昭和の風林史(昭和四八年二月二十一日掲載分)

業界共同の敵 市場閉鎖なれば

巨大でニヒルな小豆買い仕手は業界共同の敵にならぬよう良識をもって事態を収拾すべきである。

「葉のゆだる湯の湧口や春の雨 一茶」

田中総理は20日の閣議で過熱する商品相場について『このまま推移すれば市場閉鎖も考えざるを得ない』と強く批判した。

総理は農林、通産両相に根本的な市場対策の検討を指示した。また行きすぎた投機について蔵相に過剰資金の吸収対策を早急に講ずるよう指示した。

田中総理は目にあまる商品相場の投機熱を抑制するよう農林、通産両大臣に、きつく申し渡しただろうし、両大臣は役所に飛んで帰って関係局長に厳しく申し渡し、局長は課長に、課長は各取引所に、そして各取引所は目立つ建て玉の取引員に―と警告の輪は拡大していく。

小豆のタナ上げの放出、大型の外貨発券、雑豆の自由化、小豆などの緊急輸入。そういう問題が、総理のお声がかりでピシピシ決断され実行されることも充分に考えられるし、取引所に対しては、穀取に限らず全商品取引所の一時閉鎖が政治的配慮により指令されるかもしれない。

思えば過激な投機資金が暴力的に各取引所に介在、そして取引所当局者の運営のまずさもあって最悪の段階まで来た。

いま、小豆相場のみを考えてみても巨大でニヒルな投機家が先限、先限を強引に買い煽り、その占める力が穀物市場のキャパシティを上回り、取引所機能は、あきらかにいびつになっていた。

これを放置すれば現物が豊富にありながら、そのヘッジ玉は〝場勘〟で攻められ、しかも天候相場に〝なだれ〟込んで買い方は市場も破壊せんばかりに玉操作と価格操作を展開すれば、明らかに穀取市場は壊滅してしまう。

巨大でニヒルな投機家は、いうなればコストゼロの、まさしく無頼漢の如き知性なき資金をもって、社会秩序を破壊し、穀取業界をぶっ潰しにかかっているとしか思えない。

この時、業界は、業界共同の敵に対し『①業界の秩序を破壊せぬよう②ほどほどに、しかも③良識をもって対処してもらうよう』要望し、それを聞かねば、その時こそ取引所理事長権限で、粛正せねばならない。穀取業界もきわめて異常なる事態に直面しているのだ。

●編集部註
 警鐘虚しく、この世界はぶっ潰れた。現在、この当時の華やかさはない。

 誰であれ、市場を人為的に弄ろうとすると、必ずその咎めを受ける。

 日本は江戸時代から先物市場があった。英知は蓄積されてなかったのか。

【昭和四八年二月二十日小豆七月限大阪一万三八〇〇円・五九〇円安/東京一万三八一〇円・五九〇円安】