昭和の風林史(昭和五八年四月十二日掲載分)

利食い千人力の輸大高値

小豆は近く値崩れしそう。輸大は煎れたあと押し目が入る。ゴムは高なぐれ後反落。

ゴム相場の仕手戦は末期段階に入っていると思う。

目先の高下は内部要因次第。手口と取り組みによって強くも見えたり弱くも見える。

しかし、産地シッパーの大量買い建について、表面現象のみ見ている人が多い。裏側の楽屋(がくや)事情がどうなのか。これは戦い長びくに伴って自然に洩れてくるものだ。

孫子は「その戦を用うるや勝つも久しければ兵を鈍らし鋭を挫き、城を攻むれば力屈す」と教えている。そして「諸侯その弊に乗じて起る。知者ありといえどもその後を能くすることあたわず」―と。

ものいわざるゴムの罫線が、すべてを物語っている。あれだけの逆ザヤが六限月横並びになった。相場はサヤに聞けともいう。

また一月からの上昇波動の初期、中期、そしていまの流れは明らかに、その相場の性格を示している。

いまの相場は、トレンドから、はずれぬよう努力している姿である。

人々はこれに幻惑される。

買い主力は買い玉回転の利食い金が買い増し玉の建玉となって、いつの場合でも仕手戦末期に、そうなってしまうお決まりコースにはまりつつある。

従って、このゴムは気配変わると急落する。

輸入大豆は、ひとまず煎れるものは煎れた。

自己玉も売り急減した。

目先的に押すべきところにきている。

基調がゆるむと利食い急ぎの売りが嵩む。また15日からの交易会を控えて新規思惑の売りも出る。

安値売り玉に難平を乗せるテクニカルな売りも出る。

しかし基調そのものは売りの段階に入っていないから、押し目買いの方針で対処すべきだろう。

小豆は相場に芯がない。下がらんと思っているとある日突然値崩れする。

●編集部註
 相場が膠着状態に陥った時、もう少しで局面が変わる寸前、ポジションの変更、早過ぎる利食い、ドテン、損切りをしてしまうのは何故なのか。
 誰も皆泰然自若と構えたい。しかし現実はいらん事しぃになっている。儲かる事、幸せになる事が怖いのかも知れない。これが、精神分析学者フロイトが提唱したタナトスというものなのか。
 古今東西変わらないのは、利食いが早く、損切りが出来ず、追証で耐えに耐え抜き、両建てに安住する姿勢である。