昭和の風林史(昭和四八年六月三十日掲載分)

新値抜け買い 売り方総踏みへ

ゆとり充分という買い方である。新値抜けから二万円相場。目をつぶって高値を買うところか。

「島庁や訴人もなくて花芭蕉 草城」

道農産部の発表した作付け面積は小豆六万九千三百ヘクタール、菜豆四万二千七百ヘクタールであった。小豆は四%増、菜豆は一〇%減。

米国の大豆、綿花の船積みストップ(穀物類の輸出制限)が小豆相場にも影響した感じである。

作付け面積のほうは市場の予想していた六万八千ヘクタールないし七万三千ヘクタールという見通しからすれば妥当なところかもしれない。

市場の噂では、主力買い方は上値、上値を買い上げていく方針で新ポ十二月限でサヤを買えば新高値に充分挑戦できる。結局二万円という値段が付くだろうという。

東穀の実施する長期早渡し制度が、どの程度相場に影響するか注目される。

産地の天候のほうは、今のところ、まずまず順調である。石見沢測候所の天谷所長は朝日新聞(23日)道央版で「冷夏予報はおかしい。今年は平年並みだ」―と北海道の異常気象予報を批判している。「いまの予報は、はずれるのを怖がってワクを広げすぎる」―と。

29日は安いところを売った玉が踏まされた。踏みに向かって買い方陣は大量に利食った。

利食いした手は、安ければまた買ってくるだろう。

新値抜けからは青天井二万五千円も相場という見方だが、新規買いは、やはり躊躇する。それだけに上値が残っているのかもしれない。

これで七月の天候が冷雨とか日照不足なら確かに総踏み場面となろう。

買い方にすれば、今年が仮りに平年作でも来年は凶作年だから買えるという考え方である。

まさしくもう力相場である。S高をつけるとうるさいから一文ずつ値を抑える。それが結構利食いになる。そしてすべてが買い方に味方するように都合よく硬材料が相場の急所、急所で出現する。弱気は、もはやなにも言う言葉もない。

手亡に比較して小豆の割安観。そして次は小豆に比較して手亡の割安観。手亡がぬるいように見えるからと、これを売れば目から光が飛ぶのは見えている。しばらくは手が出ない相場。そして足が出る。冴えない顔のなんと多いことであろうか。

●編集部注
 この動きこそ、穀物相場の醍醐味であり、同時に恐ろしさでもある。

 今も昔も変わらない。その凄さと怖さを、我々はここ数日の穀物相場の動きで充分味わっている。 

 逡巡が命取りとなる。

【昭和四八年六月二九日小豆十一月限大阪一万八〇一〇円・五九〇円高/東京一万八二五〇円・六九〇円高】