昭和の風林史(昭和五四年十一月十九日掲載分)

この小豆駄目だ 輸大先売りが勝負

小豆の先は二千二百円を取りに行く。為替が怖くて相場が張れるか―精粗糖暴落。輸大先売れ。

「荒海や北窓ふさぐ軒つづき 和香子」

小豆相場の前二本は、夜が明けたらチンタラ、チンタラ値を下げる。

現物は新と古品で五千円もサヤ開きした。

ホクレンは、およそ30万俵ほどの新穀を定期にヘッジしているのではないかと言われる。

30万俵のヘッジはしたが農家は安い値で仕切ってこない。これを仕切るために古品小豆で相場を叩き、一石二鳥を狙う。

新穀を安い値段で農家から買い取る狙いと、定期のヘッジ玉を安値で利食いする。

だから、力のある投機筋が、ホクレンのカラ売り玉の場勘を狙って逆手を取れば、ひとたまりもないだろう―と言われるが、目下のところそのような物好きもいない。

いうなら古品を道具にしたホクレンの定期オペレーションに、市場は冬の夜のように沈黙している。

それというのも、品物の売れ行きが悪い。実勢悪である。そこへ、余り物に根なしと来ている。

更に悪い事は、国際商品に人気が奪われ、小豆市場に大衆の投機資金が流入しない。

各穀取にしても、輸入大豆の商いが盛況を続けているから敢えて小豆市場の閑散に深刻さがない。

こうなると、小豆市場は、いよいよ鳥なき里の蝙蝠で、売り方の思うままである。自社玉も、市場環境に呼応する如く圧倒的な売りである。

古品現物一万八千円で売れない環境なら、まして買い方不在の定期相場の先二本など、先行き輸入小豆の圧迫もあれば、二万三千円割れの値頃買いは、一考を要する。時と場合で新穀定期の二万二千円。本年六月27日に付けた安値を取りにいく事になる。

相場の悪さをためていた精糖相場が、素直な動きになりそうだ。砂糖の実勢は、デパートの北海道物産展でグラニュー糖一㌔百六十五円で売っている。スーパーの目玉も百六十円で買えるとか。メーカーの建値引き上げ二百四円では、売れ行きを一層悪くする。

定期は外糖と為替とフレートに支援されているとはいえ、いつまでも噴水の上のピンポンの球は踊っておれまい。

輸入大豆は先限五千五十円、百円、百五十円と売り上がるのが、リスクを負った投機家の勝負どころである。為替が怖くて相場が張れるか―のところ。

●編集部註
 駄目だと言い切られると、このコメントを待ってましたとばかりに相場が反発しだす皮肉かな。
 ここでリスクを取った勝者を称える世の中なら、今の日本はもっと風通しが良かったろう。