昭和の風林史(昭和五八年八月九日掲載分)

高値から二千丁の押しか

買い玉ふるい落としの下げはきついほどよい。二千丁押しを入れたらまた出直る。

産地の高温快晴が続くようだと一日三万俵の計算で小豆が直っていくから10日も続けば40万収穫予想が70万俵予想になるというので買い屋が狼狽して投げた。

産地は20日迄が勝負である。花をどこまでつけるか。根の確かりした小豆は三日も見ぬ間に、びっくりするほどよくなっている(中間地帯)といわれる。

しかし、この先のお天気がどうなるか。台風5号の進路が10日頃には北海道に影響するかどうか判る。

相場が押せば予備枠発券の必要もないし、好天で作が直ればなお更だ。

従って高値から二千円ほど押して、この相場また反騰するのでないか。

台風もあれば早霜もあろうし、在庫は需要期入りを前にして軽いし。

仮りにここで高値から二千五百円下げたところで安値の売り玉は助からない。また追証がほどけた分で売り乗せすれば、これが捕まることは見えている。

三千円中心(先限)で上下千丁圏の動きか、三千五百円中心の上下千丁幅なのか。それもこれも今後の産地天候次第だ。

思うにこの相場は天井していない。ここで大きなゆさぶりを入れておいて買い玉をふるい落とし新規売り込みをつくり、次なる上昇のタイミングを待つ。

その時の材料は台風なのか早冷なのか輸入小豆に絡むものなのか、あるいは輸大からくるものなのか。

竿竹を立てた上で大きな波動の躍りだから手に汗握る場面もあるわけだ。

また人それぞれ迷いもあれば思惑もある。

自分なりのプロセスとストーリーを持っていないと、ふらふらになってしまう。

目先どんなに下げても先二本の二千三百円までだろう。その押しが済めば下げ幅の倍返しの力を相場はつけているはずだ。
●編集部註
 自分なりのプロセスとストーリーを持っていても、ふらふらになる事はあるだろう。それは、自分が曲がった時である。
 先般紹介した風林火山の著書「格言で学ぶ相場の哲学」(ダイヤモンド社)の中でも「頑固、頑迷、落ち目の要因」「傲慢は曲がりの始まり」という格言を紹介している。ただ同時に「辛抱する木(気)に花が咲く」とも書いているのだが…。
 明治維新の三傑の一人である木戸孝允が、その昔桂小五郎という名前を名乗っていた頃、神道無念流の達人であったにもかかわらず、いざとなれば「逃げの小五郎」と呼ばれる程に逃げ足が速かった。これは、相場にも通じる気がする。