昭和の風林史(昭和五八年六月二十七日掲載分)

小豆の上値は想像を絶す

小豆は今から買っても上は大きいし十分間にあう。今週輸大の押し目も買う事。

小豆相場は佳境に入るわけで今週は再び火柱を立てる。

人間心理の面白さでストップ高抽選となると、ひやかしでもいいから大きな買いの手を出す。逆に値がゆるんでくると、あわてて利食いを急いだりする。

相場は初期の段階から中期の入り口にある。

そして基調は今までとちっとも変化しない。

売り方は、あくまでも売ってくる。下値の売り玉が可愛いくて踏めない。だから難平売りしてくる。

その売り玉は捕まることが見えている。

買い方はマバラである。大きな買い仕手的な存在がないからこの相場は本当は怖い。きわめて自然な流れとリズムを維持している。だから規制の必要がない。産地の状況は悪くなるばかり。恐しい事だ。

そのうち、今売っている玄人筋が、ただならぬ産地事情を正視して、ドテン買いに回るだろう。今の時点では、まだ天候回復に望みをかけているが、絶望的状況を知るに及べば決然買ってくるのは見えている。

その時分、いま買って儲けている大衆が値頃観で売ってくるかもしれないが〔利食いドテンは愚の骨頂〕値頃観無用を銘記して利食い急ぐな利は伸ばせ。

もとより〔損切りドテンは福の神〕。今からでも売り玉踏んで十分間に合う。上値はとてもの事大きい。

恐らく今年の北海道は「昭和最悪の冷害」となるだろう。三万六千円→三万八千円時代の再現だ。

当然上値で臨増しがくる。売り方は追証と臨増しの二重苦で憤死の運命だ。

輸入大豆は両三日の押し目を仕込む事。七月大相場の展開必至。

●編集部註
 この頃の小豆相場の動きと、当時の取引現場を取り巻く空気、そして風林火山のこの空気に対する印象と意見―。読む人が読めば、特にテクニカル、更に言えばサイクルやチャートパターンを重要視する人間であれば尚更、非常に重要なテキストである事が解かる。
 この時の穀物相場と、現在の金相場の動きはよく似ている。相場は「歴史は繰り返される」を体感する最良の教科書だ。
 ファンダメンタルは時として人を迷わせる。むしろ迷わせるために材料を流している時も。誰が言ったかは忘れたが「数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う」という言葉があるくらいだ。
 その点、嘘をつかない数字の集積体であるチ ャートも嘘をつかない。チャートを見誤るのは、大概〝自分に〟嘘をついて素直にチャートを見る事が出来ないため。これは他人の話ではない。自分自身の話でもある。