昭和の風林史(昭和四八年四月二十四日掲載分)

大底を確認し 颯爽失地回復へ

小豆は、押すと、さらに強烈なものとなる。大出直りである。一万三千円が存外早い。

「慈悲心鳥ひびきて鳴けば霧きたる 秋桜子」

気象庁が21日異例の〝異常気象白書〟を発表した。冷夏、干ばつ、豪雨、七十年代は両極冷却で、天変が世界的に発生する―と。

今年の異常気象については、すでに中米全域の大干ばつが報じられ農作物の被害も大きい。またミシシッピー川の大氾濫は百二十九年ぶりの規模と言われ、綿花栽培に影響が出ている。

ともかく、太陽黒点活動の最小期を来年に控えて、北海道の天候が早くから心配されていたが、気象庁の異例の警告は小豆相場にショックを与えた。

小豆相場は四月14日の〔下寄り短線〕を放れ星、いわゆる〝捨て子〟にして早くも前週末には千円棒を立て、新値三段も買いに転換。週明け先二本は二千円台に回復、三分の一戻しという勢いである。

相場は、こうなると売り方の手仕舞い、手あき筋の新規買い、買い方の積極化という一転して場況がさま変わり、早くも一万三千円(半値戻し)が当面の目標となる。

ここまで回復すれば、あとは、押すもよし、伸びきるもよしの姿。人気が人気を呼ぶわけである。節(ふし)足では〔下げて伸びる〕屈折があるほど、先に行って伸びは強烈なものとなる。

聞けば東京も大阪も名古屋も〝場〟(立ち)は完全に強気になっているそうだ。

〝場〟は目先巧者である。当面一万三千円必至という声は、あながち無視するわけにいかない。

一方、桑名筋は、予想外に早い出直りに、とまどっている格好。『五月、六月と下値で、もみあうほど天災期の動きに楽しみが持てると期待していたのであるが、こうも早く買われると、また大きな落とし穴があるかもしれない』―と。

相場は待ったなしである。三分の一戻しが、流れの勢いに乗れば半値戻し地点まで弾みをつけることもある。

いずれにしろ大底(四月14日)を入れた小豆だ。押し目買いでもよいし、戻り新値を追うのもよい。再び判り易い相場になった。

仮に下げたとしても、相場基調が上昇、回復に転じているのであるから気分は明るい。

颯爽と強気しよう。

●編集部注
 相場は退屈である―。

 波動を乗り切った相場巧者は後日そう語った。

 放置しておけば良いのに、あれこれいらん事をして曲がる。故に〝鈍〟も相場に必要なのだと。

【昭和四八年四月二三日小豆九月限大阪一万一九四〇円・六〇円安/東京一万一六六〇円・一四〇円安】