昭和の風林史(昭和四八年二月十四日掲載分)

再び反落する 戻り売りでよい

強く見えて高いところは売って怖くない。思い切り下げないと大相場にならない。戻り売り方針。

「枯笹にたけりうつりの畦火かな 風生」

ホクレンが『価格調整保管中の小豆30万俵の放出は当分行なわない』と表明したことを好感し小豆は反発した。
この日、株式市場もダウ五千円に乗せた。

さて、小豆相場は目先反発して、また下げるであろう。この相場が、今新高値に買い上げていけるだけの力は持っていない。それは①売り込みが不足している②高値に買い玉がひっかかっている③買い方主力筋は、大幅値下がりは困るけれど天候相場を思惑しているのであるから煽ったり玉締めなど考えていない。

東京先限は千円棒を記入した。大阪先限は、あと三文というところで止まった。三千円中心の、もみ合いのような格好である。

人々は手を出さない。売っている人は安いところだ。買っている人は高いところだ。今の値段は中途半端なところで、魅力がない。

もっと戻せば、勢いにつられ飛びつく人も出ようし絶好の売り場とばかり売る人も出てくる。

逆に、一段安に崩れたら恐らく突っ込み買いの人気になるだろう。

春眠暁を覚えずの時節にはまだ早い。しかし呆(ぼん)やりと、なんとなく掴み難い相場となった。

桑名の殿さんヤンレ、ヤットコセ、ヨーイヤナ、桑名の殿さん時雨で茶々漬ヨーイトナ、アーレワ、アリャリャンリャンヨイトコナ。

弱気は先限一万一千五百円を見ている。それ以下は買いたいらしい。

と申すのも、先限がそのあたりまで下げると、自分の買い玉が救われる。そこで買い方に回ろうという考えである。

安値を売ったから弱気しているに過ぎない人が多い。これは人情のしからしめるところである。やむを得ぬ事情ありと言う。

それで、どうなんだろう。売ったらよいのか。買ったらよいのか。

下げて千円ズズズのズ。そうなれば相場になるが、そうもいかない。強く見せて伸びず。悪く見えて崩れず。阿呆らしいから手を出さないという事になる。

誰かが言った。厭き厭きした―と。吐き捨てるように。その通りであるが相場は根気である。

戻りは売っていけばよいのである。どんなにきつい戻し方でも怖くはない。

●編集部註
 この見方で間違いないのだ。通常の相場なら。
 我々は既にこの当時の小豆相場が狂気の相場であった事を知っている。
 売り方も買い方も、そして相場も疲れている。急変は、その隙間を突く。

【昭和四八年二月十三日小豆七月限大阪一万三一〇〇円・四六〇円高/東京一万三〇〇〇円・三八〇円高】