昭和の風林史(昭和五四年十二月四日掲載分)

2週間が勝負だ 穀物市場に期待感

小豆も期待感を持たせる市場になりつつある。輸入大豆は押す事により、上昇力をつけている。

「来る人に我は行く人慈善鍋 虚子」

12月は、3日新ポ。9月が同じように3日新ポだった。この時の小豆相場は21日に下げ止まって反騰に転じた。

目下のところ、小豆は、11月20日に底入れして上昇帯に乗っている。

穀物を主とする取引員業者にとっては、ここ2週間が営業の勝負どころ。

小豆が、上昇してくれる事は、古い言葉で言えば、天祐(てんゆう)である。

下げるだけ下げて、悪材料を相場が織り込めば、どのような相場でも底が入る。

思えば8月7日、アンドロメダ三万六千円が値段ではなく作付面積である事を相場は知り、天井した。

以来、11月20日まで、下げるためにあるような相場が続いた。

その間、国際商品は海外市況の高騰と円安に影響されて人気を集めたが、小豆は、二年続きの豊作とホクレン主導の市場で、大衆は離れた。

いま、この小豆相場が、仮りに人気を集めて高くても、二万五千円以上という期待感はない。

しかし、三千円割れは、売っても駄目だ―という、下値の目途が出来た。

この事は、小豆市場に期待感を持たせる。

『小豆は駄目だ』と言いながら、小豆以外の相場に手を出さない投機家は、存外に多い。そういう人たちにも市場は、ささやかな、お歳暮―(相場に期待感をもたせる)を贈る事はよい事である。

幸いな事に、輸入大豆市場が、よく出来ている。

押すことにより新値を買う力をつけている。大阪市場の輸大自社玉は圧倒的に買いが多い。東京市場も、大勢には逆らえず自社玉売りが減少しつつある。

大衆投機家は、どちらかと言えば、関東は、積極買いであった。

逆に、半玄人の多い関西は、輸大とは売るものなりの観念が強かった。

これは、取引員会社の営業システムの違いによる。

国際商品は、強力な(情報力、資力を持つ)インポーターが市場に介入しているから、投機家が大勢判断さえ過らなければ、好成績を挙げる事が出来る。この場合、機械的自動的システムによる自社玉は、リスク負担を大きくする。

自社玉には、もとより各種の性格を有する。自社のリスクによる投機と、組織営業の上に組み込まれた逆ポジションである。輸大は後者が破綻しかけている。

●編集部註
自社玉―。自己玉ともいうが懐かしい響きだ。

PCがまだまだ高価だった新入社員の頃、早くに出社して、ノートに毎日記録させられた。