昭和の風林史(昭和五八年二月七日掲載分)

肩の力を抜いて待つのみ

輸入大豆相場は大器晩成型かもしれない。この辺で肩の力を抜いてみようか。

読者からの電話『京丹が小豆を積極買いして、仕手相場に発展するから、この小豆成り行き買いだ―とセールスが買え、買え言いますが、どうなんでしょう?』と。

京丹という店は、もう潰れましたが、多分、板崎さんが小豆を強気しているのを針小棒大に騒いでいるのでしょう。仕手相場ではありません―。

神戸の現物筋が、いんげん等の強い基調を見て、手亡→小豆を積極買いした。

しかし、商いが極度に細った場で少し纒まった買いの手を振ると、いかにも走りそうに見えて、ケイ線が変わり、小口の新規買いと、大衆ならぬ微衆の煎れが出る。すかさず、陽動買いの手が抜けてしまい、場勘を取って帰る。

小豆市場独特のテクニカルな動きといえよう。

玄人筋は依然この小豆に対して強気姿勢であるが、春に大相場なし。ひねもす、のたりのたりかな。

第一取り組みがふえないし出来高も弾まない。という事は、新しい血が入らず限られた資金による、その日暮らしみたいなもの。

輸入大豆のほうは、シカゴ相場と為替次第のキッカケ待ち。

取り組みのみ増大していくのは実に無気味である。

まあ輸大相場は大器晩成型と見て、肩の力を抜いてみれば、存外早い上げという事になろう。

その間、乾繭の買いもよし、ゴムの買いもよし、精糖もよしの展開となりそう。投機資金は一に証拠金の低額。二に相場に対するロマン(値動きへの期待)。三に手数料抜け幅。そして市場に対する信頼性によって集まったり、散ったりするものである。

●編集部註
 一般的に、余程の達人でない限り、投資参加者は損には耐えられるが、利益に耐えられない。
 投機の世界、特に商品先物の世界では、時としてそれが命とりとなる。
 この事を踏まえて〝ゴムの買いもよし〟とあったので、この頃の東京ゴムの週足を見てみた。これぞ投機銘柄の足である。
 もう一度言う。余程の達人でない限り、投資参加者は損には耐えられるが、利益に耐えられない。
こんなにも陰線が続いたり陽線が続いたりは考えないので、途中で利食いドテンして引かされるというケースを見てきたし、自らも体験した事がある。
 大概、どこかで押すだろうと考えるのだが、そおいう時に限って押し目が来ない。対面取引の場合、ここで両建てという禁断の果実を営業マンは勧める。どこかで外さなければならない、手数料が実質2倍になるという点は頭の中にはない。