昭和の風林史(昭和四八年三月二十三日掲載分)

軽い全値戻し 連発S高の風情

この小豆相場は六千円抜けなど問題にしていない。各限いずれも連発のS高含みである。

「なの花の中に城あり郡山 許六」

小豆相場は、買い線のままである。

期近二本の一万二千円どころは、鉄筋コンクリートの分厚い土台が出来ていて、これを崩すことは不可能だ。

いうなら〝地相場〟になっている。三月限の一万二千円~三千円のところの厚さは、日柄で約60日にもなろうという、この限月一代中の最高の練り場になっていて、記入している三月限一代足のグラフは、一万二千円のところから下は、ハサミで切り捨ててしまえばよい。と言う事は三、四月限の一万二千円以下の売り玉は救いようがない―ということである。

期近二本が一万二千円で鉄筋コンクリートの底を構成していて五、六月限の中日本が一万三千円で地相場。これまた、古いビルを潰すワイヤー・ロープの先にまっ黒で巨大な球状の鉄の塊をガンガンぶっつけても三千円は崩れない。五、六月限の三千円以下の売り玉も遠からず酸素切れで浮いてこよう。

さて、六限月のうちの四限月が崩れようのない確然、しかも厳然たる土台の上に腰を据えて堂々の布陣。

その先端に七、八月限というピカピカ光る槍の先のような鋭角な限月が宝蔵院流の槍術の突いて引いて突き出す格好。

槍術には宝蔵院のほかに大島流、無辺流、建孝流、富田流、神道流、本間、内蔵、京憎、一旨、木下の各流派があるけれど、いずれも突きを入れたら必ず手前に引いて、間髪を入れず閃光の如く突き出すのが基本である。

兵法でいえば三、四月限の〝腰〟が据わり、五、六月限の〝体〟が半身に、七、八月限が軽く、そして冴えている姿だから、間(ま)を充分にとって、あとは気合いである。

筆者の引くトレンド併行斜線は基調不変75度である。トレンド75度斜線が85度と鋭角に転ずれば、相場は必ず火を噴くのである。

先二本、六千円抜けありと見る。各限月S高含みである。

規制に敬意を表した。輸入にも無関心でないという意思を表示した相場だ。その限りでは礼にかなっている。この相場、なかなかどうして尋常ではない。無念無想で買う以外にない。

●編集部注
十文字槍でおなじみ、宝蔵院槍術がでてきた。

統計をとったわけではないが、古今東西を問わずミリタリー関連の話題が出た時は注意である。
 
勝っていても、負けていても自分自身に何かを言い聞かせているような時にこの話題が登場する。
 
そして、残念ながら、負けている時の方が多い。

【昭和四八年三月二二日小豆八月限大阪一五〇五〇円・七〇〇円高/東京一万四八九〇円・七〇〇円高】