昭和の風林史(昭和四八年三月二十七日掲載分)

弱気絶対無用 なんら心配なし

お客さまは、よう売ってきやはります―という。いずこも同じ人気の動向。悪目は好買い場。

「山越の鴉こえなし花辛夷 波郷」

気の抜けたような閑な市場になった。納会、月末、三月期の決算などの関係もあろう。

また増証、手亡の厳しい建て玉制限、金融の引き締まりなども微妙に影響する。

しかし、大勢的には小豆相場の基調に、なんら変化はないと見てよい。

熱狂していた人気が潮の引くように醒めた。

それは次々と打ち出された規制にもよるが、日柄という面からのサイクル、周波の波でもある。

緊急ワク三百二十万㌦の発券、北京商談、交易会控えなどの材料を、かなり織り込んだ相場には違いないが、熱狂的に買い過ぎた相場が反省期にはいったようなものである。

お酒の好きな人ならたいがい経験している事だが、つい呑みすぎて調子に乗って、次の日は二日酔いで頭があがらない。ゆうべの事を思うと慙愧(ざんき)にたえない。あれと似たような現象である。

しかし体質が変わったわけでないから、夕暮れともなれば、ちょっとだけきょうは慎重に―ということになる。そしてしばらくすると、またお酒の上で失敗して後悔する。

この小豆相場だってつい調子が出てしまい、ストップ高、ストップ高で買ったまでだ。ただいま現在は二日酔いで後悔しているような風情。

先限一万四千円割れは買い場になる。

なんといっても七、八月限は天災期限月というエリート限月。これに端境期の九月限と先三本揃えば、来たる四月は投機家好みの〝二日新ポ月〟。
彼岸に安値を求めて安値を固めておけば彼岸底。

易の掲示板にぽつぽつ花だより。〝花信しきり〟となれば、見渡すと、いずこも同じ〝お客さまはよう売ってきはります〟という。売ってくるお客さまが神様になるか鬼になるかは、筆者の口からはなんとも言えないが、安いところは買わなきゃ駄目だ。

残された相場は穀物ぐらいである。砂糖もゴムもあるけれど、投機妙味は小豆にまさるものはない。

各穀取とも、ほどほどにバリケードを築いたあとだけに、少しぐらいなら相場が荒れたほうが張り合いがあろうというもの。

●編集部注
この数十行に、相場難儀道の世界が満載である。

相場が、思惑通りになる進展する事はまずない。その思惑は心が揺らいで、ポキリと折れた頃にやって来るものである。

【昭和四八年三月二六日小豆八月限大阪一万四四三〇円・一〇円安/東京一万四四九〇円・一四〇円高】