昭和の風林史(昭和四八年六月十三日掲載分)

売り方は呆然 消えたレインボウ

天候と仕手要因を除去すれば先限一万四千五百円の小豆だが、大投機資金が介入すれば猛騰する。

「山桃の日陰と知らで通りけり 普羅」

売り玉という売り玉のほとんどが踏んでしまったあとだけに、利食いが出ないで通り抜けして下げた。

資力と気力で頑張ってきた売り玉も、まだ利食い圏にはほど遠い。

十月限で四千六百円あたり。九月限でも、やはりそのあたりに売り込んだ場所があって、もう一回のS安で、儲けにはならないが積んだ追証がほどける程度。

中国小豆の成約。大幅な増反。大量在庫。これらの相場要因を異常天候→遅霜被害予想と仕手要因で支えることが出来るかどうか。

S安、S安だから高値買い玉は投げられない。買いハナばかりかさみ、抽選、抽選で、下り特急列車が通り抜けていくような感じである。

三回目のストップ安は買ってみようという人も多い。強弱が大きくわかれるところだ。玉整理が早い目に出来ると見る。これで霜害でもあれば逆襲のSの字が〝つぶて〟となって飛ぶだろう。

常識論なら、天井打ち。仕手後退。成育順調。青田ほめ。高値取り組み。供給圧迫。従って戻り売りでよいとなる。白髪三千丈、もって憂を知る(愁いによってかくの如く長し)は李白の詩であるが、暴落三千丁。なんの支えるものなしか。

落ち着いたら売っておけばよいという考え方と、いや、買い玉を辛抱してみよう。冷夏というし、秋は早い。世界的に食糧は備蓄傾向にある。この暴落は天与の買い場だ。各地に大名、小名、群をなし投機の鬼と化す。

ひとつ場面が変われば、市場人気は豹変してしまうものである。また、どのような相場にも、それが仮に天井したとしても、大きなゆり返しがある。

三つ目のS安は買い場になると判断出来ぬことはない。売り方は、わが天下遂に来たると油断していると異常天候で、やられよう。

まあ、いろいろと考えることは多い。筆者は強烈な買い物が入れば下げ幅の三分の二は反騰出来ると思うが、そこは売り場になるのではないか。それとどこまで下げるかの問題。仕手要因がなければ、もとより先限一万四千五百円までドカ貧のあとジリ貧であろう。

●編集部註
こういう場面で動ける人物は、バカか勇者かのどちらかであって、素人か玄人かの差ではない。 

クリック一つで注文出来る今でさえ慄くのだ。昔はもっと怖いはずだ。

【昭和四八年六月十二日小豆十一月限大阪一万八〇二〇円・六七〇円高/東京一万八〇一〇円・五〇〇円高】