昭和の風林史(昭和五四年八月八日掲載分)

無抵抗圏内へ 作柄ズカズ力悪い

乗り遅れた人が多い。相場様は先をお急ぎだ。今から飛び乗っても充分間にあう。

「秋立つや籔下刈りも昨日今日 杜羊子」

本日立秋。小豆相場は当限が、その一代棒で三分の二戻しを達成した。

先限の引き継ぎ線は新高値に躍進した。

小豆市場で心の晴晴しない人たちにとっては、あれよ、あれよという間にこんな値段になっていた。

相場様が、先をお急ぎになっている。

強気している人にとってさえ、うっかりしていると買い玉が取られている

(利食いしている)。

非常にテンポの早い相場である。

北海道の作柄のほうは土用に入って以来、ガーンと照りつけるところがなかったため、収穫予想は不良になろうとしている。

あと、秋が早い予報だけに、低温→長雨→早霜という、冷害・凶作決定的な場面に突入していくだろう。

相場のほうは、これはもう理くつなしである。

弱気の病気がなおらない人にとっては、釈然としない。そんな馬鹿な―という考えがどこかにある。また今に見ておれ大暴落があるさ―という負けおしみも強い。それらがミックスされて意地になる。

仕手が煽っているわけでない。だけに強気にすれば判りやすい相場だ。

飛んで跳んで窓あけて、踏んで踏んで腹立てて、アンドロメダ三万六千円相場である。

取組みは漸増傾向である。逆ウォッチの線ではどこを買ってもよいし、買い、また買うところだ。
弱気は、こんなところを―と思うが、それは一種の値頃感である。また、深押しがあるだろうと思うのは、はかない期待感である。売りたい病気にかかったら、なんともならん。

もの事は、ひとつケチがついたら、とことんあかん。今年の作柄など出足から変だった。去年、よすぎた反動である。

与謝蕪村の句に、「秋たつや何におどろく陰陽師」というのがある。まさしく今の小豆弱気の図である。

どこを買ってもよいと思う。相場は相場に聞けである。

ひと昔前の、冷害凶作年の小豆ケイ線を参考にすれば判りやすい。

それにしても、カラーッと強気になりきれない市場である。それだけに、ますます相場は大きくなる。

いま弱気筋が頭の中で考えている場面は、三万円に乗せてからになるだろう。それまでには、なお三千丁の上値を、ゆっくり残している。

●編集部註

「アンドロメダ」という言葉が、このところ頻繁に文中に入っている。

この年の夏、東映は宇宙戦艦ヤマトと銀河鉄道999の映画版を公開していた。

後者の主題歌はゴダイゴが歌っていた、今でも耳にするあの曲だ。