昭和の風林史(昭和五九年三月一日掲載分)

乾繭三日見ざれば怱然!!

銀の押し目は判りやすい買い場。乾繭三日見ざれば惣然たり。輸大先限に夢あり。

きょうから東穀に米国産IOM大豆が別建の市場としてオープンされる。

また東京金取引所の銀市場は前場二節、後場二節と立ち会い回数がふえて売買回転が速くなろう。

これに呼応して“日経新聞”が商品先物の紙面を拡大するそうだ。

朝日や読売、毎日などの全国紙が商品取引所相場のスペースを、ほとんど削って、相場数字の掲載も朝夕刊最小限度になって久しい。昭和30年代は商品市況欄の雑記華やかなりし時分で朝日の繊維市況“たて糸よこ糸”など相当なスペースを持っていたものだ。

商品先物市場に対する一般紙の扱いは、やはり時代の変遷によるもので、日経紙が商品面のスペースを拡大することは、商品界にも新しい時代が到来しつつあることを知らしめる。

さて金の反落からシルバーも押し目を入れた。海外高を映して大出来高、人気沸騰のあと海外反落をダイレクトに受けたものだが、これは申し分ない押しである。相場は若いし、この相場の前途は雄大だ。

乾繭が急所を買い切って一説には五千百円があるという。中段の嫌というほどのモミが寒肥えみたいに養分を吸って大きな花を咲かせるだろう。前乾先限四八〇〇円が早そうだ。

輸大はシカゴが25㌣の押し目ほしいところ。

すでにシカゴは下げトレンドと離婚している。七㌦10あたりの押しはV2ボトムとしてコンピュータ筋が襲いかかる地点である。

またヨーロッパ通貨の回復は、その分だけシカゴ大豆が安くなる勘定だから下値にカンヌキが入る。

穀取輸大も新しく取り組む階段だ。高値取り組みは整理され、目下節足二段上げから軽く押して三段上げをつくる。まずは序盤のラリーというところか。八限天災期限月に狙いを。

●編集部註
 いまから20年前の2000年にイ・チャンドンという人が監督を務めた韓国映画で「ペパーミント・キャンディー」という作品がある。今回の全国紙の商品先物欄を巡る記述のあれこれを読むと、何故か無性にこの映画の事を思い描いてしまう。
 鉄道橋のふもとの河原でBBQに興じる中年の男女の横を、うらぶれた中年男性がふらりと通る所からこの映画は始まる。
物語はその数分後、男の「戻してくれ!」という絶叫を合図に進行していく。
 この作品、映画の冒頭が現在で、章が進むごとに過去に戻り、ラストが時代的に一番古くなり、タイトルの意味も分かる。
 二十余年この業界にいて、今回のような記事を読むと「戻してくれ!」と絶叫して、本当に時間が戻ったらどんなに良かったかと思ってしまう。