昭和の風林史(昭和五八年五月二十日掲載分)

小豆は自然の起きあがり

輸大を買うと足元をすくわれよう。小豆は自然の直りかただ。ゴム、砂糖売り。

精糖が判りやすい売りだった。あれだけの大出来高。辛抱できずに安値売り玉が踏んだ。

相場は人のポケットの中をよく知っている。踏んだらしまい。煎れたらしまい。

精糖の先限二〇〇円割れは、割ってから10円幅を崩すだろう。

上げ続けたあと(日足新値25本)の頭から陰線三本かぶせは売りのシグナル。

しかも三空飛び放れている。材料は材料で尊重しなければならないが、相場はリズムと呼吸でもある。

ゴムも精が抜けた相場になった。先限で31~32円あたりの窓を埋めるだろう。トレンドが実に綺麗な下げの中にある。

あとは高値掴み玉がどこで投げてくるかだけ。

要するに日柄の面で老境に入っている相場は、無理すると必ず反動を呼ぶ。

砂糖絡みで輸大の売り手仕舞いが相場を強く見せた。アメリカの異常気象(播種遅れ等)を期待する長期方針の買いも入っている。実勢は好転していないのだが、高値おぼえの値頃観もあるようだ。

目先的には戻り売りでよいと思う。一巡戻したあとストトンと安いはずだ。

今の輸入大豆はトレンド調整中で、来週かかりの時点で再び下げに向かう水域に入る。製油筋に五千㌧はめ込んだという事で買われもしたが大勢変化なし。

小豆が押したり突いたりで底をつくっている。

先限(大阪)七千二百円カイときたら早くなる。

目下のところ小豆に買いの筋ものがいない。従って相場自然の直(なお)りかたをしている。

産地は播種最盛期に向かう。需給相場から人気相場に性格を変えていく。

小豆需給を重視する人ほど弱い見方だ。その人たちの売り玉をまとめて踏み上げにもっていくという成り行きになるだろう。
●編集部註
 寸でのところで勝機を逃すという事象は、相場の世界では日常茶飯事。そこからどう立ち直って切り返すかが勝負となる。
 大抵この手の勝機逃しは直前であれこれと逡巡した挙句に悪手を打つと「相場」が決まっている。
 大概、方針が決まって実際に行動に移したら、「あとは寝るだけ」という心持ちが望ましい。
 この年のこの頃、「あとは寝るだけ」というドラマが放送されていた。三木のり平、堺正章、樋口可南子、柄本明等々、名だたる名優が出演していたが、いま思い出しても実に陰惨な話であった。