昭和の風林史(昭和四八年一月十三日掲載分)

凄惨大暴落へ 音たてて崩れん

小豆相場の先は見えた。先限一万円割れは早い。音を立てて崩れよう。買うだけ買った相場だ。

「寒雀枝移りしてふくらみぬ 芳草」

穀物相場では買い方主力の今後の作戦について、見てきたように言う。押し目を入れて、結局一万二千円を付ける。問題は一万二千円を付けてからどうするかである―と。大阪阿波座は非常に強い。大勢一万五千円を言う人もある。人気とは実に恐ろしいと思う。

昨年の一月12日、あの大下げ相場がカチーンと止まって二月12日まで四千円幅を棒立ちした。あれからもう一年過ぎた。

二月12日・一六九三〇円この値を頭にして九月19日・七七五〇円まで実に九一八〇円安。

その相場が三分の一戻しで三千円高、ちょうど今の水準がそれである。

一月11日。東京では土井商事千七百八十枚。大阪大石千二百円二十七枚。名古屋大石七百四十枚、合計三千七百枚前後を買い方仕手は利食いに出た。

市場人気は、きわめて強くなったけれど、ようやくこの小豆相場も、いいところに来たようだ。

一万二千円必至で、この水準を思いきり買いつけば消費地に現物が集中しつつある時だけに、惨落は目をおおうばかりであろう。

誰も彼もが本当に強くなった。それだけに強気する材料を並べようと思えば幾らでもその辺にある。いやなにもかもが強材料に見えてくるのである。

こういう時こそ気をつけなければならない。

雑豆の自由化問題も決して楽観出来ない。時間的に少し遅れるだけでまたどこかで突然、現実化しよう。

よく吠える犬は怖くない。買い主力は、まるで一犬形に吠え万犬声に吠ゆという格好である。一匹狂えば千匹狂う―とも言う。

皆が狂っている間はこれに逆らえない。なぜなら群集心理は時の勢いだから行くところまで行き、そして行き過ぎる。行き過ぎには反動が必ずつきものだ。

一月11日。各限小豆日足線は暴落線を示した。

一月12日、この線も売り線を示している。

崩れて九千八百円までは早い。白駒の隙を過ぐるが如きであろう。

左様。商社の戦うや積水を千仭び谿に決するが如きもの、形なり。

叩き売れ。相場は暴落する。インフレ買いが怖くて相場出来るかい。

●編集部注
 風林火山は相場師也。

 相場師は大儲け狙い也。

 そして大儲けとは、百人中、九十九人が買いと見ている相場に、悠然果敢に売り向かう事也。

【昭和四八年一月十二日小豆六月限大阪一万〇八四〇円・一〇〇円高/東京一万〇八〇〇円・一一〇円高】