昭和の風林史(昭和四八年一月八日掲載分)

なんとも重い 崩れそうな気配

一月第一週は、なんとか値を持たせた小豆だが今週ごろから下げそうに思える。重い気配だった。

「堂裏に松焚く烟や初薬師 竹芝」

東京では土井商事。大阪と名古屋の大石商事。仕手筋は閑な市場で、ともすれば下げようとする小豆相場を買い支える。

市場では板崎氏の存在にかなりの期待をかけてる。彼が穀物市場に存在する限り、市場は閑にならない。出来得れば、どっぷりと首のあたりまで小豆につかれば、ちょうちんもつこうし逆向かう人も出てきたりして面白い相場になる。

市場には、誰かこういう人気役者がいなければ淋れてしまう。かつては寺町氏あり、増山氏ありで活況を呈した。その昔は伊藤忠雄氏あり、中京の小川文夫氏あり、そして博多の早麻崎蔵氏ありで小豆相場は人気を集めた。

人気は相場の花である。供給総量二百五十万俵の豊富な小豆だ。〝陽気なお金持ち〟が踊ってくれないことには花が咲かない。その意味では板崎氏の存在は貴重である。その彼は、聞くところイレ、投げが実に綺麗で鮮やかな相場師だという。資金量は豊富。市場は拡大されている。役者に不足なく、土俵が潰れる不安もない。

天がこの彼に時の運をあたえれば、穀物市場は、いやがうえにも活況を呈するであろう。

週末の引け味は、なんとも頼りない。陰線三本である。それは、むこうの山のあたりに灰色の雪空を思わせた。いまにも白いものが落ちてきそうな。

産地では雑豆自由化反対の運動が盛り上がっている。しかし時運のおもむくところ大勢は、いかんともなし難いであろう。

国鉄の貨物運賃も値上げ機運だ。輸送コストが高くなる。しかし、だから相場は買いだ―というムードではない。いずれ先に行ってそういう時もこようが消費地に在庫がたまりつつ時だ。硬材料の上から軟材料がおおいかぶさっている。

一般に、九千五百円が頭で、九千円割れに抵抗があると見ている。

筆者は先限の八千五、七百円があると見ている。一月第一週、なんとか値を持たせた小豆相場であるが、えびす天井という言葉もある。十五日の小豆粥の風習も年々すたれている。早ければ今週あたり年末の安値に顔合わせするかもしれないと思った。

●編集部注
新年から未も蓋もない文言で始まったものだ。

いま〝陽気なお金持ち〟が踊って…などとは書けない。しかし兎角我々は「ソロスが動いた」などというお話が大好きだ。

【昭和四八年一月六日小豆六月限大阪九二八〇円・三〇円安/東京九三三〇円・一〇円安】