなければならないわけのものでもない。判らぬ時は休むも相場。

「壁に日々筑波の晴や懸煙草 駒村」

◇…強気でもなし、弱気でもなし、安いところは買う、高ければ売る。そういった感じの小豆相場になっている。

◇…押してくると、五千五百円は無理だな―という。

強張ると、あるいは六千円抜けも―となる。

定見がない証拠である。

◇…買って五百丁、売って七百丁。そこから手数料を引くと、気を揉んだ割りに利幅は少ない。

◇…従って、仕掛けに積極性がない。

◇…商品相場の投機は意外性があればこそ人気も集まる。

今の小豆の場合、意外性は少ない。

二万六千円近くはホクレンや雑豆輸入商社がヘッジしてくる。

従ってそれ以上の値段は余程なにかの意外性がないことには付かない。

六千円は、誰でも売ろうという場合、その二、三百円手前で相場は止まるものである。

これが、六千円を付けるようなら、その相場は六千円で止まらず、もっと上にいく。

◇…下から陽線三本で、かち上げて、上から陰線一本食い込んでの利食い線。これを小さく切り返したが、ガツンと長陰線で叩き込まれた。

となると、これが押し目か、戻り一杯か?となる。

◇…当初千円ぐらいの戻りはあってもおかしくないという市場人気だった。

這えば立て、立てば歩めの親心というが、千円戻せば千五百円。千五百円高なら二千丁となるのが相場する人の欲心である。

◇…秋も、ようやくたけなわ。例年だと彼岸過ぎる頃まで残暑が厳しい。

彼岸のお中日にお墓参りに行って、法師蝉を聞くのであるが、今年は法師蝉の鳴き止むのも心なしか早いようだ。

寒さに向かうのが例年より早ければ、小豆の需要もそれだけ増大しそうなものだと思うが、加糖アンという伏兵に用心しなければなるまい。

◇…売り場を待つ間に売り場を失したかもしれないが、まあ気長に見ておれば判りやすいところも出てこよう。

◇…商品の先物相場というものは、これが投機の場合、物があって売るわけでないし、ぜひ売らねばならぬというわけでもない。逆に買わなければ困るというものでもない。値が気にいらねば、売らず、買わずでもよいのである。

●編集部註

インベーダーゲームが大流行したのはこの年で、今思えばコンピューターのような「精密電子機器」が市井に広まる転換点であった。

良くも悪くも、技術の発達とともに相場が迅速になり、鷹揚に動き難くなったと言える。

昭和の風林史(昭和五四年九月十一日掲載分)

2017年09月19日

大局は売りで 上値注意下値警戒

◇…五千五百円を買うようなら六千円抜けに走るのが相場だ。そのあたりは誰でも今は売りたい。

「今宵又人待心ちちろ虫  はん」

◇…立春から数えて、きょうは二百二十日目。大きな災害をもたらした台風は、二百二十日過ぎに襲来している。
明12日は新幹線が午前中運休する。線路等の定期補修工事の日である。

◇…小豆相場のほうは、東西両市場の取組みが目立って増勢を示している。

取組みが漸増しながら値段が締っていく場舎、うかつに売るのは危険である。

◇…取引員自社玉のポジションは、先限のみ買いになっている。要するに、大衆筋は、先限の安いところを叩いた格好。

◇…早々と強気に回った人と、売り場待ちの人と、高値を?んで、戻すのを期待している人と、投機家の表情は、さまざまである。

◇…一般的には、売り場待ち。戻り一杯の兆候を見つけようとしている。

二万六千円台があるかもしれないが、あったら売ってみようという、待ちの姿勢である。

◇…時期が時期だけに、降霜予報でも出れば、後場から急伸ということもあるだろう。

◇…線型は、目先買いのシグナルが出ている。

下げ幅の三分の一戻しを買い切って、半値戻しを達成しそうな地合だった。

◇…戻り売りでいいでしょう―と言う。

売り信念が貫ける人なら戻り売りでよい。

五千五百円の予定が、二万六千円を抜いて、なお強く見えるあたりで、迷いが出ると両建パッチになったりするもので、当初の信念グラグラになりやすい。

◇…目先上手しても、いけるかなと言う。上手とは気味(あじ)について買ってみようという事。

取引員会社のカウンターに張りついて、毎節相場と一緒の人なら、取りにいけるはずである。ただし、会員とは違って、手数料幅のハンディを考えておかなければならない。

◇…二万六千円を買う相場(買い切るだけの力がある相場)なら、七千円は、いくだろう。第一、煎れが出るし、その時の市場人気は様変わりしていようから、今の市場人気で判断してはならない。

