昭和の風林史(昭和五八年五月二十七日掲載分)

輸大の容態日増しに悪化

輸入大豆が思わぬ下げになりそうだ。精糖は相応の押し目待ち。小豆は臨終近い。

輸入大豆は月末に向かって下げのコースに入りつつある。

シカゴ期近の足取りが今一ツ下げ足りず、六㌦10あたりを窺っている。これは天候もさることながらPIKで高値に飛びついた玉の整理を必要とするトレンドである。

取り組みも減少を続け、この減少が止まり、再び増大する兆候が見えないことには六㌦そこそこまでの下値を洗いにいくかもしれない。天候が響いてくるのは来月中時分からである。

人気商品の精糖は制限値幅五円の営業日数の中にあり海外市況にナーバスな段階。証拠金の積み増しで以前ほどの手軽さはなくなったが、それでも動きが激しい魅力がある。

大局としては二二〇円が強気の第一目標。糖商筋の買い姿勢が続いている。

目先的には煎れ一巡して取り組み減少。S安のあとのS高という乱調子。トレンド上限抜けの危険ライン入りなど高値警戒のところにきている。

本間宗久伝には「買い気をはさみて売る事心得違いなり」と戒めているが、精糖は目先休養が必要で相応の下げが入ると思う。その下げは夏に向かっての暑い戦いの買い玉仕込み場だ。

ゴムは主力になる買いがない弱点を海外がどうサポートしていくかの相場。

下げ幅の半値返し先限の二五〇円あたりで、もう一度考えかたをチェックすればよかろう。

小豆は御臨終間際の容態。どこで息を引きとるかだけ。さすれば気配も急変して違った世の中になる。買い玉は息を殺して死んだふりをするしかない。

取り組みが漸増気味で商いも結構弾むあたり変化が接近しているようにも思うが、なにせ曲がっている小豆だから大きな口はたたけない。しかし腹据えて11限をまた強気していく。捲土重来を期すところ。

●編集部註
 風林火山は当たっている時よりも、曲がっている時の記述の方が面白いと以前から言われている。
 敗軍の将は兵を語らず―と、ことわざにあるが、相場の記事を書いてたつきとしているので語らければならない。風林火山自身、本当に〝語らず〟を実践して紙面を真っ白にした過去があるが、あれは掟破りであり、生涯に一度しか行っていない。
 成功譚は、ある意味誰でも書く事は出来る。失敗譚は書く人を選ぶ、まして評価されるとなれば、それは〝芸〟の領域だ。私見だが失敗譚、特に不味い食べ物について書ける文章家は筆力が高いと勝手に思っている。三島由紀夫の不味い食い物の話は天下一品だ。小泉武夫や北杜夫も素晴らしい。