昭和の風林史(昭和四七年十一月十四日掲載分)

人気が燃えぬ 一高一低玉次第

小豆も手亡も、その節、その節、玉の出ぐあいによる小高下で、今ひとつ人気が燃えない。

「木の葉髪泣くがいやさにわらひけり 万太郎」

生糸と乾繭相場の波乱に気を奪われて、穀物相場のほうは商いも薄かった。

小豆はホクレンの30万俵タナ上げという材料を、相場は噛(か)みしめている風情(ふぜい)で、おりから毛糸戦線で活躍している板崎氏が小豆に買い玉を入れ『小豆の一万円目標』を予想しているようで(名古屋大石・大石社長)、うかつにも売れないという人気。

しかし(名古屋・中央商事伊藤社長)『商社筋は盛んにヘッジしている』動きもあって、需要最盛期と、出回り期の、どちらにウェイトを置いて先行き相場を判断すればよいか?という場面である。

それで、ここにきて一般大衆筋の動向であるがケイ線判断などから先限の九千五、七百円から、時によって踏み上げ相場で一万円が考えられない事もないと、かなり強気してきたようだ。

売って、八千五百円。その値段以下は、あり得ないという下値安心の気持ちが市場を支配しつつある時、安ければ八千五百円まで買い下がる方針のようである。

そういうわけで、ここのところは、とりたてて相場を刺激する材料も見当たらず、商いも薄く、玉の出ぐあいによる一高一低であろうが、九千三百円→五百円→七百円と買い上げていくには、実需が一段と活発化するのと併行して、八千五百円どころの売り玉が踏んでこなければならず、そうなればまた、ホクレンの売りヘッジも活発になり、交易会成約商社もヘッジするであろう。

安ければ、長期方針の減反見込み買いが入るし、気の早いむきは、明年の天候不順を予測し、また他商品からの投機資金の流入を期待する。

小豆が、そういうふうに持ち下げならぬ状態であるから、手亡のほうの人気も今一ツ燃えるものがなく、これまたその場、その場の玉の出方で値が付いている。

手亡の七千五百円以上は売り上がり、七千円割れは買い下がりという、なんとなくキリリと芯締まりにならない相場観が支配しているのもやむを得ない。

●編集部注
さあ、苦しくなってきた。ロジックの積み上げ方が精彩を欠いている事が行間から読み取れる。
全くもって笑えない。読んでいて胃が痛む。
これは決して他人事ではない。相場人全てが経験する世界である。

【昭和四七年十一月十三日小豆四月限大阪九一六〇円・一三〇円安/東京九一三〇円・一三〇円安】