◇…満を持して売るのなら、そういうところである。

◇…目下のところは、売るのは、たとえ売り上がり方針であっても、少し早いみたいだ。千丁、二千丁引かされるのは相場の常と割り切る人なら話は別だが。ともあれ二万六千円ありと見ての投機作戦だ。

●編集部註
寄り付きから大引けまで、店頭に張り付いて、毎節ごと注文を繰り返すお客様は確かにいた。

今はどうなのだろうか。

あの頃と比べると相場情報を入手する環境が違い過ぎる。店頭に張り付く人は減ったが、端末に張り付く人は増えたと思う。

昭和の風林史(昭和五四年九月十日掲載分)

2017年09月15日

線型買い示す だが大勢はまた別

◇…小豆の線型は買いになっている。短期的には買いでも面白いが、大勢となればまた別だ。

「中腰の唐黍焼に昔あり 桂郎」

◇…小豆相場に対しての人気は弱い。しかし相場は強くなっている。線型も買いを示している。

この強いのは、静岡筋などの筋ものが先限を強気しているからだと受け取っている。

◇…目下のところ短期勝負なら相場の意外性を期待出来る市場環境とも言える。

◇…それは(1)秋の需要期で値の安い(北海道産に比較して)輸入小豆の売れ行きがよい事。

(2)輸入物の端境期で、商社の売り物も出ない。

(3)相場内部要因としては人気が弱くなり、先限など安値を売り込んだ(自社玉は買いになった)。

(4)ケイ線が買いを示し、また東西の取組みが漸増傾向である。

(5)鳴りをひそめていた静岡筋が強気姿勢になった。

◇…だいたいそのようなところである。

◇…相場地合や人気動向からいえば、次のような現象に気くばりしなければなるまい。
(1)戻り売り人気が強いのに相場地合が締っていく。

(2)取組みが漸増する。

(3)産地の刈り入れ進行(早生種は、すでに収穫が始まっている。例年より10日ほど早い。これは早生種のウエイトが六割を占める帯広地区だけに、早霜がくるのが早いか、収穫が早いかの競争になる)。

(4)中国小豆の北京商談の推移、台湾小豆の動向。

(5)そしてホクレン等のヘッジと、取引員自社玉のポジション動向。

◇…思うのであるが、この先、まだ強張るとしても短期決戦であろう。

仕手筋が積極的に煽りをかければ、二万六千円の相場は付くかもしれない。

◇…それからあとは、産地の売りや、輸入商社の先回りしたヘッジが激しくなるだろう。

◇…北海道の小豆生産者にとっても、出来秋の高値は非常に喜ばしい事で、一応は売り繋ぎをかけよう。

◇…大局的な需給事情は本年の収穫が一応九十五万俵として、言われるように繰越在庫が五十万俵ないし五十五万俵なら、あとのファクターは輸入事情という事になる。

◇…そのような事から、上値を二万五千五百円あたりと見ていて、仮りに踏み上げや、仕手策動で二万六千円の相場になっても、大勢としては売り方針が多分御正解だと思う。

◇…要するに目先強ければ、売り場を見つけるつもりでよいと思う。

●編集部註
大局的な方向性を把握した上で、ちょっとした短期反転場面があると思い、軽い感じで逆ポジションを取るもこれが大曲がりし、切るに切れずに因果玉を生み出してしまう。

昭和の風林史(昭和五四年九月八日掲載分)

