昭和の風林史(昭和四八年二月八日掲載分)

大幅安は歓迎 相場が若がえる

下げる時は思い切り下げさせる。小細工は身の破滅。日柄経過の小豆、一度大下げすべし。

「猫柳水光りつつ暮れにけり 北湖」

小豆相場に対しての総体的な考え方、いわゆる人気というものは、要約すると次のようなものだ。

①うかつには売れない。
桑名の有力な買い方が、軍を展開すれば、これに尨大なちょうちんもつくし、また買い本尊に近い親衛隊も強力な戦力を有している。いうならピカピカの手つかずの機甲師団が進出してこよう。

これには勝てない。

②さりとて一万三千五百円以上を買っていくには一万五千円を目標にしなければ妙味がない。

③まず買って、それから安ければ買い下がり方針。

④安値を売って高値で踏んだ人は、阿呆らしくて…という気持ちがある。

⑤踏まずに、安いところを売ったまま、ウンウンいいながら辛抱していた向き。ゆるんだところでナンピン売りをかけてみたいが怖い。あるいは資金面の都合がある。

⑥さしもの相場も騰勢鈍化、線も暴落型、値段としても今の時点では充分である、と知りつつも、桑名の存在があまりにも大きかったため売りきれなかった。

⑦当ててきた筋は、利食い売りしては買い、買っては利食いの回転レシーブで現在買い値水準は高いものになっている。玉もふくれているはず。

さて、こう見てくると、市場全般は、ほぼ強気になってしまったようだ。

売るのが怖い―と思うのが、そもそも強くなっている証拠である。

人気も相場も強いときは必ず強い材料が目につく。

大垣の大石吉六氏に言わせれば、桑名は決して強引なことをしない。桑名の相場師自身も①長期方針②天候に勝負③煽ったり叩いたりはしない④無理はしない―と言う。

あのままだと相場は大材料が出るまで高水準で膠着していただろう。しかし、相場は日柄を一日過ぎれば一日食う。

強気増大→日柄経過→高水準とくれば、必ず下値を取りにくる。
その時、桑名筋やピカピカの機甲師団が出撃してくれば、これは相場をこじらせて、一時的な効果はあっても後でその無理がたたる。

下げる時は下げさせてしまうのがよい。

●編集部注
昨日の強気は今日の弱気。相場は恐怖と欲の戦い。ガンガンの強気を唱えても、ちょっとした押しで逃げてしまう。恐怖が勝る瞬間である。

1973年の小豆相場は恐怖に耐え、信念を貫いた相場師しか勝てない。夏から秋にかけてこの市場は死屍累々と化す。

【昭和四八年二月七日小豆七月限一万三一六〇円・一四〇円安/東京一万三二五〇円・八〇円安】