昭和の風林史(昭和四八年九月十八日掲載分)

S安怖くない 鉄壁彼岸底形成

一万一千五百円中心のゆさぶりは底値鍛錬となり彼岸底を構成すれば大きく直っていくだろう。

「露の香にしんじつ赤き曼珠沙華 蛇笏」

土曜、日曜と二日続けて休んだ明けの月曜日はブラック・マンディ―黒い月曜日となる。相場に、おかしな癖がついたものだ。

九月一日現在、農林省調べ北海道小豆の収穫予想は一九三万俵。大豊作だ。

月曜の寄り付きのストップ安はこの数字を嫌気したもので、二、三節の反発は手亡の相場の堅さをみて新規買いと利食いの買戻しで硬化した。

見ているとS高かS安が毎日のように付く。

これは高値の一万八千円圏でもやってきた相場の大転換期前の波乱であって、人気面の気迷いと警戒心の現われで付和雷同していることがよく判る。

しかし一見チャブつき型であるが、こういう事をしながら相場は大底を構成していくのである。

上昇するには、まだまだ力が足りない。しかしここからなお下げ続けるには値段、値ごろの抵抗がある。

上にも、下にも行けない相場でありながら相場に生命力があるため、同じ圏内でストップ高したりストップ安したりするのである。

このことは、玄人による玄人の相場といえるかもしれない。大衆は過般の下げ相場で、ほとんど戦死した。もとより玄人も大きな損害を受けた。

しかし素人と玄人の違いは、相場で損したらとっとと相場から離れてしまうのと、相場の損はあくまで相場で取り戻そうとする―その違いで、今の相場は損した玄人筋が組織的な戦闘ではなく、ゲリラ的出没の、いうなら銃も砲も弾丸も無ければ司令部も陣地も失い、ゴボウ剣一丁で生きるための殴り込みである。

安値は九月11日十五夜底である。このあたりは二番底の買い場になる。

高値は先限で一万二千三、五百円まである。

従って一万一千五百円中心の上下千円圏での逆張りだ。この動きを、押したり突いたりしながら大底を固める―という。

もちろん大勢的には買い方針でよいと思う。

幸い23日の今度の日曜日は休日と重なって24日の来週の月曜日は休日になる。ブラックマンディはあり得ない。時は秋の彼岸。昔から言う彼岸底型である。ストップ安は買い場と思えばよい。

●編集部注
 こういう場面はなまじ知識がある分、玄人はなかなか動けないものだ。

【昭和四八年九月十七日小豆二月限大阪一万一五三〇円・一五〇円安/東京一万一六三〇円・一六〇円安】