昭和の風林史(昭和五八年十月三十一日掲載分)

小豆先のほう絶好売り場

小豆前二本は煎れ出尽くせばそれまで。先三本来月の下げを狙って売りが本命。

小豆買い方強気は『七月、八月に三万六千円~八千円があってもよい相場を抑えつけた。その生命力が残っていて、いま蘇った』―。

あの時は、たしかに凶作相場をホクレンや役所が、よってたかって抑えつけた。

世の中には辛抱のよい人もいて11限の天井掴み玉が奇跡的に助かった。

とりあえず新甫に向かって煎れ先行であるが、期近高に刺激されて先の方の限月が買われた所はやはり売り場である。

できうれば三~四月限あたり三万二千円台に買われてくれれば申し分のない売り場になりこの売り玉が年末に向かっての楽しみ。

来月も中頃あたりから現物の年末需要も一巡する。輸入小豆も市中に出回ってくる。また東穀で10月納会受けた筋あたりが、倉敷料に嫌気してくる時分である。

お酒の樽の上から一杯一杯盗み酒するのは怖くないという。何故ならお酒が減っているのが目に見えるからだ。怖いのは樽の底から一滴一滴漏れるのが一番怖い。気がつかぬ間に空になってしまう。

定期で引かされた玉を意地で受けて、倉敷料を払ってゆくことは樽の底からお酒が漏れるようなものだ。

輸入大豆の方は先限五千二百~三百円あたりまで戻してほしい所。

期近は小千丁をズンべラ棒に下げて大衆玉は殆ど投げ終わった。

シカゴは八㌦の抵抗をほんの少しやるだろう。しかし、まだ下げのトレンドの中だ。穀取も戻り一杯の、その時の様子を見たいところ。

●編集部註
 東京一般大豆のチャートが、既にご臨終を迎えた方の心電図の如き線形になっている令和の秋に今回の文章を読むと、先限だけでなく、各限月ごとにひと勝負もふた勝負も出来るというのは実にうらやましい限りである。
 そういえば、昔は色々なサヤの形を勉強させられた物である。順ザヤ、逆ザヤだけでなく、おかめザヤや天狗ザヤというものもあった。サヤを取ったり、ハナを取ったりするのも相場の醍醐味であった気がする。
 いつから、こうなってしまったのか。いつの間にやら戦後日本の穀物相場は、数奇な生涯を送る事になってしまった。
 話は変わるが、この時期に日本では『ガープの世界』が公開されている。
 今やアメリカ文学の重鎮であるジョン・アーヴィングの同名小説の映画化だが、原作と異なりビートルズの曲から始まる出だしは巡り巡ってエンディングへとつながる構成になっている。この話も数奇な人生の物語。ロビン・ウィリアムズの出世作なのだが、彼もまた数奇な生涯を送っている。