昭和の風林史(昭和五八年八月二十三日掲載分)

小豆は至極難解なところ

小豆は難解なところだ。強弱なしで様子を見ることにする。輸大は天井している。

難かしいと思えば難かしくなる。難かしいとは、やりにくいこと。判りにくいこと。

判らぬ時は手を出すなという。

判らぬ時に手を出さず、じっと見ているのが一番判りやすい。人間、判りやすいことだけやれて、判りにくいものは判らない―と割り切れる心境で過ごせたら、難かしい事はなにもなくなって楽だろう。

知恵の輪というのがある。無理にほどこうとしても絶対にはなれない。しかし道理に叶えば、無抵抗でほどける。相場が判らないのは無理に判ろうとするからである。多分そうだろうと思う。

小豆はどうなのか。判らない。判らん時は、判らんまま放っておく。

追いかければ追うほど捕まらん。追うのは徒労だ。

しばらく放っていると、相場様が自分の横に坐ってしきりにものを言いだす。

戻してよし。下げてよし。ジグザグするもよし。

取り組みがふえるのか減るのか。出来高が細るのかどうか。

ああだこうだと強弱が盛んになるところであろう。

止まったと見れば止まった。下が深いと見れば下は深い。上に大きいと見れば上は大きい。
だから判らん。困ったことであるが困らん。

輸大のほうはどうか。目先的には戻してよし。

戻したところはどうか。売るもよし。頭がダンゴになって、これを上抜くことは、なみたいていのことでない。

シカゴは二番天井を取りに急反騰するだろう。

その時の穀取輸大の反応程度を見ておれば、その後の相場のトレンドが判る。

トレンドと喧嘩するなという。

穀取輸大の先のほうの限月は頭から五百円ほど落ちる姿である。問題はその落ちかたの速度であろう。

●編集部註
 フィリピンでのアキノ氏暗殺のみならず、この頃、世界では血生臭い事件が起こっている。
 相場の新聞でこんな事をいうのは何だが、相場を張っている場合じゃない事態が起こっていた。
 9月1日、NYを出発した大韓航空機がアンカレッジ経由でソウルに向かう途中、管制レーダーから機影が消えた。
 消えた場所がサハリン沖であった事から、ソ連軍が関与していたのではないかという観測が流れたが、米国政府が「ソ連軍機が撃墜した」と発表し、まだ東西冷戦が続いていた国際情勢はこの時一気に緊張した。