昭和の風林史(昭和五九年二月二一日掲載分)

輸大投機の戦略を考える

春はすぐそばまできている感じの穀取大豆だ。大底確認の大きな判をどこで押すか。

シカゴ大豆が、もう一度七㌦を割るあたりを、すぐでなくても日数をかけて割ってくれば、これはもっと判りやすい底値になるだろう。
いわゆるWボトムになるからだ。

過去のシカゴ・チャートを見ると大相場後の長期的な下げのあとに、このWボトムが出ている。そして、W型大底確認後は、なんだかんだと弱材料・弱人気の中にありながら知らず知らず相場水準を切り上げている。要するに(1)値頃にとどき、(2)日柄で玉整理が終わり(3)人々の考えかたが変化するわけだ。

穀取輸大のほうも、四千八百円が底値圏と見て買った玉が、その後の下げで気が持てずに投げさされたわけだが、V型でしかも窓あけて飛ぶには少々早すぎて、これがもう一度安値を洗いにくれば、ぼつぼつ夏場にポイントを絞った投機の戦略を組み立てる人たちが出動してくるところ。

相場というものは、買いました、騰がりました、グングン高いです、大きな利が乗っています―という場面は、ホップ、ステップ、ジャンプの、いわゆる二段上げ段階、三段上げ段階のところで、いまはまだ大底圏を模索し、何回か助走の練習を繰り返しながらホップの見定めをつける。まあそのように思えばよいと思う。

東京シルバーが74円10を買い切り、上向きトレンドが急に明るさを増した。

75円50の高値を買い切れば出来高が急増し、80円台に挑戦する。

人々も段々、銀相場に馴れてくる頃で、早く全節の相場を建ててもらいたい。

乾繭は、意外なほど隠れた人気がある。今年前半は乾繭買いが本命だと断言する人もある。前乾四八〇円を買い切ったあとは四千七五〇円がマークされる線型になっていた。

●編集部註
 あらためて84年前半のシカゴ大豆の日足を眺めてみると、先般提示した2月安値の時以外にも、ダブルボトムと縁があるチャートであると再認識させられる。
 本文で登場した「ホップ、ステップ、ジャンプ」も出現。数学者は、しばしば数式を美醜で例えるが、この波動はチャートの教科書に出て来るような美しさがある。
 美しい波動は相場が張りやすい。それを阻む要因は、大抵の場合仕掛ける者の疑念や逡巡、猜疑心や怯えに起因する。
 本人も、それを充分に承知している。