昭和の風林史(昭和五八年五月十七日掲載分)

煎れたら仕舞の精糖相場

輸大はキツイ下げを控えている。小豆は上がる。精糖が売り場に入った。ゴムもだ。

小豆はあとから気がつくと思うが、やはりあの時(今現在)が底だったということになる。買う材料などカケラもないし、玄人という玄人皆弱気。

しかし玉整理が済んだ。期近のシコリ玉も大掃除した。相場は皮肉にできていて投げたら高くなるものである。

材料はあとから追いかけてくる。北海道の天気は良いが、種蒔く前に例年にないほどの好天というのが曲者だ。お天気には反動というものが必ずある。

当限は大台三ツ変りで元の木阿弥。この下げは新値節足18手。一月11日底から四月8日頭までの上げのそれが19手。

下げ波動にピリオドだ。

輸入大豆は、この期に及んでという段階からS安を食らう相場である。

需給面はなに一ツ好転していない。

取り組み面は投げるものは投げたが、投げぬ人は両建である。

結局は先限の大阪三千八百円であろう。シカゴ期近のトレンドは六㌦を一度割らねば大上げ出来ん。

精糖は二〇二~三円から二〇五~六円ときたところは必殺の売り場である。

これを売らずになにを売る。あたかもそういう場面。

強気は強気カンカンの強気組の言う事は判るが、相場の呼吸からいうと目先的に15~16円ほどの下げがこなければならない。

大出来高で人気はナーバスだから動きも一方に片寄りやすい。

小豆安けりゃ砂糖が高い。砂糖安けりゃ小豆が高いというサイクルもある。

ゴムは先限51円取りに行くのが少しシンドイ。せめて恋の丸ビルあの窓あたり48円にとどけば抜く手も見せずに売るところ。

ゴム先限の48~49円あたりの売りなら怖いものはない。その売りは15円幅の下げを楽に取れる。

●編集部註
 悪名は無名に勝る―というが、この頃はバブル前。しかも豊田商事事件が表面化する前で、彼らは惡の華を咲かせていたので、この頃の日本の投機界は、ズブの素人から見れば百鬼夜行の伏魔殿に見えていたと思う。
 ただ「現世は夢、夜の夢こそ真」ともいう。その〝真〟に引き寄せられる人も多かった、それはある人には桃源郷の入り口となったが、大多数は誘蛾灯に過ぎなかった。
 梶山季之の「赤いダイヤ」を読むと実名は伏せているが、今も続く老舗の和菓子屋が小豆相場に耽溺している描写がある。