昭和の風林史(昭和五七年十一月十七日掲載分)

輸大買い方はしゃぎ過ぎ

相場は人気の裏を行くとはよくいった。はしゃぎ過ぎたら相場様は、向きを変える。

輸入大豆当限が中国大豆入荷のはしゃぎ過ぎの裏が出て船積み遅れ、カラ売り玉の煎れ上げ、新規思惑買いなどから棒立ちしたが、全般の商いはなぜか低調だ。

月初めT社筋の大量買い玉が輸大市場に入って大衆筋もこれに提灯をつけた。そのあと円高や中豆入荷を騒いで反落したが当限のカラ売り玉が締めあげられ、相場というもの、はしゃぎ過ぎたらアカンということを教えた。

これは小豆相場にもいえた。

三万一千円だ、三万一千五百円だ―とホクレンの価格政策や農水省の今期輸入枠操作を期待して強気は上ばかり見ていて足もとをすくわれた格好。

その小豆だが、今度は売り方が、はしゃぎ過ぎて安値を叩くと意外な反発がこよう。

見ていると値段は二万八千円割れに抵抗しだした。去年も11月19日に大底を入れている。

人気が急速に弱くなりだしたのが気になる。戻りは安心売りの空気がいけない。

これは輸入大豆についてもいえるだろう。

あれだけ弱かった輸大人気が、ここにきて、それはもう強気ばかりだ。

船積み遅れ、入船遅れ、玉不足、納会10月の二の舞い。渡し物ほとんどない、中豆の品質見直しなど、それはもう強気一色になった。

そうなると相場は皮肉にできているから買うだけ買わせ、煎れるだけ煎れさせ、買ったらしまい。煎れたらしまいとなるわけだ。

得意の時は謙虚たれ。失意の時は泰然たれ。これがなかなかできない。当たっている時は傲慢(ごうまん)。曲がった時は悄然。

小豆は戻しても、出直りには直結しない。輸大は、かなりきつい下げかたをするだろう。舞台は回り持ち。

●編集部註
 この日も風林火山の商品先物ブルースが流れる。
 そういえばこの頃、上田正樹の「悲しい色やね」がヒットしている。発売当初は売れなかったが、有線放送で火が付き、この頃には人口に膾炙している。それは、デビューから10年目であった。
 東京に居て、恵まれている点は幾数多あるが、渋谷や池袋など、都内に幾つも昔の映画を上映している映画館が存在している点は映画好きにはありがたい。旧作を、新作のように観る事が出来る。
 少し前、渡瀬恒彦の追悼特集で、「仁義なき戦い広島死闘篇」の同時上映であった73年の彼の主演作を観に行ったが、ある場面に歌手役で上田正樹が登場する。歌声で「あ、上田正樹だ」と判った。