昭和の風林史(昭和四八年二月二十二日掲載分)

業界反省の時期 前途はきわめて多難

田中内閣は、わが商品業界を峻烈な目で見るだろう。業界の前途はきわめて厳しいものとなる。

「俗用にのびたる髪や水温む 万太郎」

一番怖いのは社会全般から〝インフレを助長しているのは商品取引所である〟と見られることである。

商品取引所とインフレとは、なんの関係もないのであるが、取引所当局者及び理事会の〝取引所運営〟のまずさ、幼稚さ、そして時代感覚の大きなズレによって、世論は、あたかも商品取引所があるために物価が高くなるというふうに受け取りがちである。

早い話が大豊作であった小豆。しかも品物はきわめて豊富な小豆が、巨大な投機家の介在によって、まさしく狂気の沙汰の狂騰を演じてきたことは、一に当穀取業界のキャパシティと介入した投機資金とが、あまりにも開きすぎたためである。

その時、穀物取引所は本来の機能が破壊され単なるポーカーテーブルの上のカードのやりとりの場としてしか社会の目に映らず、その弊害は顕著となった。

先にわが穀取業界は輸入大豆暴騰に関して田中総理の閣議での〝見当違いな批判〟を受けたが、今回の『大豊作であり、品物も豊富なのに小豆相場が暴騰するのは、取引所市場における投機家の、行きすぎた思惑である』―と指摘されても、これは、まさしくその通りであるから、取引所当局の運営のまずさと穀取業界の危機に対する鈍感さが、あらぬ誤解をまねいて社会的に商品取引所はインフレ助長の場であり、社会の敵である―と指弾されてもいたしかたない。

取引員業者は、目先的には商い高増大で経営面は楽観出来ても、社会からは再び『商品業界は―』と攻撃された時、三年前の攻撃とは異質で前回の問題よりは次元が高いけれど、わが商品業界の前途は再び厳しいものとなろう。

それが閣議で総理の〝取引所閉鎖も―〟という極論となっては、田中内閣の、わが商品業界に対するものの見方は俄然冷たく峻烈なものとなり、当然関係監督官庁の業界に対する圧力もかつてなかった厳しいものとなる事は火を見るよりも明らかである。然るに、わが穀取業界はこの異常なる事態を、さほど敏感には感じず、嵐が過ぎ去れば―という軽い気持ちの人が多い事は、実になげかわしいのである。

●編集部注
大概、金持ちは嫉妬と怨嗟の対象になる。それは今も昔も変わらない。

一頃流行った〝嫌儲〟という言葉は行動しない人間の僻み。鉄火場で行動して利を手にした人間には、それがわからない。

【昭和四八年二月二一日小豆七月限大阪一万四一一〇円・三一〇円高/東京一万四〇九〇円・二八〇円高】