昭和の風林史(昭和四七年十二月二十五日掲載分)

先限八千五百円 以下には抵抗が

小豆の先限八千五百円以下は売り叩くわけにいくまい。急反発すればまた売られるだろう。

「萬灯や終ひ天神にぎやかに 活刀」

年内秒読みにはいった。正確な時計さえ持っておけば発車まで、あと二分とギリギリでも切符を買って、ゆっくり新幹線に乗れる。十五分もあれば東京駅の地下で麦酒を一本飲んで、走らないで発車に間に合う。発車のベルが鳴り出してドアが閉まるまでに60秒ある。60秒という時間は長い時間である。

今年も実によく新幹線に乗った。勘定してみたらこの一年で百回利用した計算になる。三日に一度新幹線列車にゆられているわけで時々自分で自分に〝お前は馬鹿か〟と言いきかせる。

新幹線が岡山まで延長されて困るのは、大阪を寝すごして、気がついたら新神戸だったりする事だ。以前なら終点ですよ―と車掌が起こしてくれた。

今年はもうどこにも行かないでよい。ほっとする。新年号32頁建ても刷り終わって発送配達にまわる。

そして小豆相場も大阪二月限はストップ安だ。これもやれやれである。

読者に借りを返したようで、肩の荷がおりる。

あとは幾つかの忘年会のスケジュールを消化するのに専念すればよい。

そして相場のほうは今週月火水曜とやって木曜日は大納会。強弱は、もういいのではないかと思ったりもする。

しかし、この小豆、どう見ればよいか。

先限の八千五百円以下には叩けないように思う。週明けは反発だろうが、一月に御祝儀で買われても、それは一時的で、あとジリ安。だが八千五百円以下を叩けば急反騰の素地をつくりかねない。

利になった売り玉は手仕舞って、お正月は、さっぱりと相場のことを忘れてしまう。

手亡の相場は、今まで穀物を敬遠していた大手専業取引員が①証拠金が手ごろ②減収だった③他商品がかなり水準を高めた―ということから先々月あたりから積極的に営業の対象とし、土曜も富士商品が東穀前場一節で千枚買いの手口が目についた。

恐らく新春は、このような大手専業筋がひと場で二千枚、三千枚という商いをするであろう。伴って相場の動きも一段と妙味あるものになる。世の中は変わりつつある。

●編集部注
 熱気のある業界っていいなぁ…と思う。

 新幹線に年百回乗った話より驚くのは「新年号32頁建て」の方。書く側も、読む側も、今よりもっと楽しかった事だろう。

【昭和四七年十二月二三日小豆五月限大阪九〇三〇円・四三〇円安/東京八九一〇円・五九〇円安】