昭和の風林史(昭和四七年十一月十五日掲載分)

売り場を待つ いずれ安い相場

いまひとつ弾みのつかない小豆相場だ。高いところがあれば売っておこうという市場の空気。

「しぐれふるみちのくに大き仏あり 秋桜子」

小豆は日数のかかる相場である。商いは薄い。相場は頭づかえの格好。毛糸戦線が、もうひとつ、はかばかしくいかないため板崎兵団は小豆相場に鉾(ほこ)先を向けているが、買っているあいだは値段が締まっても、実勢に逆らっているだけに、深味にはまると虎の子連隊も抜き差しならなくなろう。

人々は春の小豆の仕手崩れと、秋の生糸の仕手崩れを見てきているだけに仕手相場の末路の怖さを嫌というほど知っている。すでに大天井して戻り売り一貫の毛糸相場から板崎兵団司令部は、いかに軍を抜くかに専心しなければならない。

その時、小豆に兵力を分散させる事は、戦略上最も避けなければならない〝二方面作戦〟であり、二兎を追う者は一兎も得ずという結果になる。

仕手相場は、ある程度のちょうちんがついて、相場に弾みがつき、その仕上げは売り玉の踏み上げに向かって利を抜く。

小豆の買いが、単に長期方針の投資という見地からのものなら、それはそれで一ツの方法かもしれないが、煎(い)れを取ろうとか、一万円を付けようとか―そういう急いだ目的があっては深味にはまるだけである。

今の小豆相場は〝時間がかかって安くなる〟性質のように思える。

各限月別の線型も前の高値と頭を揃えて、それ以上の上伸力が見られない。

九千円台売り上がりの八千五百円以下買い下がりという格言である。

手亡の相場は斜めに肩下がりで姿勢を低くしている。期近限月の六千五、六百円。期先の七千円あたりは抵抗があるかもしれないが、上値も七千五百円以上のものではない。

これも小豆同様に限られた範囲内での小幅の逆張り相場で、時間がかかる。

商品業界は生糸で乾繭で、はたまた毛糸で大きくゆれ動き、一種異様な雰囲気に包まれている。十一月という月は、商品業界にとって、このところ毎年、沈痛な空気がただよう。

大阪は、もうすぐ道修町の〝神農さん〟のお祭り(23日)で、このころはもう寒さがきつくなる。そしてすぐに十二月。あわただしく日は過ぎていく。

●編集部注
戦争は引き際が難しい。

相場も利食いするまで何が起こるか判らない。

【昭和四七年十一月十四日小豆四月限大阪九二四〇円・八〇円高/東京九二四〇円・一一〇円高】