昭和の風林史(昭和四八年五月十二日掲載分)

S高もあろう 売り方踏む準備

あなどり難い足取りである。大きく見ると半値戻しの地点で足固めを終わったところである。

「打ち晴れし神田祭の夜空かな 虚子」

12日(土曜)群馬、長野、山梨の各地に降霜があった。いわゆる東北養蚕地である。

また埼玉県の秩父測候所は最低気温一・五度を記録し降霜を見た。同測候所では五月10日過ぎに霜が降りたのは昭和三十三年以来十五年ぶりとの事。

横浜生糸市場はストップ高を付けた。霜による桑の被害は各地で調査中。

小豆相場は不順な天候を肌に感じて上伸した。

すでに今年の異常天候は万人承知である。北海道の冷害予想は、かなり浸透しているようで、在庫が豊富でも、押し目幅を一気にはね返すあたり、この小豆相場は、あきらかに天候相場の色彩を強くしている。

予報では北海道帯広地方は週明け月曜、火曜とかなりの冷え込みが予想されている。

いまのところ産地に霜が降りても被害は出ないが、心理面に与える影響は無視できない。

相場は人気作用によって高下する。人気は、おうおう行き過ぎるものである。

小豆相場の趨勢を眺めると、三月10日の高値に対して半値戻し。そこで足踏みして、値固めのための初押しを入れた。しかし、それも、たった二日で、ほぼ押し目幅の全値を戻した。

なんと強い相場であろうか。今週の産地の天候次第で、押し目幅の倍返し、四千三、四百円は、時にS高で取りに行くかもしれない。

こうなってくると売り方も、たまらない。当初四月14日の安値地点からたかだか千円戻しぐらいに甘く見ていた相場が、二千六百円を棒立ちしたのだから残念ながら考え方を改めざるを得ない。

しかも連休明けての7・8・9日の相場を叩き込んだ。まさしく中段の絵に書いたような押し目、竹の節(ふし)をつくって、売り方は売り方自らの手で相場を強いものにしてしまったのである。

天候相場としてはまだ席についたばかりで食前酒がつがれたところ。スープも、バターも、パンもまだ出ていない。肉料理が出て魚料理が続いて、サラダが並べられ、デザートまでにはゆっくりと時間がある。まだ料理を見ぬうちからのどをつまらせていては、冥加に悪いしお行儀もよくないのである。

●編集部注
 酒場で主に窘められた。

 土曜休校が当たり前の若い子達に〝半ドン〟という言葉は通じないよと。

 昭和も遠くなりにけり。

【昭和四八年五月十二日小豆十月限大阪一万三四八〇円・三三〇円高/東京一万三四九〇円・三一〇円高】