昭和の風林史(昭和四八年六月十六日掲載分)

君たちだけで やっていたまえ

小豆が崩れだしたら一本道。手亡も崩れる。大衆はソッポを向きだした。人気離散の市場は怖い。

「鯛めしに茶も買い添へし青田風 龍男」

14日のシカゴ穀取の小麦、大豆、とうもろこし相場は価格凍結と輸出規制を嫌気して全面的にS安となった。米農務省は、これまで日本、EC諸国に米農産物の門戸を開くよう強く要請していながら、今になって規制するのはおかしいとの声も出ているようだ。またブレジネフ・ソ連共産党書記長訪米の主目的は米国からの穀物輸入を安定させることにあると見られているだけに、ソ連向け穀物を制限出来るかどうかも注目されている。

さて波の荒い小豆と手亡の相場に、顧客筋は手が出せない。営業マンも、お客さんに、この動きを、なんと説明してよいか判らないで困っている。

いうなら、クロウトばかりの夜明けのサイコロ賭博に熱中している。相場の末期的現象の一ツと見ることも出来よう。適正な価格が構成されているとは思えない。一俵60kgの小豆が朝と夕方とで千円も値段が違うことを一般の人に説明してみよと言われると難しい。

小豆の在庫は豊富。六月15日現在の帯広周辺の小豆、大豆、菜豆とも作況は平年並みといわれる。小豆の草たけ三・六センチ。平年比二日早い。菜豆の草たけ五・八センチで平年並み。

六月15日の札幌祭も無事過ぎた。

しかも七万三千ヘクタールという大増反。一体どこを強気すればよいのか。その間にも日柄が経過して天井圏の相場はメロメロである。手亡が強張っているから値が維持されているだけで、いうなら〝陽の極〟だ。

暴落は、足もとに忍び寄っている。

手亡にしても普通小豆の七掛けがいいところである。小豆六千円の時に四千二百円。八千円で五千六百円。小豆一万円で七千円。一万二千円で手亡八千四百円。一万五千円で一万五百円。まあこれが応分な手亡の値段である。

されば小豆の一万七千八百円の七掛けは手亡一万二千五百円である。

見ていると手亡は買っているあいだだけ高い。しまいには誰も相手にしなくなるだろう。君たち勝手にやっていたまえ。大衆からソッポを向かれた市場の末路がどんなに、みじめかいずれ判るだろう。

手亡も結局は崩れる。

●編集部注 
罫線にまた星が出る。

素人は買いから入るが、クロウトは売りが大好き。

現状はクロウト好みの相場展開といえよう。

【昭和四八年六月十五日小豆十一月限大阪一万七七〇〇円・二一〇円高/東京一万七七六〇円・一一〇円高】