2017年09月14日

最終コーナー 意外性狙うもよし

◇…大勢売りの中の中勢買いという相場の位置づけに変わる可能性を小豆相場は示唆するかもしれない。

「いまはただ眼白の鳴ける霧の木木 秋桜子」

◇…もう一と声、千丁高くなったら男の子。

五千円が六千円。

このまますぐではなかろうが、相場が強張ると、必らず鎌入れ不足だとか、早霜懸念などの材料が、あとから追いかけてくるものだ。

◇…下から陽線三本食い込むかたちは買い線である。

秋の需要期、輸入小豆の売れ行きがよい。

値段が安ければ、今は物が売れなければおかしい時期で、売れて当然。

◇…10月限の日足線は、4日、5日の線が、いわゆる「捨子」になっている。

線一本で強弱つけるなら、6日の陽立ちは、まだ売るには早い。

◇…久しぶりで静岡筋が買ってきた。腐っても静岡筋というわけかS高する限月もあって、強気側は爽快な気分にひたった。

◇…先限の二万四千円というあたりは、たとえ売っても下値目標のない、つまらぬ売りだった。

◇…ともかく千丁でも戻してくれたらという、待ちの姿勢、折りよく五千円台乗せして、さあここから五百円も引かされる気で売っていこうと、新規が出るのである。

◇…一方、強気側は、まだこの相場死んでいない。

戻り売り人気が強いようだと二万六千円に突っかける男の子、相場の意外性を見せるかもしれないと期待するのだ。

◇…八月7日から九月4日まで1月限一代足で三千七百十円安。節足新値11本の下げだった。

三分の一戻し千二百四十円。半値戻し千八百六十円。

そのどちらも、あってよし、なくてもともと。

◇…要は、違作申し立てがあるかないか。きつい霜で被害が大きくひろがれば1月限で六千四百円、いわゆる三分の二戻しだってなしとしない。

◇…普通一般の考え方なら、今の環境から、五千円台は、少々引かされるつもりで売り上がれば、別条ないというところである。

◇…相場の意外性を信じ相場にロマンを求める人なら最終コーナーの降霜一発賭けるのも、可能性の問題である。

戻り売り人気が強いのに相場の地合が締るという現象があったり、取組みが再び漸増傾向になったり、自社玉ポジションが変化しかけたり、そのような傾向が顕著になれば、あるいは、もう一と相場残すかもしれない。その場合、大勢売りの中の中勢買いという位置づけになろう。

●編集部註
当時の日足を見ると、8月中旬に十重二十重のマドが開いている。

ロマンティストはこのマドに向けた戻りを夢想する。そこに売り方の釣り野伏せが仕掛けてある。

昭和の風林史(昭和五四年九月七日掲載分)

2017年09月13日

売り場を狙う 上には繋ぎ玉待機

◇…小豆相場は霜の材料などで買い人気が沸騰するような場面を待って売れば判りやすいと思う。

「大江山降り出す雨に桔梗濃し 青邨」

◇…まだ、高値?みの玉が投げきっていないという。

かと思うと、六月末の安いところを売った玉を、七月の急騰相場を辛抱して、いまもって安値売りのままの人もあるようだ。

なんと言うか、こうなると筋金入りである。

◇…利のある玉は利食いするから、建玉という建玉は、すべて引かされていると考えてもよい。

◇…千円ほど戻してくれたら―という期待に応えて反発した。

需要最盛期だし、輸入小豆の下値が頑強。また、生産者団体による雑豆輸入ワクの削減運動など、硬材料として受け取られた。

◇…これで産地の気温が冷え込んで、早霜のニュースでも流れれば、千円戻しが千五百丁、うまくいけば二千丁戻しのコースに乗るかもしれない。

そうなれば商いも弾む。なにせ、八月の出来高は各商品とも落ち込んだから、九月決算月は、各社とも商いに精を出さなければならない。

◇…輸大でもそうだが、相場が上向きにならなければ商いはふえない。

さりとて、やたらと買えば、取引員自社玉のポジションを見ても明らかなように、輸大も小豆も圧倒的に売りが多い。

長い目で見れば、商品相場は売りが有利なのだ。

◇…ところで、観ていたら、ジンマシンが出そうだ―といらいら病だったタイガースファンは、対巨人戦で13も点を入れて、なんとも気分が爽快そうな顔をしていた。勝負ごととは、まさしくこんなものかと思わせる試合で、相場にしても一寸先は闇。

だから失意の時でも悲観・絶望するなかれ、得意の時、驕慢になるなかれである。

◇…半ば、あきらめていた小豆相場の買い玉だって、相場が止まるところにくればピタリと止まり、止まれば止まったで反発もする。

こうなると、必らず強弱材料も、強い材料が出現する。理屈はあとから貨車でくるというわけだ。

◇…いうなら、人気の裏である。万人が万人ながら弱気なら、阿呆になって買いの種蒔けという言葉もある。さて、戻ったら売ろうの、たらであるが、戻り足の強さによっては、強弱観が変化するのが市場の顔である。材料によっては、戻りでなく出直りだ―となるかもしれないが、鬼より怖いホクレン様が売り場を狙っている。

●編集部註
 戻してくれたら―、と願って本当に戻っても、そこでハイありがとうと退散する人は意外に少ないのが相場あるある。
 ひょっとすると、ここで形成逆転できるかも、と夢を見てしまう。
 そのうたかたの夢が、身ぐるみを剥いでいく。

昭和の風林史(昭和五四年九月六日掲載分)

