昭和の風林史(昭和四八年五月二十九日掲載分)

暴落含み相場 下げは二千丁か

絶対不順だと決めてかかるとハイセイコーみたいな事になる。案外順気が続きそうだ。青田ほめか。

「人が来たよな枇杷の葉のおちるだけ 山頭火」

東京土井商事の小豆売りが注目されている。この売りは桑名筋とは関係ない、別の新しい勢力が出現したものと受け取られている。市場の事情通は『土井さんの売りじゃなかろうか』と臆測しているが、それは判らない。

土井の大量売りが買い方桑名筋のものではないとなれば、今後の相場に対する見方も大きく違ってくる。

産地は高温が続いた。小豆の種蒔きも、ほぼ終了している。農作業は平年並みである。早くもない。遅れてもいない。

相場のほうは〝頭づかえ〟の感じである。五千円相場を六千円、七千円に買い上げていく力はこの相場にない。

この水準で時間が経過したらどうなるか。

強気する側は、五千円相場に慣れてしまえば抵抗なく上伸出来ると考えよう。

弱気する側は、高なぐれ上げもだえ、だんご天井型と見て、支えが無くなれば屋根の上からバケツを転がしたような音を立てるだろうと相場の疲労(日柄の経過)を待つことになる。

考えてみれば、一万五千円に買ったには、買っただけの根拠があって、この値を付けた。

付けたことにより踏みが出て、買いついて、新規の強力な売り物が出現し、異常天候も盛り込んだ。

こうなると、次は、次の新しい材料の展開を待たなければならない。

その材料は売り方に味方するか、買い方に味方するか判らない。

ただ、見ていると、余りにも天候不順を期待しすぎている。ダービーで、誰もがハイセイコー絶対という人気になっていたようなものだ。

競馬解説者はレース前は絶対の絶みたいに言っていたが、ハイセイコー敗れるや競馬に絶対はない―などと、あったり前の事を言う。

今年は異常天候で、冷害必至と、いまの市場は凶作に決めてかかった小豆であるが、相場に絶対はない。播種も順調、その後の天候も、それほど悪くない、芽も順調―となれば、もとより反動安はきつくなる。

三月は上げた。四月は下げた。五月は上げた。となれば六月は下げる番になる。

意地をつけて売るのは感心しないが、五千円台は盛りのよい売り場だ。

●編集部注
 ケインズのいう「アニマルスピリット」の典型。

 丁半博打と言われれば身も蓋もないがリスクを獲りに行ったのだろう。

 リスクが高ければ高いほど、リターンは大きい。

【昭和四八年五月二八日小豆十月限大阪一万五三三〇円・一四〇円高/東京一万五二二〇円・二〇円安】