昭和の風林史(昭和五八年六月十六日掲載分)

北海道は冷害凶作の不安

この小豆相場は暴走しだしたら、行く所まで行ってしまう。三万円は軽いはず。

小豆は産地の気温が上がらない。しかも日照り不足。

発芽しない小豆畑もあるそうだ。種を掘りだしてみるとカビがきている。

あるいは発芽したけれど本葉がつかないうちに根腐れもきている。

小豆相場のプロは朝九時10分、夕方四時、夜十時のNHKラジオ第二放送の気象通報を記入している。

オホーツク海の冷たい高気圧は西に移動していた。

これは逆流だ。東に移動しなければならないのに。

ここ当分北海道の天気はますます悪い。

おそらく、これからテレビなどで東北、北海道の異常気象が騒がれる。

相場の方はボツボツ、売り方大手のお尻がむずむずしてきた。

値段が走れば様子を見ていた売り玉が思いきって踏んでくる。

北海道の冷害凶作は昭和59年と予想する人が多かった。しかし、いまの様子では今年が危ない。

南方洋上に台風が発生しない年の八月、九月は日本本土に上陸する台風の数が多い。

北海道の長期予報はことの外今年の秋の訪れは早いという。

ところで現物当業者筋の庭はカラカラで流通在庫がない。実需筋も先安をみて当用買いだった。

大きな相場はこのような背景によって出現する。

早くも目先のきく人達は新穀ザラバを手当てしているがザラバが定期を刺激し、定期がザラバを刺激する。

輸入小豆にしても枠が極端にしぼられ在庫が軽くなっている。

仕手介入時の相場と違うから上昇速度はなんとなくぬるいが、その事は余計この相場を無気味にしていて、牛が走り出せば行く所まで暴走するしかないだろう。

●編集部註
 この年は5月にM7.7の日本海中部地震が、7月に山陰地方で集中豪雨が、10月に三宅島が噴火するなど日本列島で天変地異が断続的に発生。必然的に農産品相場師達は天候に過敏になっている。
 当時は今のようなネット全盛の世の中ではない。生産地の気温、海水の温度の高低は重要な投機判断材料。専用のグラフも存在し、過去の相場動向との比較が行われていた。
 「羹に懲りて膾を吹く」スタンスで相場に臨むと、必然的に「買えない相場は強い」にリンクする。
 天災は忘れた頃にやって来るというが、急騰急落も同じ事が言える。