昭和の風林史(昭和四七年十一月六日掲載分)

目先的に重い 九千円近辺売り

八千円と九千円の間でのジグザグ型。小豆の九千円近いところは判りやすい売り場である。

「初冬の萩も芒もたばねけり 子規」

明日はもう、立冬である。十一月二日は一の酉。個人タクシーの老いた運転手が『子供の時分、一の酉といえば、もう寒かった。今は随分暖かいです』と言う。

酉の市の立つ大鷲神社は所所にあるが浅草の大鷲神社が最も華やかで、水天宮のところから神部茂氏の新東物産に行く左手の路地にもあって、人形町商店街はなんとなくその日は雰囲気が出る。

東穀の(中国)輸入小豆相場が連日ストップ高をしたと思うと、次はS安で荒れている。玉がまだまだ片寄って、一般投機家はわけが判らず、見ていてもサイコロを投げているようなものだ。十月新ポを御祝儀商いで買った玉を投げさされ、それから立ち直ってS高→S安。もう少し日数を経過しないことには、なじみがつかない。

小豆は大阪で大石、卸、広田などの買い手口が目立って、市場では板崎某が小豆に〝魔の手〟をのばしてきたのではないか?と注目している。

選挙用にホクレンなども北海道豆作生産者に、ほどのよい事を宣伝する。50万俵棚上げするなどと。市場に流れる無責任な情報は、眉にツバつけながらも一時的には響いたりする。

八千五百円が頑強だった。しかし九千円どころは、さすが抵抗があって買いにくい。

すでに悪材料のすべては織り込み済みとはいうものの、供給量が、豊富だから八千五百円以下に下げきれなくても、上げる事は難事だ。

山大商事の壁に張ってある百円電光足の小豆ケイ線を見ると、三月から六月にかけて一万円と一万三千円の〝中段のモミ〟が二千円幅でジグザグしている。それが今は〝大底圏〟での八千円と九千円の千円幅でのジグザグ型。

山梨の壁のケイ線も投資日報編集局のケイ線もすべて引線の種類は違っていても姿は同じで、同じ線型を見ながら、片や強気、片や弱気になったりするところがケイ線の魅力である。

〔陽立ち〕〔孕み〕〔冠せ〕。どうだろう日足三本の格好は。今週は安いと見るのである。四月限の九千円どころは目先的に売り場であるし、この売りはなんら不安でない。強い材料を囃したあとは弱い材料が出る。

●編集部注
この年、米国は大統領選。この週は投票週。

共和党はニクソン。民主党はマクガバン。結果はニクソンの大勝。ただ、この時の選挙陣営の行動が後に大きな仇となる。

【昭和四七年十一月四日小豆四月限大阪八九三〇円・二〇円安/東京八八一〇円・六〇円安】