昭和の風林史(昭和五八年九月十九日掲載分)

小豆に次の下げ波動接近

下げ足りない小豆が本気で下げだすと、白髪三千丁もって憂いを知る。

本間宗久伝の「二ツ仕舞、三ツ充分、四ツ転じの事」の項は今回の輸大相場に当てはめると、売り方に二度目の追証がかかる頃から買い玉利食いにはいり、売り屋が三回目の追証でキリキリ煎れるあたりで買い玉全部利食いして売り方総踏みの四ツ目からドテン売りに回る。

まあ、そのような事を教えていると思う。

輸大は、親亀(シカゴ)がこけたら子亀(穀取相場)も転ぶ運命。

ひびの入った相場は、底つくまで戻り売り。

売り玉は放っておくべし。知らぬ間に利が乗る。

この場合でも本間宗久伝の二ツ仕舞、三ツ充分、四ツ転じが一応の参考になるが、天井して日柄の若い相場であるから第一波のショック安の波が終わってから日柄を見ながら考える。

高下とも五分一割に従いて二割三割向かう理と知れといった。

東京輸大先限引き継ぎで六月新甫安値から四割高。

二割高(四千九百円)から売り向かったのではシンドイ。三割高(五千三百円)から売った玉はS安二発で売り値。あと安くても相場を見ないで前に回すだけ。

前にも書いたが売り辛抱と買い辛抱なら、売り辛抱が余程楽である。

上げは建設積み重ねだが下げは破壊だから速いし、天井百日という相場はない。天井は三日としたもの。

この輸大は元の木阿弥と見ておけばよい。

小豆がいけない。まぐろなら中とろ。ビーフなら霜降りロースの大きなところを残している。

売りっぱなしでこれも放っておく。年末資金用。

蟻さんのところに行くキリギリスにならぬよう。

●編集部註
 長年関西にお住まいの方は、牛肉に対して一家言お持ちの方が多い。
 「肉」と言えば、西は牛肉、東は豚肉の事を指すというイメージが筆者にはある。東で肉まんと呼ばれる食べ物は、西では豚まんと呼称される。
 これとは別に、世代が古くなればなるほど肉の脂に一家言ある人が増えて来る。当節しきりにA5ランクの牛が―という声がかまびすしいが、A5のAが牛脂の割合に関係している事を知る人は意外に少ない。
 江戸の昔、中トロ、大トロの類は本来捨てる部位であり、下賤な人々の口にする物であり、牛肉などは論外であった。
 ただ、同時に「薬喰い」という慣習もあった。これが霜降り肉を上肉とする流れに繋がる。風林火山が大好きな内田百閒の随筆に、病弱な少年時代の内田少年が「薬喰い」する描写が出て来る。