昭和の風林史(昭和五八年四月十四日掲載分)

ゴムでも日柄には勝てん

ゴムは日柄に勝てん。深い下げが入る。輸大も目先的な頭を打った。小豆は軟弱。

ゴムの先二本限月に、いわくありげな新規売りが出ている。大衆筋は先二本の高値売り玉の利食い先行。

七、八限の二四〇円あたりの売りが捕まって二六〇円台に担がれ、辛抱。あるいは難平かけ、その甲斐あって高値売り玉の回転が利きだしたところである。

ロンドンや産地相場は商いの多い限月が、いま一ツ伸びが鈍い。

疲れたという感じだ。

芭蕉の句に、くたびれて宿かるころや藤の花というのがある。いまのゴム相場は藤の花。垂れ下がり。

いつストップ安が入ってもおかしくない相場と見るのだが、新年早々からの上げを経験してきた投機家は、怖がっている。
二八〇円もある。三〇〇円目標だ―と強気にトークされては、用心して当然。

しかし、たとえそれが国際的巨大ファンドか、シッパーによる世界戦略かしらないが、相場は万国共通。日柄には勝てん。

輸入大豆は目先的に頭を打って相応の押しが入るところ。シカゴもあのまま上伸を続けるわけにいかない線型。

取引員自己玉の売りが減ったということは、大衆筋が買い玉高値で利食いして、やや売りに回った。これが当たっているだけに無視できない。

応分の下げを入れておいて交易会の様子を見る。天候相場はそれから先だ。

小豆はどうか?という。先月同様月の八日に頭して上から陰線で差し込んできた姿は、本来なら千丁下げを見てもよいのである。

しかし、薄商い。敢えて売る人もすくない。ホクレンの制空権支配下。

買い方が、煽りの手を入れると相場がムクロであっても一時的に高くなるから強弱にならない。相場金言にも商いの薄いものに手を出すなと教えている。

●編集部註
 商いの薄いものに手を出すな―けだし金言なり。
 この頃の風林火山がタイムスリップして今の日本の穀物市場を見た時、一体からはどんな文章を書くのだろう。
 
 力山を抜き気世を蓋う
 時利あらずして騅逝かず
 騅、逝かざるを奈何せん
 虞や虞や若を奈何せん

 後に「四面楚歌」の語源となった故事で、項羽が虞美人に詠んだとされる「垓下の歌」である。
 相場は損切りが大事であるという事は、相場師が一番知っている。しかし相場師達が集う取引所が最も損切りが出来ないとは奈何せん。