昭和の風林史(昭和五九年三月十三日掲載分)

東京銀相場好買い場露呈

シカゴ大豆もNYコメックス銀も大底確認したあと、底値圏脱出のトレンドに乗った。

為替が落ち着いて、シカゴ大豆が順調回復なら、ダイレクトに東穀米産大豆相場が連動して判りやすい。

米産大豆(東穀)は発会した時の当先サヤは40円(逆ザヤ)だったが四月限は買われ、来年二月限は売られ一時は三九〇円の(逆ザヤ)に開いた。一般に、不作の83年産(10月限まで)は買い方針だが、今年生産される84年産(12、2月限)は売っておくポジション。

大衆筋は値が安く、しかも先のほうの長期限月を買うが、本当はその反対である―というのである。

しかし、不作だった83年産は確かに値を出すだろうが、今年五月第一週から播種する84年産も、割りを出すことにかわりない。

来月中旬ともなればコーンの播種期(大豆より一ヵ月早い)に入る。

そして大豆の作付け面積の予想が具体化するとともに今年の夏の天候について予測が立てられる。

目下のところ米国中西部の八月~十月は低温多雨の不順予想。昨年のような旱ばつはないという見通しであるが、これだけはその時にならないと判らない。

シカゴ相場は八㌦指呼の間に買われた。七㌦80あたり一ツの難所で、このあたりから押し目を入れる場所になると見ているのだが八㌦に乗せてから押すのかもしれない。

東京銀は高値81円90から7円80銭のきつい押し目を入れたあと、すぐに押した分の半値を買い切る勢いだった。
このように相場が生きている(若い)時は、仮りにこの辺で2円押しても3円押しても、押すことにより弾みがついて上昇トレンドの中を歩み続けるものだ。

NYコメックス銀の線型は連続陽線の週間棒で大底脱出中である。
大底した相場は天井するまで買いでよいのだ。

●編集部註
 その天井が判らないから迷うのではないか―。と言ってしまえば、身も蓋もない話になる。
 ただ経験則上言えるのは「自分はあの相場の天井をとった」と人前で吹聴するような人物がいたら、その人とは関わらない方が良いという事だけである。そおいう人は、恐らく嘘をついている。
 嘘でなかった場合、この手の人物は何処かで必ず相場で失敗する。将来くすぶるであろう人物と付き合うと、いつかどこかでそのくすぶりが我が身に降りかかる。
 世阿弥は風姿花伝の中で「秘すれば花」と書いた。能であれ、相場であれ、吹聴するような人物は「離見の見」が出来ていない証左である。