昭和の風林史(昭和四七年十一月十六日掲載分)

一時的な現象 値が荷を呼ぼう

ズンズン高くなる相場とは思えない。売り場待ちの人たちがこれから売ってくるだろう。

「山茶花の長き盛りのはじまりぬ 風生」

出回り遅れから輸入小豆が刺激され、定期相場は放れた。

これで市場人気は非常に強くなった。

30万俵の棚上げ。貨車繰り難による出回り遅れ。年間最大の需要期入り。輸入小豆の値上がり。交易会終わる。仕手がかった買い玉が潜行。

九千五百円→七百円→時によっては踏み上げで一万円。そういう人気だ。

それにしても八千五百円は大底という市場全体の空気は、安ければ買い下がればよい―という安心した相場になっていて、大衆筋は、すすめられるままに買ってくるようだ。

しかし、交易会で一万㌧ないし一万二千㌧の成約が出来た様子だし、あと北京商談、常時商談というぐあいに、むこうは幾らでも売り応じる模様だし、台湾、韓国産も値段によっては輸入されよう。

問題は輸入される時期が一、二月。あるいは二、三月と先に行っての事だから、いま、この相場を抑える材料にはならないというふうに受け取りやすい。

ところが、その考え方には落し穴があって、成約した中国小豆は、取引所相場の高騰に伴って、ヘッジされるであろう。先物市場本来の姿は、いま現物が無くても将来現物を手にした時、価格の下落という危険を防止するため、ヘッジ(保険つなぎ)をするにある。

30万俵棚上げのホクレンにしても定期市場へのヘッジは当然行なうだろう。

相場高騰は、恐らく一時的なものであろう。

期近限月の八千五百円以下の売り玉の踏み。それと新規の思惑買い。
それらが燃え尽くせば、供給の絶対量は豊富な年だけに、いずれ俵の重さがのしかかってくる。

熱くなって、強い場面を売り向かうことはないが、長い時間を考えて、計算された売り上がり方針がわかりやすいように思う。

ここからの上値の急所は九千三百円。五百円。七百円。

手亡相場のほうは手がかり材料難。

今の値段が調和のとれた居心地よいところらしい。一月限など七千円のラインをジグザグ縫って、七千二、三百円売り、六千八百円以下買いという小幅の逆張り。大きな損もしないが妙味もそれだけ薄い。

●編集部注
 大相場となるには、それ相応の反対玉が存在する事が絶対条件である。

【昭和四七年十一月十五日小豆四月限大阪九四〇〇円・一六〇円高/東京九四五〇円・二一〇円高】