昭和の風林史(昭和四七年十一月七日掲載分)

一時的な硬直 すかさず売られ

小豆の九千円どころは非常に判りやすい売り場である。手亡は拾うつもりで安値を待つ。

「浪浪のふるさとみちも初冬かな 蛇笏」

売っている間は下がらないもので、買い戻すと、とたんに安いのが相場である。

まるで人のポケットの中身をお見通しである。

株式相場でも、やっと利食いできたと思うや、とたんにスルスルと値段が伸びて、残念残念、もう少し持っておけばよかったという事になるが、持っているとさっぱり上がらない。

小豆相場が交易会で八千㌧ないし一万㌧も契約出来たというのに崩れないという事は①北海道小豆の出回りが遅れている②農家が売り渋る③人気的にやや売り込んだ―。

いうなら目先的な〝事象〟による小じっかり相場。時間の経過に伴って、いずれ先に行って北海道も売ってくる。輸入品もはいる。

相場観としては八千五百円以下は大底圏だから買い下がっていけば、来春三、四月ごろには①作付け面積の減少②未知数の天候を材料にする。従って投機資金が小豆相場に介入してこようとの淡い期待がある。

だが、サヤがついている相場は、あまり期待するわけにはいかん。需給面も過剰気味である。九千円を買って、九千五百円なら手ぐすね引いて売り場を狙っている産地がドッとヘッジするだろう。

いや、その前に輸入商社がすかさずヘッジする。相場が高いという事はいい事であるが、品物の薄い年ならいざ知らず、およそ二百万俵の供給量がある時に、理想買いは、一時的なものに終わろう。

小豆は売り上がっていけばよいのだ。

さて、手亡のほうだが、手亡は安いところを買うのがコツで、ピービーンズの成約ニュースなど流れて下げたあたりを拾う。
手亡の相場は決して追いかけては取れない。

高値掴みになったり、安値売り込みになる。玉がひっかかったり、もつれたりすると、ほどくのに難儀するわけだ。

ともあれ十一月などという月はアッという間に過ぎて、気がつくと師走の風が足元を吹き抜けている。

年末一発勝負などと思っても、その時分には、もう手遅れだ。

ここのところは九千円どころの小豆を売っておくのが最も判りやすい方法だと思う。

●編集部注
相場は十月の抵抗を引け値で上抜けた。これをダマシと見たのであろう。

【昭和四七年十一月六日小豆四月限大阪九二五〇円・三二〇円高/東京九二〇〇円・三九〇円高】