昭和の風林史(昭和四八年四月二十三日掲載分)

まず三分の一 それから半値へ

三分の一戻し地点に達する。すでに千円棒を立てた。強気陣営に久しぶりで活気がみなぎる。

「尺鮒の魚拓かかげて木瓜の鉢 春一」

大阪小豆先限は、千円棒を立てた。新値三段足も綺麗な買い線に転換した。

三カ月予想で晩霜の不安があること。中国が小豆の値下げをする意思のない事などが反発の原因であるが、相場そのものが、すでに底入れ、出直りの姿に転換していただけに先限一万二千円乗せから、三分の一戻し(一万二千六百円)ともなれば、気分は、さらに明るくなるだろう。

広州交易会小豆商談については、前回北京商談の山東FOBトン当たり六七五元を引き下げる考えはなく天津も山東の五%高、七百元を希望しているようだ。中国側に値下げの意思がなければ輸入商社としても積極的な成約は望めない。

すでに千円棒を立てたこの小豆相場に、安値売り込み筋は同様の色を現している。当初、戻り売りを唱えて戻ったところを売ろうと準備していた手あき筋も、地合いの硬化と、相場の反発味から、むしろ押し目買い人気に変化しつつある事も見逃せない。

相場とは、筆者がいつも言うように材料はあとから追いかけてくるものである。

底を打った相場はいかに売り叩かれようと、自然に出直って、出直るにつれて硬材料が降って湧いてくる。しかも人気が陽気に転ずれば、人情のしからしめるところ、高いから買いたくなり、買うから高くなる。

時期的に、まだまだ一本調子で伸びていく相場でないかもしれないが、ともかく相場そのものの性格が変わった以上、押し目買い人気が充満するであろう。

さて、今週、来週と交通ゼネストや連休、飛び休などで仕事にならない。新聞のほうも国鉄が窓口の受け付けを止めるため輸送が止まる。困ったことである。ホテルを予約し、社員の確保や、なにかと雑然とすることで、相場のほうも閑になるかもしれない。

まあ、一気に買われるより、三分の一地点で押し目を構成、時間をかけて五月上旬から下旬に、半値戻しの一万三千円という相場をつくれば、いよいよ天災期にはいってからが面白くなるというもの。

現物面も先高のムードに包まれれば、もとより買い急ぎ傾向となる事は火を見るよりも明らかである。ようやく強気陣営にも活気がみなぎってきた。

●編集部注

 後に「首都圏国電暴動」と呼ばれる事件の前夜、市場も世情も熱かった。

【昭和四八年四月二一日小豆九月限大阪一万二〇〇〇円・四一〇円高/東京一万一八〇〇円・三六〇円高】