2017年09月12日

商取業界昨今 元気出さねばの秋

◇…小豆相場のほうは、戻すような場面があれば、売っておこうと待つ格好で商いも薄い。

「鉦叩たきて孤独地獄かな 敦」

◇…商取業界の昨今は、概して空虚である。

松尾芭蕉の「秋風や薮も畠も不破の関」という感じである。

業界人に元気がないのは、成績が上がらない。商売が昔のように儲からない。取引所や役所が、がんじがらめに規制した。営業の新人が集まりにくい。

相場の動きが小さくなり、お客さんの数も減った。

業界の前途に対して、希望の湧くような見通しが、まだたたない。

新規上場商品の道は遠い。そして業界人は総体に老いた。戸籍年齢だけでなく、精神年齢まで老いた。

業界が発展途上にある時は、無茶もんや、やんちゃものも輩出したが、総体に経営者も営業スタッフも小ぢんまりと、野性味がなくなり、無気力、惰性化した。

こういう現象は、どのような業種、業界でも必らず遭遇する循環現象である。

成熟期を過ぎ爛熟期を過ぎ、そして衰弱期に入り回復力のないものは滅亡する。商取業界は、主務省筋の室長あたり、いまのような状態では、いずれ滅亡するだろう―と、おっしゃるが、業界人が、甘んじて滅亡の道をたどるようなことは決してないと思う。
先物取引きという機能が経済社会で効果をあげている以上、時代が移り変わっても、商品取引所は存在するし、商取業界も、規模こそ大きくならずとも存続する。

◇…要するに、これからは、生き残れる者と、姿を消していく者とに区分されるわけだ。

生き残れる者とは、世間様の物指しの目盛りで、計ることの出来るところだ。

この業界には、この業界の内部だけでしか通用しない物指しで、すべてを計ろうとし、また計ってきた。その目盛りで世間様を、まかり通ろうとしたところに誤算があった。

はかるとは謀の字も謀るであるし、ほかにも測る、量る、諮る、図ると、それぞれ持つ意味は違うが、はかったり、はかられたりが世間である。

◇…見たところ、業界の経営者群は、財の目減りで臆病になっている。もともと太く短くの人生観だった人々が、太く長くという欲が出た。長くいこうとするなら細くしなければプツプツ切れるのが世のならいである。ここらあたりにも計量思考の矛盾があったようだ。目下、それの洗脳中というところである。

●編集部註
平成の御代からこの業界に入ったものが読むとツッコミ処満載の一文とも言える。

イヤイヤ、ここから更に、どんどんと悪くなって行きまっせと。

昭和の風林史(昭和五四年九月五日掲載分)

2017年09月11日

買い妙味ない 値頃感は通用せず

◇…小豆は買い妙味のない時期である。巨大売り仕手的なホクレンや雑豆輸入商社の前では手が出ない。

「稀といふ山日和なり濃竜胆 たかし」

◇…相場の上昇期は、相場が高いと出来高が増大し、相場が安いと出来高が細る。

逆に相場の下降期は、相場が安いと出来高は増大し、相場が小戻すと商いは細るものである。

◇…九月三日新ポ、ストーンと値崩れして、小豆の出来高がふえた。投げと新規売りである。

◇…北海道の作柄も、ほぼ見通しがつき、供給面は不安がなくなった。

◇…天候相場が終り、需給相場の開幕である。

下期雑豆輸入ワクに市場の関心が移り、北京商談や秋の交易会、そして台湾小豆の作付け動向。あるいは需要期における冷凍小豆、加糖アンの入荷などが相場の強弱材料になる。

◇…このような段階に入ると、相場の主導権は、雑豆輸入商社と、収穫後の小豆販売を担当するホクレンが市場の制空権を握る。

◇…ホクレンは、言うならば、現物を背景とする巨大な売り仕手である。

雑豆輸入商社は、攻撃的なヘッジャーである。

◇…この二ツの存在に、いかようにして未組織な投機家が対抗出来ようか。

当然、投機筋も環境に順応して売りポジションにまわる。

◇…相場が高くなるという要因は、当面、来週あたりに可能性を持つ北海道の冷え込み、早霜ぐらいである。この場合、取組みが、随分売り込まれていたならば、勢いよく相場は反発するだろう。

それは、内部要因による自律反騰である。

◇…しかし相場の基調というものが、供給面に不安がないという流れの中にある限り、外部要因による自律反騰は、短期間に終ってしまう。そして、戻しただけ悪くなった―という相場になる。

◇…考えてみれば、先行き妙味のない相場である。
いまの相場が、もう、かなり下げたあとの、日柄を十分に経過したものなら、ある程度の反発高というものも期待出来ようが、内部要因面から反騰出来るほど売り込まれた取組みでもない。

そして、高ければ、ホクレンあるいはヘッジ筋が手ぐすねひいて売るだろう。

仮りに相場を売り崩すという考えがなくとも、売り勢力と買い勢力を比較した場合、力の差は、あまりにも開き過ぎているように思う。値頃感などで買われるようなら、さらに相場は重くなるだろう。

●編集部註
この10年ちょっと前まで、売買手口は公開されていた。

つまり、どの会社がどの銘柄を何枚売買していたかが日々公開されていた。しかもこの時取引は板寄せだ。従って内部要因は今よりも重要な予測因子であった。