昭和の風林史(昭和五四年十二月十一日掲載分)

六月崩し再現へ 激水の疾き石漂わす

輸大相場は六月のパニックの時のような下げになりそうだ。先限四千五百円か。激水の疾きである。

「冬の山低きところや法隆寺 虚子」

円相場は週明け大暴騰した。相場の基調が大転換したと見なければならない。

輸入大豆相場は、泣く子と地頭には勝てないと言うけれど、シカゴと為替相場に勝てない。

輸大の取組みは、五千円台で相当買われた。

安いところを売っていた人達は、高値で踏んでドテン買いになったり、踏まないまでも両建にした。

それが、三日新ポ天井して、アッという間の下げだけに、ポジション修正の間がなかった。

取引員大豆の自己玉は、東京市場の売りが急増、買い減少である。(枚)

売り      買い
30日  六、六一一   三、八七二
5日  六、八四六   四、三二一
6日  七、八六二   三、七四一
7日  八、四八九   三、〇一一

大阪は東京ほど目立った変化はないが、それでも売りが増える傾向。(枚)

売り      買い
30日  二、七二一   四、七一四
5日  三、二四五   四、七七八
6日  三、三三六   四、七七九
7日  三、四四二   四、八七三

これを言えば、東京は売り上がって辛抱した甲斐があった。大阪は、高値で玉がふえて捕まった格好である。

円相場は、朝寄り39円90銭が、32円50銭まで急騰した。一種のパニックだ。

輸大相場はS安した。

上昇に、日柄を食っているだけに、相場としては半値地点(当限=大阪四千七百円)は素通りしての崩れになる。S安だから投げものがはまらない。

こういう時に、取引員自己玉が売りになっているところは、顧客筋の投げに対して(玉が場ではまらなければ)合わせてくれるところもあるから、自己玉はパニック時に機能するという理論も成立する。

しかし、自己玉は、その推移を見ておれば判るけれどS安パニックでも左程に減らない。顧客が投げに行っているのに玉がはまらない―という声をよく聞くのである。

さて、問題は、円がどこまで上昇するか。昨日御紹介した坂倉省吾教授は、来年夏頃百八十六円という見方である。
大勢としては、この見方を参考にすればよいだろう。

市場内部要因と線型から言えば、今の輸大は、大天井した。投げが投げ尽すまでは安いだろう。

東京自己玉売りが減少し、大阪自己玉買いが減少する時点を、一ツのポイントと見ておけば判りやすい。

●編集部註
「先限四千五百円か」とあるが、この年の国家公務員の賞与は四十七万七千五百円。
大卒銀行員の初任給が九万八千円であった頃の話である。