昭和の風林史(昭和五七年十二月十一日掲載分)

全協連役員総辞職すべし

業界は一ツの節(ふし)目にきている。全協連役員は総懺悔、総辞職すべき時期。

騒然としていた。わけが判っての騒然と、わけが判らずの騒然が絡みあって師走相場のウズが巻く。

輸入大豆の大出来高。苦い顔の取引員とは対照的に穀取さんは出来高弾んでまずはなにより。しかしそれはおもてに出さずグッと渋い顔。

言いたい事が山ほどあって(ものいわざれば)腹ふくるる。腹ふくれて煮えくりたぎっている人が多い。一体この業界どうなってしまったのか。

架空名義使用は取引員信義則違反だ→過怠金とは恐れいった話である。

それもこれも、国会で言いわけできるよう、なにがなんでもT社玉を排除しようと必死になっての役所の圧力である。

みんなで違約は怖くないという風潮から、みんな揃って過怠金。更に、みんなで“営停”怖くないなどというけれど、これは一ツの時代の変わり目であることを知らなければならない。コミッションセールス店の微弱な体質。相場師店の淘汰。仕手機関店のあり方などが一連の事件を通して問われているわけだ。

表面的には小豆の六本木筋、桑名筋、生糸の角田、静岡筋。そしてこの一年を通してのT社のゴム、砂糖、生糸、小豆、大豆市場における動き。

解け合い、抜け解け合い、連続スクイズなど、業界はこの一年間、嵐の中に舵を失った船のようにただよった。その間、業界利益団体の全協連はなにをしてきたか。そこには見るべきものはなにもないではないか。この際、全協連役員は業界総懺悔、非力を反省して総辞職すべきである。

相場のほうは輸大の玉整理が終われば灰汁抜けで来年におけるスケールの大きな相場に期待が持てる。
小豆のほうも大底は確認できたようなもので上昇エネルギー蓄積待ちだった。

●編集部註
 モラルハザードというべきであろう。外務員試験の教科書に出て来る禁止行為が、この時分にバーゲンセールのようにやってきたら、さすがの風林火山も烈火の如く起こるのも当然、となる。
 その昔、高杉良が金融腐蝕列島という連作小説を書いていたが、その中の「呪縛」という作品が原田眞人監督で1999年に映画化された。上記の何とも言えない澱んだ「空気」は、存外この作品を観ると味わえると思う。20年前の作品だが、今でも面白く見る事が出来る。
 〝不朽の名作〟という程のものではないが、例えば「バック・トゥー・ザ・フューチャー」のパート2であったり、堺屋太一の小説「平成三十年」であったり、後々見返すと今の事を予言しているいるようでギョッとする作品というものがある。